南轅北轍
マフィア
鼠王さん。
鼠王
おぉ、お主らか。
マフィア
あの人たちは、どうなりましたか?
鼠王
ワシは言ったはずじゃ。この街には血を流す必要がないのじゃよ。彼奴らがもし逃げおおせたなら、逃がしてやれ。
かつての主君を案ずるのは良いことじゃ。お主らは自らの忠義と引換えに他の仲間が生きる権利を得た。それはお主らの中にまだ善良さが残っている証拠だ。しかしそれ以上の要求は無用じゃ。
マフィア
……は、はい。ですがあの後のことは、既に龍門のルールを明らかに超えていました……。
鼠王
お主らは学習が速いよのう。
聞くと、シラクーザの遥か遠い昔——まだひっそりと生きていた頃のマフィアの間には、暗黙のルールが伝わっていたらしいのう。
誰もがこのルールを黙認し、それに従っていたのじゃ。激動の時代の中で、マフィアというものは、意外にも最も信用のある集団だったのじゃ。
彼らは人情を盾にして、あちこちで戦争を起こし、とうとう今日まできた。
龍門には龍門の法があり、ワシにはワシのルールがある。
ペンギン急便にも、彼らの好き勝手なルールがある。皆それぞれに違うルールがある、ただそれだけなのじゃ。
マフィア
——。
鼠王さん、もしあの時ボスが……ガンビーノさんが初めてお会いした時に剣を抜いていなかったら、今のような状況にはなっていたでしょうか?
鼠王
ワシは奴に機会を与えた。そう一度だけではない。後にも先にも、何度も与えたのじゃ。
ただ時にはな、特に駆け引きをするような場では、第一印象がとても重要なのじゃ。わかったかね?
マフィア
……わかりました。
ガンビーノ
……ハァ、ハァッ。
出口……あそこか……! もうすぐ!
――誰だ!? 出てこい!
カポネ
やはり死んでなかったのか、そりゃあ意外だな。鼠王のやることもそこまで徹底的じゃないってことか。
ガンビーノ
……テメェに刺された傷がまだチクチクしてるぜ。カポネ、テメェの方から俺の前に現れてくれて嬉しいぜ。
これで俺自身の手でテメェを殺せるからな。
カポネ
龍門中の連中が俺たちを追っている。お前のことで時間を無駄にしたくないな。
だから、速攻で決着を付けようじゃねぇか。
ガンビーノ
テメェにはファミリーを裏切った代償を払ってもらうぞ——。
???
はは、ファミリー、ファミリーねぇ。
本当に懐かしい響きだね。うーん、ところで、キミたちテキサスには会ったかい?
カポネ
こ、この匂いは……!
ガンビーノ
……落ちぶれ狼。なぜ龍門にいやがる?
ラップランド
テキサスがここにいるからさ。当たり前じゃないか?
しかしさ、子分を連れてシラクーザから逃げ出して来た奴に、ファミリーを名乗る資格があるのかな? シチリア人だと自称する資格があるの?
キミたちが誇りにしていた栄光と歴史を奪ったあの……ミズ・シチリアご本人は、それを許したの?
ガンビーノ
——黙れ! 俺の前でその女のことを口に出すな!
テメェはただの裏切り者だ。俺たちにとやかく言う資格なんてお前には——。
ラップランド
うるさいよね、ゴミクズが。
あれー、キミたち怪我してるんだ? この嗅ぎなれた血生臭さ、狼の血ね。そうか、これがいわゆる「故郷の匂い」ってやつかな?
テキサス、変わったでしょ?
本当に、めちゃくちゃ変わったんだよ。シラクーザの古い馴染みが訪ねて来たっていうのに、まさか生きたまま龍門を離れることを許すなんてね?
これは良くないね。お客さんに失礼だよ。ありえないでしょ? でも大丈夫だよ。あの子にできなかったこと、つまり後始末はボクがするからさ。
もしシラクーザの馴染みの首が目の前に転がってたら、あの子も少しショックになるかな。そうだよね、いいこと思いついたよ……。
キミたちさ、あの子は逃げられると思う? ファミリーの影から、あの過去から?
ガンビーノ
……カポネ、踏ん張れ。
カポネ
ハッ、まさか俺と共闘するとはな? お前の栄光とファミリーはとうした?
ガンビーノ
お前が急所を避けたことに免じてだ。
カポネ
フン、ビビってるのか?
ガンビーノ
俺はあのアマに殺されることだけは御免だよ。
カポネ
……そうだな。どうせ死ぬなら、俺だって五体満足で死にたいさ。
ラップランド
アハハハ、キミたちもう震えているんだね。
ちゃんと立てないのにボクと戦えるのかい?
いいね、実にいい。目の前で死に物狂いでもがくのを見るのも、暇つぶしにはちょうどいいね。
さて、今から、十秒あげるよ。
逃げてごらん。