共闘の誓い-1
a.m.6:00 ロドス メインブリッジ
アーミヤ
ロドスの皆さんおはようございます、アーミヤです。今朝は私から全オペレーターに大切なお知らせがあります。
ロドス本艦は、昨夜龍門を離れました。
龍門と締結していた長期貿易協定は、諸般の事情により失効となりました。これ以上、かの都市に留まる理由はありません。
幸い充分な物資を補給することができましたので、しばらくは航行に支障はないと思われます。
それから……これが本題なのですが、一部のオペレーターの皆さんには、これからチェルノボーグの中枢区画へと侵入するミッションを順次オーダーする予定です。
あそこでは更なる厳しい戦争が待っています。
……戦争と聞くと、自分とはあまり縁のない言葉だと思っている方も大勢いるでしょう。
戦争は国と国の間で起きる争いで、私たちのような製薬会社なんて関係ないと思われるかもしれません。
でも……実は私たちは、既に見えない戦争に身を置いているも同然なのです。
感染者をスケープゴートにして、全ての人をお互い憎み合わせようとする、卑怯で醜い戦争です。
抗鉱石病薬を開発し、感染者にその薬品を届けるため、ロドスの医療オペレーターたちは日々、尽力しています。
鉱石病患者に先進医療を提供し、可能な限り病状の進行を抑える。それが発足当初より変わらぬ、私たちの行動理念です。
しかし現在、それだけでは足りなくなっているんです。治療以前の問題として、感染者と非感染者の対立が、どんどん深刻化しているからです。
感染者を敵視する人たちは、感染者への医療提供を望んでません。彼らの感染者に対する攻撃は、両者間の溝を深めるばかりです。
さらに一部の人たちは、感染者を利用し、奴隷のように扱います。彼らにとって感染者は、利益を得るための道具でしかありません。
鉱石病治療のための薬品を開発しているという理由だけで、私たちに対し攻撃を仕掛けてくる……そのような集団さえあります。
たとえ薬品の開発に成功したとしても、それを必要とする感染者の手に渡すことができなければ、何の意味があるでしょう?
私たちの敵はもはや「鉱石病」だけではありません。この戦争から安全な距離を取るなんてことは不可能なんです。
2週間前のチェルノボーグにおけるレユニオンとの戦闘は、皆さん記憶に新しいと思います。激しい戦いの結果、多くのオペレーターが命を落としました。
……私たちの身には、このようなことが既に何度も起きています。
犠牲が出る度に報復を行えば、終わりなき復讐の連鎖が生じます。そして数え切れないほどの人々が……殺されるんです。
敵味方を問わず……
私たちとレユニオンとの関係は、憎しみをぶつけ合うものであってはなりません。相手との対話が可能である限り、自分たちの行動について説明し、責任を取るように求める必要があります。
ですが現時点において、レユニオンはあの非人道的行為以降、未だ正気を取り戻していません。現在、彼らはチェルノボーグ中枢区画を占拠・操作し、龍門へと向かっています。
そして妙なことに、ウルサスは中枢区画の統治権を放棄したわけではありません。
ウルサスは相変わらずチェルノボーグ中枢区画を領土の一部としています。既にレユニオンに支配されているにもかかわらず——
今回の事件について、ウルサスは一度も声明を発表していません。領土であるチェルノボーグの街で起きた数々のテロ行為に対して、帝国は見て見ぬふりをし、何一つ解決手段をとりませんでした。
……自分たちの国民が犠牲になっているというのに。
以上の事から、今回の事件の裏には、ウルサス上層部による陰謀の存在が疑われます。中枢区画の龍門への衝突は、必ずや戦争を引き起こします。ウルサスと炎国の間で戦争が始まってしまえば――
その時になって私たちが介入しようと思っても、もう手遅れです。
レユニオンの背後にどのような事情や思惑があろうが、黒幕が誰であろうが、私たちに突きつけられる現実は一つだけです。
――「感染者がこの戦争を起こした。」
ウルサスと炎国、最終的にどちらが勝利しようとも、人々の憎しみの直接的な対象となるのは感染者たちです。
戦争の果てに感染者たちを待っているのは、今以上に激しい迫害と過酷な生存環境、そして永遠に消えることのない憎しみです。
そうなれば、ロドスの存在する意義も理由も消滅してしまいます。この大地の国々の全てが、感染者が治療を受けることも、共存することさえも許せなくなりますから。
これは、私たちと鉱石病の長い戦いの一側面であり、目を背けてはならない問題でもあります。
もう一度はっきり言います。ロドスはずっと戦争の渦中にいます。そして、この戦争に勝利する事は、とても難しいでしょう。
それでも、諦めるわけにはいきません。
憎み合いの果てに訪れる不幸な結末など誰も見たくはありません。狂気には理性で対抗します。戦力差は戦術で補います。
私たちは何としてもレユニオンの暴走を止めなければなりません。あの移動都市……チェルノボーグ中枢区画が、龍門に衝突するのを阻止しなければなりません。
艦内に残る皆さんには、本艦の正常な航行の維持をお願いします。このミッションから私たち全員が帰還できるかどうかに関わらず、ロドスは最後まで機能し続ける必要があります。
そのためにも全てのことを通常通りに行ってください。以上です。
アーミヤ
ふぅ……
アーミヤ
あっ、えっと、ありがとうございます!
アーミヤ
えっと? ドクター、私の顔に何かついてますか? まさか朝食のパンくずとか……?
アーミヤ
はい!
アーミヤ
……あれ!? えっ!?
アーミヤ
……はい、前にも誰かに言われました。こういう時は皆さんの士気が上がるように励ましてあげないとって。
ですが、だんだん、私たちはそういう団体じゃないって思うようになりました。無理に闘志を燃やす必要はないんです。私たちに必要なのは、自分自身の行動への正しい理解なのですから。
苦しい時こそ、真実を曲げずに皆さんに伝えなくてはなりません。でないと、私たちは盲目的になってしまいますから。
目を塞いだまま走り回るほど危険なことはないでしょう……?
アーミヤ
……はい。チェンさんは、一人でチェルノボーグの中枢区画に潜入するそうです。
龍門、感染者、家族……チェンさんは、数多くのしがらみを抱えています。
アーミヤ
あんな重いものを抱えていても、チェンさんは逃げも諦めもせず、全てを背負ったまま中枢区画へ向かいました。
裏切り者のレッテル、故郷との決別、待ち受ける命の危険、どれにも恐れることなく……
Dr.{@nickname}、チェンさんは感染者なんです。
アーミヤ
はい。
ドクター、私たちはあの中枢区画に向かいつつ、全力でチェンさんのサポートもします。
……ただ単に、チェンさんが私たちの友人だからではありません。龍門の偉い人に個人的依頼をされたからでもありません。
チェンさん一人を、レユニオンに立ち向かわせることはしません。私たちの心は彼女と共にあります。
彼女が今まで耐えて来たこと、そして守ろうとしているもの……私たちが彼女を助けるのは、同じような思いを持っているからです。
アーミヤ
えっと、ドクター……そんな難しい顔をしないでください。
アーミヤ
以前、私はチェンさんのことを、自分たちの手では変えられない人だと思ってました。
ですが、彼女が感染者に手を差し伸べた時、私には彼女の心の色が見えたんです。
アーミヤ
え、えっと、つ、つまりそういうイメージです!
アーミヤ
自分の視たものをどうやって人に伝えたらいいかわからなくて……そのまま相手に流し込むのも失礼ですし。
移動都市で感染者を守りながら、自分の信念も貫くというのは……並大抵のことじゃありません。
チェンさんは決して冷酷無情な人じゃないです。
彼女は四角四面で厳しい人かもしれませんが、その正義感ゆえに、この汚れた大地にたった一人で立ち向かおうと奮起したんです。
決して口にはしませんでしたが。
ですから、私たちは行かなくてはなりません。彼女を決して一人にはさせてはならないんです。
……Dr.{@nickname}、それはいったい?
あっ……!
フロストノヴァさん……
……そうなんですね?
あと、ミーシャさんも。
もし、ミーシャさんのような悲劇が再び起こることを防げるなら、もし、フロストノヴァさんと彼女の隊員たちを慰められるなら……
もっと多くの人を助け、この大地にこれ以上の悲しみが広がることを止められるのならば——私にできることは何だってやります。
ケルシー
二人共、もう資料は手元に渡ってるな?
これは、私たち三人の共同指揮による初めての作戦だ。
ケルシー
もちろん参加しないという選択肢もある。これは君自身の選択だ。それに口出しする権利は私にはない。
アーミヤ
先生……ケルシー先生。
ケルシー
ああ。
アーミヤ
Dr.{@nickname}への先入観を捨ててください。
Dr.{@nickname}も、ケルシー先生のこれまでの態度から偏見を持たないでほしいんです。今だけでも。
アーミヤ
Dr.{@nickname}は記憶を失っています。いくらロドスでも、たったの2週間では、記憶をうまく回復させることはできません。
ですから今のドクターを形作っているのは新しい理解と認識です。
アーミヤ
ケルシー先生には、今のDr.{@nickname}を真っ直ぐな目で、そのまま見てほしいんです。
Dr.{@nickname}も、ケルシー先生が口にしたトゲのある言葉を間に受けて、先生のことを疑ったりしないでください。
ケルシー先生は、ドクターにとって最も……
頼りになる存在です。それはドクターが先生のことを信じるかどうかに関わらず、です。
ケルシー
ふん。
アーミヤ
二人とも、約束してくれますか?
ケルシー
Dr.{@nickname}。
君も私も過去を水に流すという選択肢はない。道徳を振りかざしたところで、私たちのような手合いが良い人間になることはない。
アーミヤ
先生!
ケルシー
君の要求を断るとは言っていない、アーミヤ。
ただ、盲目的な寛容や、憤る権利の無条件放棄は、自身とその立場をいたずらに弱くするだけだ。
この最低限の権利を手放すつもりはない。
だが今は個人的感情はしばらく脇に置こう。まずはあの移動都市への対応が先決だ。
一刻も早く、徹底的に解決しなくては。
アーミヤ
あっ、はい……そうですか……
アーミヤ
いっ! いいえ、イヤとかいうわけじゃないです! ただその……ドクターに対して指示を出すことに、まだ慣れてなくて……
アーミヤ
……必要な時、ドクターはきっと助けてくれると信じています。
これまで私は、ドクターの指示によって、たくさんのピンチを切り抜けて来られました。
ドクターの背中さえ見失わなければ、私はちゃんと戦えると思っていました。
ケルシー
アーミヤ。
アーミヤ
えっ? ええ……大丈夫ですよ、先生。もちろんわかっています。今はもうそんな風に人に頼ったりはしません。
アーミヤ
ただあの頃の私は、本当にそう思っていたんです。
でも今は違います。私はドクターと肩を並べて戦えます。再会してからずっと、それをドクターに伝えたかったんです……
私は成長しました。あの頃よりも強くなりました。もうドクターやケルシー先生、そして……えっと、とにかく皆さんに庇ってもらう必要はありません。
ケルシー
…………
アーミヤ
必ず、ドクターの期待に応える結果を出してみせますから。
あっ! あああのですね! 肩を並べるっていうのは喩えですよ。その身長じゃ並べないとか言うのはやめてください! まだ成長の途中なんです……すぐドクターの身長に追いつきますから、多分!
……でも嬉しいです、ドクター。うん、すごく……嬉しいです。
ケルシー
…………
アーミヤ
…………
PRTS
空気が冷めたようです。エアコンの温度を上げましょうか?
アーミヤ
ドクターが意見を保留したいのなら、それでも構いません。
私も無理強いはしたくありませんから……
アーミヤ
わかっています……誰にでも自分のペースがありますしね。
でも、少しでもドクターの力を貸してもらえたら……
ケルシー
アーミヤ。そこまで卑屈になる必要はない。
Dr.{@nickname}にも得手不得手はある。リハビリには時間が必要だ。Dr.{@nickname}はいずれ必要な時に正しい選択をしてくれるだろうさ。
目覚めてから今までの出来事を、再び忘れることもないだろう。
その重い口が開く時を、精々期待せずに待つのみだ——
アーミヤ
ケルシー先生、その言い方はひどいです……!
アーミヤ
ドクターは、余計なことを言いたくないだけです。でも口を開いた時にはいつも、問題の核心を突いています。ですからドクターにはどうにか助言をいただきたいと——
ケルシー
…………
君がそれでいいのなら。
しかしそんなにあっさり承諾するとは思わなかったな。何か裏でもあるんじゃないかと疑ってすらいるよ。
まあそれでも別に構わないが……
Dr.{@nickname}。よろしく。
アーミヤ
え? あっ、はい……!
えっと、どれからいきましょうか……
ケルシー
ロドスなりのやり方ならある。
資料を見てくれ。作戦の詳細を説明しよう。
4時間後、チェルノボーグ中枢区画の進行ルート付近に、小規模の砂嵐を起こす予定だ。
a.m.10:00 荒野
ニアール
一番!
エンジニア
一番油圧シリンダー制御盤、通電完了!
ニアール
二番!
ファイヤーウォッチ
二番各種砲撃弾倉、充填完了。
ニアール
三番!
エンジニア
三番戦術送風機、迷彩擬装……完了!
擬装なんて本当に必要なんですかねぇ? あれさえなけりゃ送風機の全力稼働までの時間をもっと短縮できるんですが……
ファイヤーウォッチ
チェルノボーグ中枢区画の司令塔は視野が広い。カモフラージュでもしておかないとすぐに気づかれる。
……中枢区画を軍艦のように設計し、その本来の目的を隠そうともしないなんて。帝国の暴力性と征服欲は推して知るべし、だな。
エンジニア
えっ、そんな性質があるんですか? あの移動都市の設計に……?
ファイヤーウォッチ
目的と設計は表裏一体だ。まあ、あのように過酷な環境で生きてきたウルサス人が、豊かな他国へ敵意を向けるのは必然か……
ニアール
……その言い方は、ウルサスの一般市民に失礼だ。
エンジニア
あっ……えっと……そうだ予備のコードを持ってこなきゃ——
ファイヤーウォッチ
だが、ウルサス人が私の故郷で無数の殺戮を犯したのは、言い逃れようのない事実だ。
そして今、彼らは感染者を利用して新たな戦争を起こし、そのうえ感染者に全ての罪を着せ、迫害しようとしている。それはウルサス人の暴虐さの証明にならないか?
彼らは田畑を焼き、井戸を灰で埋め立てた。村全体は炎に包まれ、焼き焦げた死体があちこちに転がっていた。家は破壊し尽くされ、残ったものも廃墟と化した。
これが私の知るウルサス人だ。一般市民といえども、彼らが戦争を支持していなければ、あんなことは起こらなかった。
ニアール
これは私個人の考えだが――あの蛮行はウルサス人全体の意志ではなく、一部の支配者層に蔓延した邪悪な思想の結実だ。我々の目的はウルサスの民を傷つけるのではなく、邪悪に対抗することだ。
レユニオンには、自らもウルサスの一部であると考えている者もいるだろう。だが何にせよ、我々は彼らを倒し傷つけるのではなく、彼らが人を傷つけるのを止めなければならないんだ。
ファイヤーウォッチ……君の言ったようなことは、決して二度と起こさせない。今回の件はカジミエーシュの地で起きているわけではないが、騎士の名誉に賭けて誓おう。
ファイヤーウォッチ
……私たち遊撃隊を、騎士の連中が助けたことなんて一度もない。
私たちがいくら待ち続けようと、結局援軍が来ることはなかった。最後まで自分たちだけで戦った。部隊がウルサス軍に飲み込まれ、たった数人を除いて全滅する最後の瞬間まで。
今更何を信じろと言うんだ? ウルサス人は実は心優しい人種だとでも?
騎士を責めるつもりなどない。特にニアール……あなたのことは。ただ、ウルサスと戦っていたあの頃のことを思い出しただけだ。
私はウルサスを信じない。同様にカジミエーシュも。
ニアール
…………
それはカジミエーシュ騎士の過ちだ。彼らは間違いを正すことも、カジミエーシュを本当の意味で守ることもできなかった……
だがファイヤーウォッチ、今の私たちは共に戦う仲間だ。
過去の私に君を助ける機会はなかった。だが今は共に戦える。祖国のためではなく、ウルサスの暴走を止めるために。
今回は支援の任務とはいえ、私は覚悟ができている。信念のために戦い、君のような人のために死ぬ覚悟が。
ファイヤーウォッチ
他人のために死ぬ……
騎士が皆、あなたのような人間ではない。
ニアール
だが私は、騎士というものはそうあるべきだと思っている。他人のための死には意味があるのだ。決して無駄なことではない。
ファイヤーウォッチ、今回の戦いを君への謝罪とさせてくれ。
ファイヤーウォッチ
……ニアール。
私が果たすべき役目はなんだ?
ニアール
……戦術送風機の全力稼働まで、共にこのエリアを守りきろう。
——4時間前
ケルシー
多くの戦闘ミッションを経験してきた結果、ロドスのオペレーターにとって隠密侵入のスキルは、ほぼ必修科目になっている。
アーミヤ
その時の状況にもよりますが、地形地勢を利用したカモフラージュは侵入作戦に欠かせないステップです。
時に雪原、時に草原、時に沼地……それぞれのシチュエーションに応じた擬装方法を選択します。
龍門の現在位置は、砂漠に囲まれた荒野です。砂嵐に紛れての侵入が最も有効な手段です。
ケルシー
もちろんこれは、侵入の痕跡を隠すためだけのものだ。我々は単純な直球勝負のみの作戦は基本的にしない。確実な成功のためには、複合的な戦略が必要だ。
アザゼル診療所から得た資料が、私の手元にあったチェルノボーグ設計図の正確性を証明した。中枢区画の下層構造は把握済みだ。
我々は、中枢区画の排水施設とインフラ部分の両方から侵入する。それと同時に、囮部隊も展開する。
エサがなければ、獲物は隙を見せないからな。
ケルシー
ふっ……ああ、そうだ。
だが時間が経つにつれ、どんなに凡庸なハンターでも獲物と囮の区別はつくようになる。我々の意図が看破される前に、奴らの懐に侵入を完了しなければならない。
10:00 a.m.
パイロット
教官、今回のミッション、着陸は必要ですか?
中枢区画の地形が悪いうえ、レユニオン側の兵装も中々のモノで、術師の人数もハンパないです。着陸には少々骨が折れそうですよ。
ドーベルマン
その必要はない。着陸場所を探す振りだけ見せて、上空でしばらく旋回していればいい。
戦術小隊が同乗していないのは見ればわかるだろう。私たちだけで降りても意味がない。
パイロット
なるほど……さすが教官。言われて気づきました。
ドーベルマン
これくらい言わなくてもわかってくれ……
パイロット
じょ、冗談ですよ。やだなー教官たら。
ドーベルマン
はぁ……お前は「バッドガイ」号のあの慎重派のパイロットとは対照的に、随分お気楽な性格だな……
——飛空時間は30分だ。問題ないか?
パイロット
大丈夫です!
ドーベルマン
充分目立つようにな。我々が飛行機を所有していることは廃都市のレユニオンには知られているが、ここ中枢区画の連中も同じとは限らないからな。
パイロット
任せてください教官。この「グッドボーイ」号は「バッドガイ」号より全然目立ちますから! 30分間派手にキメて、あいつらの視線を釘付けにしてやりますよ!
ドーベルマン
……やはり慎重にいってくれ、撃ち落とされないように。
パイロット
安心してください。当機はアスカロンやブレイズを乗せてあれだけ低空飛行をしても、一度だって落とされたことはないんですから。
ドーベルマン
そりゃ一度でも落ちたらここにはいないだろうよ……
a.m.10:00 中枢区画 外周
レユニオン構成員
あれ?
レユニオン構成員
あそこに飛んでるのあれ……何だ?
レユニオン構成員
空を飛んでるだと!? 敵の新型兵器か! くそっ……狼狽えてる場合か! 早く撃ち落とすんだ!
レユニオン構成員
何が乗ってるのかは知らんが、そいつを絶対に着陸させるな!
レユニオン術師
慌てないで、そいつが少しでも降下すれば、私たちがぶっ飛ばしてやるから。見えないところにさえ逃げ込まれなければいいわ。
ドーベルマン
この機体、安全設備はどうなってる?
パイロット
もしかして、空は苦手ですか、教官?
ドーベルマン
…………
人並みには、な。
パイロット
心配ご無用ですよ!
どうせ直撃を食らったら一発でおしまいですし、墜落したとなりゃ骨も残らない。安全設備なんてあってもなくても同じなんでさぁ! いやぁそうなったら教官と二人だなんて……光栄だなぁ……
ドーベルマン
そうか……まずはパラシュートを寄越せ、今すぐにだ!
アーミヤ、敵の注意は引きつけた。そちらは直ちに行動開始しろ。30分は粘るつもりだが、急いでくれ! いろいろ不安だ!
ニアール
総員注意! 少数の歩兵部隊がこちらの方角に接近中だ。敵の偵察要員である可能性が高い!
装置が稼働している間、我々の作戦行動を中枢区画に察知させるわけにはいかない。ファイヤーウォッチ、援護を!
ファイヤーウォッチ
了解!