黒うさぎ、白うさぎ

ブレイズ
でも……あの様子……。
ブレイズ
身体の周りに源石結晶が浮いてる……どういうこと?
アーミヤ
あれは滲出性の……!
ブレイズ
まさか源石結晶が皮膚から染み出して、空気中の水分子と結合して黒い結晶になってるってこと?
でも染み出すって? ……染み出す!?
ブレイズ
……**……**!
アーミヤ
ブレイズさん!
ブレイズ
痛くないの!? それで痛くないっての!?
ねぇ、痛くないのかって聞いてるんだよ、白ウサギ!
もういい……もういいよ! 何でそこまでするの、どうして? もうやめてよ!
アーミヤ
……うう……うっ!
ブレイズ
アーミヤちゃん? どうしたの? そんな苦しそうに……待って!
アーミヤちゃん、もう止めて、彼女の意識を探らないで!
アーミヤ
違います……私は何もしてません! ですが彼女の感情が……私の意識に流れ込んできて……!
フロストノヴァ
……。
待ちわびたぞ。
レユニオンの指揮官を、殺したいのだろう?
それが今、お前たちの目の前にいる。
そうだ、お前たちの目標はここにいる。ここでくすぶり、熱を帯びている。
ブレイズ
熱……?
アーミヤ
彼女の……感情のことです……!
ブレイズ
総員、警戒態勢!
フロストノヴァ、こんなところでお互いに力をすり減らす必要なんてないでしょ!
フロストノヴァ
この都市から徹底的に排除された感染者たちが、どこへ向かうかなど龍門は気にも留めないだろう。もう誰も来ることはない。
仮にこの都市に、まだ数千、数万の感染者が残っていたとしても……彼らの運命は、既に龍門の手中にある。
誰もこの戦いに横槍を入れることはないだろう。
グレースロート
これだけの人数で……あんたを袋叩きにしろと?
フロストノヴァ
それ以外になにかあるか?
ブレイズ
いや、私は逆にこちらの人数は少ないくらいだと思うよ。雪崩を正面から受け止めようなんて考える馬鹿はいないから。
いや、ただの雪崩だったら、まだ正面からぶつかれば勝機もあるかもしれないね……。
でも、君は雪崩なんかじゃ表現できない……この大地全部の寒冷を一つの身体に集めたようなものだから。
君はスノーデビルに源石を持たせることで、そのアーツをさらに強化し、より広範囲に効力を持たせているんだと思ってたよ。これまではね。
でも違う、私が間違ってた……彼らが君の力をより強くしたんじゃない。
ただ彼らが、君のアーツで強くなっていただけなんだ。
フロストノヴァ
兄弟姉妹たちが周りにいる限り、私は全力を出すことはできない。皆を傷つけてしまうからな。
だが今は違う。皆、もう死んだ。
フロストノヴァ
私の周りには、もう生きているものなど一つとして残っていない。
グレースロート
うっ!!
気温が急激に低下している、この温度はもう……。
……マズイ! この低温だと……私の計測器が効かない!
フロストノヴァ
もう身体の中にあるこの「冬」を抑えておく理由もなくなった。
ブレイズ
もう何だっての、レユニオンはみんな歩く天災ってわけ?
アーツによって実現した史上最低気温はいくつだっけ? だけどもう軽々と破られちゃってるかもね……。
フロストノヴァ、もう一度聞くよ。君は本気?
フロストノヴァ
まだ何か交わすべき言葉はあるのか?
ブレイズ
ある。
——今すぐこんなことは止めよう。白ウサギ、そのままだと君自身が自分の力に殺されちゃうよ。
フロストノヴァ
フンッ。
ブレイズ
ホントに死んじゃうって! 自分をそこまで追い込まなくても、君は十分強いよ!
無理して戦う意味なんてないよ! 喧嘩したいなら、また今度やればいい!
殺すのも、殺されるのも……そんなこと、感染者同士でやるのはもうたくさんなんだよ!
今の私たちが死ぬまで戦わないといけない理由なんてないでしょ!
フロストノヴァ
違うな。
アーミヤ
ブレイズさん!
ブレイズ
爆煙! 巻き起これ!
チッ!
ブレイズ
……もう爪が凍って割れそうだよ。
本当に私たちを殺すつもり?
フロストノヴァ
戦う理由なら、ある。
指揮官として、確かに私は敗北した。
——だが戦士としては、一度たりとも敗れていない。
アーミヤ
……Amiya-1、Blaze-4、全小隊へ。
このエリアから脱出してください。今すぐに。
ガヴィルさん、あなたもです!
今脱出してもらわないと、後ほど私たちの救護に来られなくなりますから!
ブレイズ
うちの小隊で一番の狙撃手は誰?
グレースロート
……私。
ブレイズ
死ぬかもしれないよ。本当に立候補するつもり?
グレースロート
ええ。今の状況下で一番強い狙撃手は、私。
ブレイズ
わかった。グレースロートは残って。他の人はすぐに脱出して。
早く!
ブレイズ
フロストノヴァと戦うなら、小隊単位でも二、三人でも大して変わらない。彼女の攻撃を避ける術がない以上、犠牲が増えるだけだから。
レンジャーのお爺さんみたいな達人がいても、たぶん彼女まで矢は届かない。腕前の問題じゃなくて、装備の材質の問題で。
グレースロート
私のクロスボウも役に立たないかもしれない。
ブレイズ
後から少しは役に立つと思うよ。でも一番有効な攻撃っていうなら……。
艦載砲を彼女に何発か撃つのが一番有効だと思うけどね。私ならそうする。
それか十個以上の火力小隊を呼び寄せて、弾薬とアーツをありったけ撃ち込んで彼女の対応限界を試すのもいいかもね。
そうすれば彼女もいずれは限界を迎えるはずだから。でもまぁ……この状況で先に保たなくなるのは、私たちの方かもしれない。
アーミヤ
止血剤は持ちましたか?
ブレイズ
止血剤なんかより、私なら抗凝固剤の方でしょ? 仲間に飛び散らないタイプのね。
アーミヤ
ブレイズさん……。
……さっき、フロストノヴァさんにどうして源石結晶が皮膚から染み出してくる痛みに耐えられるのかと、聞きましたよね。
ブレイズ
……。
アーミヤ
私は理由を知っています。感じたんです……。
彼女が耐えられるのは、彼女の心の痛みがそれより何倍も……何十倍も強いからです。
アーミヤ
……。
ドクターも避難していてください。
ドクター!
……最後まで見届けるかどうか……
……信頼するに足る者に、君がなるかどうか……
ブレイズ
……アーミヤちゃん。
アーミヤ
はい……Dr.{@nickname}は……本気のようです。
フロストノヴァ
ロドスのドクター。
お前がその選択をしたところで、彼らには何ももたらされない。
……何故そんなことをする?
アーミヤ
わかりました。
ブレイズさん、グレースロートさん、そしてDr.{@nickname}。
ここからが正念場です。
ブレイズ
フッ、フフッ。
白ウサギ、これが私たちのDr.{@nickname}とアーミヤちゃんだよ!
フロストノヴァ
そうか……。
……やめ……。
フロストノヴァ
いや。
フロストノヴァ
準備はできたか?
ブレイズ
もう始まってるよ!
推進力、爆発!
フロストノヴァ
悪くない強襲だ。
ブレイズ
——氷の刃?
チッ!
フロストノヴァ
子ネコよ、お前は私が術師だからといって……力で押せば倒れると勘違いしていないか?
ブレイズ
そんな訳……。
フロストノヴァ
その刃にまとわりつく熱流では、私の寒冷に敵わない。私の冷気を切断することは不可能だ。
ブレイズ
甘く見てたわけじゃないけど、まさかここまで……。
このチェーンソーは、都市の防護壁だって切り裂ける代物だよ。それを受け止めてるって?
フロストノヴァ
私から見れば……お前の動きと力は、静止しているものと何ら変わりもない。
フロストノヴァ
喉をもらうぞ。
ブレイズ
空気圧! 弾けろ!
ブレイズ
ゴホゴホッ、アハハハ……おっと! 危ない、もう少しで喉を引き裂かれるところだったよ!
はぁ、確かにね。君も私と同じ戦士だったね。
どうしよう、アーミヤちゃん。もうお手上げだよ。
ここからはアーミヤちゃんにかかってるかも。
グレースロート
アーミヤ……私の指も、もう引き金を引けないほどに凍えてきた。
速戦即決するしかない。
アーミヤ
……。
(今回の彼女のアーツ強度は、廃都市で出会った時とは比べものになりません……!)
ブレイズ
(しかもまだ底が見えない!)
アーミヤ
(でも、もう考えている余裕はありません……今ここで指輪を解放しなければ、みんな凍死してしまうだけです!)
フロストノヴァさん——
フロストノヴァ
させない。
アーミヤ
えっ!?
アーミヤ
私の指が……!?
うう……ぐっ!
フロストノヴァ
お前とタルラの戦いは、全てこの目で見ていた。お前のアーツはその指輪を強制解放することで強化されるのだろう?
アーミヤ
指輪が十個全部……凍らされた?
フロストノヴァ
戦士として、お前は甘すぎるのだ。
ブレイズ
指輪を何個か凍らせただけでしょ、達者なのは口だけかな?
(えっ? どうして……ここまで加熱したのに、少しも溶ける兆候が見えない? )
アーミヤ
ブレイズさん……止めましょう、血を無駄に流すだけです。これは……これはとても強力で、そして精巧なアーツです……!
私たちがこのエリアに足を踏み入れる前から、彼女は既に寒流に源石結晶を含ませ、周囲に散布していたんだと思います。
これは知らないうちに彼女が私たちの身体に付着させたもので、熱気流でも振り払えなかった分を今活性化させているんです!
うっ、うう……私のアーツでも切り払えません!
フロストノヴァ
そうだ。この戦いはお前たちがこのエリアに足を踏み入れた瞬間から既に始まっている。
十個の氷の指輪となったそれは、お前の体温を吸い尽くし、アーツを搾り取る。お前がアーツを使えば使うほど、氷の結晶は堅固なものとなり、よりお前を凍えさせるだけだ。
フロストノヴァ
……。
嘆かわしいな。
フロストノヴァ
爆発? 空気圧? 指輪の解放?
……そのような小賢しい手段で私に勝とうなど……お前たちは自分が対峙しているものが何かまだわからないのか?
ブレイズ
グレースロート、撃って!
グレースロート
了解! 六連射構え!
フロストノヴァ
私の知るタルラは、全てが始まる前に相手の死期を決めてしまう。
ブレイズ
空気圧縮! 射出!
グレースロート
駆けろ!
フロストノヴァ
そして今のロドスはこの矢と同じだ……。
ブレイズ
なっ……。
グレースロート
ど……どうして? 矢が空中で……止まった?
フロストノヴァ
本当に、嘆かわしいことだ。
ブレイズ
(寒流で矢の勢いを殺し、極低温にすることで粉々にした!?)
(グレースロート、あの矢の材質は?)
グレースロート
(……ロドスの標準仕様、カーボンファイバーとアルミニウム合金の混合。)
ブレイズ
(なるほど。これは、さすがにちょっとまずいね。)
フロストノヴァ
あるいは、恥ずべきとも言える。
ブレイズ
(彼女本人すら知らないことかもしれないけど……あのアーツは、現代の理論で一番*スラング*難解な領域に達してる。)
フロストノヴァ
私が軽くひねっただけで……お前たちは粉々になる。
考えてもみろ。
私はスノーデビル小隊の隊長に過ぎない。だがレユニオンは、チェルノボーグでお前たちを追い詰め、お前たちの戦友を殺したタルラという女が統率している。
タルラが一体何者か分かるか……? レユニオンのリーダーで、感染者の救世主か?
フロストノヴァ
フンッ。
お前が彼女にどのような印象を抱いているかは知らないが、もし彼女が「救世主」などであれば、私もあの石頭も仲間を連れて「レユニオン」に加入することはなかった。
彼女はまず軍略家であり、次に戦士であり、リーダーは最後の肩書に過ぎない。
だが彼女は我々を裏切った。
私が認めた、退くことを知らぬ執念の戦士は、ただ取り繕っただけの仮の姿に過ぎなかった……。
そして、彼女の前に最後に残った敵は、まさかお前たちのように何の志もなく、死と共に歩んだ経験を持たない者たちだけになるとは。
ブレイズ
言ってくれるね、白ウサギ。生死の境を生き抜いてきたのは、君だけじゃないよ。
フロストノヴァ
お前の瞳には、後悔が見えるな。
ブレイズ
そんなこと、君に言われるまでもない!
フロストノヴァ
そう、お前は彼らの死を受け入れる心の準備ができていなかったのだろう。
ブレイズ
もういい!
フロストノヴァ
ゴホッ、ハハ……ゴホッ……。
フロストノヴァ
では、私には心の準備ができていたのだろうか?
ブレイズ
ぐっ……ゴホッ!
フロストノヴァ
考えたことは何度もあった。夢で全ての者の死を目の当たりにしたことは何度もある。だがまさか……。
お前も同じだ、子ネコ。私には分かる。
——
——兄弟たちと共に迎えるはずの壮絶な最期は何処にもなく、これほどに孤独な死が私を待っていようとは。
ブレイズ
……。
君に兄弟がいたように、私にだっていた。
フロストノヴァ
チェルノボーグでタルラと戦ったロドスの者たちは、みな勇敢な戦士たちだった。
Aceと呼ばれた男は、この私ですら見たことがないほどに、頑強な戦士だった。そして彼は、戦士としては珍しい感情を持ちながら戦っていたな。
……それは、「憂い」だ。
ブレイズ
君が私の戦友を勝手に評価することを許すほど、私たちは仲良くないよ。
フロストノヴァ
自身の戦いの意味を考え続けられる戦士だけが、憂いを感じる。彼は素晴らしい戦士だった。
お前も同じだ。
ブレイズ
チッ。
フロストノヴァ
彼はただ一人で死んでいった。
彼を失って、悔しいか?
ブレイズ
もちろん。
フロストノヴァ
彼を救う機会すら与えられなかったことを、悔やんでいるか?
ブレイズ
当たり前じゃない!
フロストノヴァ
誰かに問いたい。そうだろう?
ならば問えばいい。
何と問えば良いかも、誰に問えば良いかもわからない問いを。
ブレイズ
白ウサギ……。
フロストノヴァ
「なぜ?」
ブレイズ
……。
アーミヤ
(……なんて重い感情なの……フロストノヴァさん……!)
フロストノヴァ
なぜ?
フロストノヴァ
「なぜ私はあの場にいられなかった? なぜ私はこんなにも弱い? なぜ私は止められなかった?」
グレースロート
うっ……気温がさらに下がり続けてる!
ブレイズ
私の側に来て! あの寒流のせいで、もうかなり近い範囲の気温を上げることしかできない!
フロストノヴァ
……。
……なぜ?
なぜ兄弟姉妹たちが一番私を必要とするときに、私は倒れた?
彼らは皆、助け合って、生き延びて、そして自分たちの居場所を見つけたかっただけの、馬鹿者だった。
フロストノヴァ
……なぜ私は、そんな馬鹿者たちの願いすら叶えてやれなかった?
なぜウルサスは我々の同胞に対してあそこまで残忍で、非感染者のウルサス人にもあれだけ冷酷になれる?
なぜ大地に火を灯すことのできる火種が、このような異国の地で潰えねばならない?
なぜこれ以上の罪悪を止めるために起こした戦争で、私はより多くの意味のない犠牲を生むことしかできない?
フロストノヴァ
ゴホゴホッ……ぐっ、ゴホッ、ゴホッ……!
アーミヤ
う……うう……。
フロストノヴァ
なぜ我々は全ての命を捧げたのに、ゴホッ、最後には一つの嘘しか残らない?
フロストノヴァ
なぜ……なぜこの大地は、私にもう少し時間を与えてはくれない?
「感染者は自身の身分に誇りを持ち、最も簡単な手段で大地の公正を勝ち取る」……。
初めは私もそれをレユニオンの理念の一つであると考えていた。
そうだ、その理念は多くの感染者を屈強にし、自身を帝国の廃棄物ではないと思わせた……。
だが今になってやっと気付いた。タルラがかつて我々に打ち明けた信念も、深く根付かせるべき思想も、常に正され続け、揺るぎないものへと変わりゆく方向性も、全てはもうどこにもありはしない。
今はもう、扇動と放任がそこにあるだけだ。我々は最も苦しい戦場をあてがわれ、部隊を構築する権限すら与えられなかった。全ては恐ろしい早さで進んでいった……。
もしこれら全てをタルラが計画したというなら、初めから彼女は全ての同胞を欺いていたのだ。
フロストノヴァ
もし彼女が感染者を率いて最も暗い未来を目指し……最も凶悪な計画を成そうとしているのなら……。
彼女の邪悪さは必ず滅せられるべきものだ。
しかし私の兄弟姉妹たちや、死んでいった感染者たち、そして非感染者たちも……。
もう誰も戻っては来ない。
……彼女はなぜあのように変わってしまった?
アーミヤ
うう……あぁ……!
フロストノヴァ
許されることではない。それで良いはずなどない!
私の同胞よ……私の兄弟姉妹よ!
——
フロストノヴァ
アーミヤ!
聞こえるか、アーミヤ!
アーミヤ
フロストノヴァさん……!
ブレイズ
寒流がデカすぎる……しかも集まって形を成してきてる!
私の熱流も、もうもたないかも!
フロストノヴァ
寒流でお前の体温を奪いきれるのか? 死を前にしてお前は怖気づくのか?
違うだろう、アーミヤ。お前にはそれが許されないのだ!
……お前は心が読めるのだろう?
ではいま、読んでみるといい。私の怒りを、辛酸と煮えたぎる思いに十数年間も灼かれ続け、それでも鼓動を止めなかった私の心を!
読んでみろ、さあ早く、アーミヤ!
無実の罪で死を強要された家族のため、腐敗したウルサスのため、感染者の同胞のため、そしてウルサスの人々のため、未だ鼓動を止めず死を受け入れないこの心臓に、どれだけの怒りがあるのかを!
アーミヤ
……。
彼女を恨んだことはありますか、フロストノヴァさん?
フロストノヴァ
……ゴホッ。
フッ。
フロストノヴァ
……。
ない、ただの一度も。
たとえ彼女が今日の全てを生み出した元凶だとしても、私はこれまで一度も彼女を恨んだことはない。
怨讐が何をもたらしてくれるというのだ?
私にあるのは、この醜悪な大地に対して尽きぬ怒りだけだ。
アーミヤ
……。
フロストノヴァ
お前はどうだ?
まさかお前の心に、この怒りはないのか?
鉱石病で親しい者を亡くしたことはないのか? この大地の冷酷さに命を落とした友人はいないのか?
お前にとって生きる理由であり、生きる活力をくれる者を、亡くしたことはないのか?
アーミヤ
……。
フロストノヴァ
ただ理念を並べるだけで、ただある種の技術を手にしただけで、ただいくつかの部隊を立ち上げただけで……。
それでタルラに勝てると思ったか?
お前たちは、そろそろ白昼夢から目覚めるべきだ。
アーミヤ
——
ようやく理解できました、フロストノヴァさん。
今私の頭に流れ込んできたものが、一体何だったのかを。
フロストノヴァ
何がロドスを前へ推し進めている? 何のためにお前たちは戦い続けるのだ?
ブレイズ
正面! 巨大な寒流! あ、あれは——鋭い刃の形に!?
このままだと、後ろ側の守りは捨てて、熱気を前に集めて盾にするしかなくなる……。
しかも寒流が空気中の分子の熱振動を奪っていってる。なんとか受け止められても、ほんの一瞬しか保たない!
ドクター、早く何か策を考えて!
ブレイズ
そんなの策って言わないよ!
グレースロート
いや……ドクターの言う通り。
フロストノヴァの命はもう長くない。ここで耐えきれれば、私たちの勝ち。
ブレイズ
馬鹿なこと言わないで! そうなったら彼女は死んじゃうでしょ!
フロストノヴァ
それで、お前たちの選択は?
フロストノヴァ
必ず討ち滅ぼさねばならない邪悪と対峙した時、感染者の理念と明日を簒奪した裏切り者と対峙した時、お前たちの心臓は何のために鼓動を打つ!
ゴホゴホッ……私にすら打ち勝てないなら、彼女を倒すなど夢のまた夢。数多の感染者に道を示すことも、この邪悪な大地と向き合うことも叶わない!!
アーミヤ
フロストノヴァさん……。
ありがとうございます。
でも私は、どうしてもあなたに怒りを向けることはできません。
フロストノヴァ
お前は……。
まだ分からないとでも言うのか。
アーミヤ
いいえ、フロストノヴァさん……私たちが成すべきことは、あなたから十分に伝わりました。
私は相手の考えがそのまま読み取れるわけではありません。仮にそれができたとしても、それが他人への理解に直結するわけではないんです。
ですがあなたの想いは、拒絶したくてもできないほどに強く伝わってきました。
そう、あなたの胸から私の中に流れ込んでくる痛くて熱い……。
怒りが。
あなたは、冷静で落ち着いています。でも怒りに灼かれたその心の熱さは、思わず逃げ出したくなる程です……。
ですが私は逃げません。フロストノヴァさん、私が何をすべきか、よくわかりました。私はそれを受け入れます。
フロストノヴァ
……。
アーミヤ
フロストノヴァさん、あなたのその想い、いま私が確かに受け取りました。
フロストノヴァ
なぜ、涙を流す?
アーミヤ
だって……。
フロストノヴァさん……あなたは……。
フロストノヴァ
それは許さない。涙を拭け。敵の前で涙を流すことなど、どうあっても許されない。
アーミヤ、お前の答えを聞かせてくれ。
アーミヤ
……。
アーミヤ
Dr.{@nickname}……。
……はい。
「それが必要な戦いならば、最後まで戦い抜く。」
ドクター。フロストノヴァさんと戦いましょう。
どちらかが倒れるまで。
フロストノヴァ
そうだ。今ここで……私と決着をつけよ。
最後の戦いだ。
もしお前たちが私を破り、生き残ることができるならば――
フロストノヴァ
私はロドスの一員となり、お前たちの信条と共に感染者の敵と戦うだろう。
これは私が負うべき責任だ。
フロストノヴァ
約束したからには、必ず果たそう。
アーミヤ
……フロストノヴァさん、一つだけ言わせてください。
感染者は、誰かが率いる必要はありません。
私たちは一つの信念のもとで戦っています。誰か一人のために戦っているわけではありません。
これまでも、そしてこれからも。
フロストノヴァ
——そうだ。その通りだ。そして、腐敗した部分は切除されねばならん。私を破り、タルラに打ち勝て。
お前は何者だ?
アーミヤ
何者にでもなります。
フロストノヴァ
誰のために戦う?
アーミヤ
全ての人のために。
フロストノヴァ
そうか。アーミヤ……。
ゴホッ……ありがとう……。
「時の流れすらここに凍りつき……♪」
ブレイズ
寒流がこっちに向かってくる! グレースロート!
グレースロート
準備はできてる!
アーミヤ
ドクター、私の側を離れないでください。全力で守りますから。
フロストノヴァ
お前たちはここで死ぬ。私が、その荒唐無稽な幻想を終わらせてやろう。
それを否というなら、この私を破ってみせろ。
……私を破り、希望を見せてくれ。