生涯の愛
アーミヤ
ドクター、今回は私も言わせてもらいます。
軽傷とはいえ、皆さんが負傷してしまった件、それを引率していたドクターにも責任があります!
グムさんが怪我の処置をしてくれましたが、海に入れば多少なりとも傷口にしみるはずです。
本当に、皆さんを連れて遊ぶのはいいですが、はしゃぎすぎるのは……。
アーミヤ
えっと……その、別にドクターが楽しめたのなら、それでもいいんですけど……。
アーミヤ
そ、そうですか? これサベージさんが選んでくれた水着なんです……。実はドクターが気に入ってくれるか、ずっと気になって――
アーミヤ
ああっ! 話をすり替えないでください、Dr.{@nickname}!
アーミヤ
そうですよ、ヘラグさんにも言っておきます!
ドクターの監督を任せたのに、諸々見て見ぬふりなんて……。
何の契約も結んでない状況下では、ロドスは他の都市の内部事情には干渉すべきではありません。
もし面倒事に巻き込まれてしまえば、ロドスの境遇が悪くなるばかりか、深みにハマって抜け出せなくなってしまうかもしれませんから。
アーミヤ
はい、もう知ってますよ。
ダメじゃないですか。こんな危険なことして!
アーミヤ
――盛り上がったファンたちと揉めるなんて! ドクターももう少し大人になってください。
好きなグループを応援するのもいいですが、他のファンたちとも仲良くしないと。しかも喧嘩になるなんてもっての外です!
アーミヤ
(シーッ! )
とにかくもういいです! 今回の件はここまでにします! はい!
次からは気をつけてくださいね?
アーミヤ
はい!
ドクター、あっちに行きましょう! サンゴ礁の向こう側にたくさんきれいな貝殻があるんです! ビーチって楽しいですね!
水もそれほど冷たくありませんし……。
こっちですよ、ドクター、行きましょう!
あっ! もう、ドクター! やめてください!
いじわる! それっ! フフフ……。
……えへへ……。
ヘルマン
君はDr.{@nickname}だったね。
セイロンから君たちロドスのことを聞いてな。君と少し話をしたいと思っていたところだ。
どうだい、私と少し歩かないか。
ヘルマン
まずは礼を言わせて欲しい。ロドスのドクターよ。
今回もし君たちの助けがなければ、私の娘の無鉄砲が悲惨な結末を招いていたかもしれない。
クローニンは私が目をかけて育ててきた人材だ。野心があったが、能力もあった。だから多少の身勝手には目をつぶってきた。
だが彼はここ数年で道を踏み外し、私ですら制御できない存在と成り果てた。
今回は開発エリアに行く機会を借りて、シュヴァルツに彼の人となりを見極めさせたのだ。
そして、このように残念な結果となってしまった。
……私はこの海岸沿いを散歩するのが好きなのだよ。
バーバラ――私の妻が、この海に眠っているからな。
あの日のことはまだ脳裏に焼き付いている。少し暑く、夕日が美しい日だった。この場所で彼女はこう言ったんだ。「ずっとここで一緒に生きていければいいのに……」とな。
そして、いつのまにか、私は一人になってしまっていた。
ドクター、振り返ってみてくれ。
君に理解できるだろうか? この都市は私が彼女のために作り上げた天国なんだ。
どうして君にこんな話をするか、だったな……。
私にはわかる。君は私と同種の人間だからな。
この世界では、正しい物事だけに頼っていても、解決できないことがある。時には悪事だと分かっていても、それに頼る必要もあるのだ。
私という人間にとって、善悪は遥か昔にその意味を失っている。あるのは結果だけ、あるのはこの都市だけだ。
私は理解を求めているわけではない、ドクター。
もしあの子に理解させようとするなら、今のような接し方はしないだろう。
それに、私の考えを伝えたからと言って、あの子がすぐに理解してくれるとは限らない。
それはまず無理だろうな。この世界はあの子が思うほど合理的にできていない。それを理解し受け入れるには時間がかかる。
シュヴァルツは、あの子がそんなことを永遠に理解する必要はないと考えているようだが、私は……残念ながら選択の機会を失ってしまった。
ドクター、セイロンがロドスに入りたがっている。もしあの子が入れるのならば、シュヴァルツもついて行かせようと思う。
シエスタは、もう彼女の天国でなくなってしまったからな。
新しい地質観測データを見たよ。このまま行けば、シエスタは遅かれ早かれ溶岩の海に沈むだろう。
その日の到来を遅らせることはできたとはいえな……。君たちが力を尽くしてくれたこと、本当に感謝しても感謝しきれない。
実は私も、ここ数年来この件の解決法を探っていたんだ。そして一つだけ方法を見つけはしたものの、それはシエスタにとって代償の大きなものだ。
これまで開発に精を出してきた高度開発エリア……そう、あれは新しい移動都市になりうる。今となっては、あれを新たなシエスタにする方法しか残されていない。
私のこの土地に対する想い……いや、もう執念と言うべきか、それは何よりも深い。しかし今まさに目覚めようとしている火山の傍ら、手をこまねいているつもりはない。
今回の黒曜石祭が終了し落ち着いたら、移動都市への移住計画を推し進めるつもりだ。今のシエスタは遺棄され、いずれは溶岩の中に沈むだろう。
聞くところによると、この海洋には果てがあるそうだ。本物の海ではなく、陸地に囲まれた地形であるという者もいる。
となれば、この海岸沿いに移動していけば、いつの日か一周して、またこの場所に戻ってくることもあるかもしれん。
ただ、美しい海岸と盛大な黒曜石祭、そしてこの場所で感じ取れる火山の息吹と海を渡る風は――
シエスタ人の思い出が無数に詰まったシエスタは、もう二度と戻ってはこない。
今日話したことは、いつの日かセイロンに伝えてもいい。
もちろん、永遠に伝えなくてもいい。
どちらにせよ、あの子が助けを必要とする日が来たら、再び私を訪ねてくれ。
シエスタがどこにあろうと、どのように変わろうと、この都市はいつまでもあの子を支え続ける存在であることに変わりはない。
いや――こう言うべきか。シエスタ人がいる限り、シエスタは永遠に不滅だ。あの子たちのような若者こそが、本物の「シエスタ」なのだから。
ヘルマン
今のうちに、今回の黒曜石祭を満喫していってくれ。
新たな理想の会場が見つかるまでは、MSRとも疎遠にならざるを得ないだろう。それについては彼らともしっかり話し合う必要があるな。
そうだ、シュヴァルツも君と話したがっていた。彼女は、あそこにいる。
さて、私の話が長くなりすぎれば、彼女が話したいこともなくなってしまう。やはり本人から言ってもらわないとな。
シュヴァルツ
……旦那様。
ヘルマン
私のことは気にするな。ここからは君たち若者の時間だ。
シュヴァルツ
こんにちは。
そんなに警戒しないでください。もう敵同士ではありませんから。
シュヴァルツ
フッ。こんにちは、見知らぬ御人。
今は遠慮しておきます。
何か特別話したいことがある……というわけではないのです。
元々はあなたに文句の一つでも、と思っていました……。お嬢様……いえ、セイロン様をあのような危険に晒したことについて。
ですが、今となってはやはり感謝しております。あなたがいなければ、私とセイロン様の誤解は永遠に解かれることはなかった。
私は一方的にセイロン様がこのようなことには関わってほしくないと考えておりました。ですがあなたの方が正しかったのですね。セイロン様にはご自身のお考えも、責任もあります。
……ありがとうございます。もしあなたたちがいなければ、今頃私の愛する全てがあの火山に呑み込まれていたかもしれません。
このご恩、一生忘れません。そしてこの借りはいつかきっと返してみせます。
セイロン
ドクター!
セイロン
あら、シュヴァルツもここにいたの?
シュヴァルツ
……セイロン様?
セイロン
ちょうどよかった、貴方がたに伝えたいことがあるの!
わたくし、ロドスに履歴書を出すつもりよ。
セイロン
前にも言ったことがあるでしょう。元々、貴方がたの会社には興味があったの。
セイロン
あら、エイヤフィヤトラさんとスカイフレアさんにお伺いは立てましたわ。わたくしの能力であれば全く問題ないと仰ってくれてますの。
今回の件で知ることができた、貴方がたの実力も鑑みて、熟考して決めたことですわ。
シュヴァルツ
ロドスはただの製薬会社というわけでは……。
セイロン
ええ、だから一緒に来てほしいの、シュヴァルツ。
一応言っておくけど、お父様は同意してくれたわ。
シュヴァルツ
……わかりました、仰せのままに。セイロン様。
セイロン
ですからドクター、これからもよろしくお願いしますわね。
セイロン
ドクター、何をしているの! 実験を始めますわよ!
ああもう、シュヴァルツ、ドクターを担いで来て!
シュヴァルツ
……周囲が振動するほどの音量です、ドクターに聞こえていないということはないかと思いますが……セイロン様。
……ドクター、何を待ってらっしゃるのかはわかりませんが、セイロン様はああなると。私たちが何を考えているかなどお構いなしです。
面倒かもしれませんが行ってあげてください。本当に担いで行くのは、見苦しいですからね。
はい。
セイロン様!すぐに行きますから!
さぁ、行きましょう、ドクター。