立場の違い
a.m. 9:37 天気/曇天
ロンディニウム オークタリッグ区 都市防衛軍総司令塔付近
アーミヤ
ロドス・アーミヤ特別行動隊のオペレーターのみなさん、聞いてください。計画通り、私たちはこれから自救軍と協力し、ロンディニウム都市防衛軍司令塔に対して奇襲作戦を展開します。
目標はただ一つ、都市防衛システムにあるサルカズの補給ルートに関する情報を入手することです。
この情報は、私たちのロンディニウムにおける全ての作戦の成否に影響します。
アーミヤ
……テレシスが大公爵たちへ宣戦布告するのは、もう阻止できないとしても。
アーミヤ
この情報を手に入れれば、私たちは開戦のペースを緩め、戦争による犠牲を最小限に抑えるチャンスを得られます。
できるだけの準備はしました。ですがそれでもまだ多くの不測の事態が起こるはずです。
これからの戦いは、激しさを増すことこそあるにせよ逆はありえません。ここにいるみなさんが、それを理解しているでしょう。
アーミヤ
しかし私たちはここまで来ました。同じ目標――揺らぐことのない目標のために。
ですから、前へ進み続けましょう。
アーミヤ
ドクター……
アーミヤ
……
アーミヤ
ドクター、私の心配をしてくれているのはわかっています。
準備ができているとは言えません……ですがサディアン区を離れてから、彼女に再び出会う時のことを何度も想定しました。
もし彼女が私たちと対立するのなら、彼女がそうする理由を知りたいです。私は……彼女が感じているすべてを感じたいんです。
アーミヤ
けれど、オペレーターのみなさんに言ったように、私たちがここへ来た本来の目的を、私は決して忘れたりしません。
テレジアさんの望むサルカズと全大地の未来が私たちから遠ざかっているのはわかっています。
その未来は、私やケルシー先生、それと私たちと一緒にロンディニウムに入ってくれたオペレーター一人一人が掴み取ることを望んでいる未来です。
そのために、私たちはあらゆる可能性を迎え入れる準備をし、最後の一戦のつもりで全力を尽くします。
アーミヤ
はい、ドクター。出発しましょう。
レト中佐
サルカズの軍は近頃、迅速に動員がなされているな。
ヴィクトリア兵士
はい、中佐。
ヴィクトリア兵士
最近は皆が……言っていることですが……
レト中佐
なんと?
ヴィクトリア兵士
サルカズは、もうまもなく公爵部隊と開戦する。そうなれば、彼らは我々を血肉の傀儡に変え、戦場に投げ出すだろうと。
レト中佐
……
ヴィクトリア兵士
申し訳ございません、中佐。今の言葉は中佐が定められた規律に反していました。
レト中佐
君たちを責めやしないよ。
ヴィクトリア兵士
我々はあなたを信頼しています、中佐。サルカズとの交渉がどれだけ困難であるかは皆がわかっています……ですがあなたはそれをやり遂げました。
ここ数年、あなたは我々を率いてあれだけ多くの危険を乗り越えてきました。
スタッフォード公爵が反乱を起こした時もそうです。もしあなたの的確な判断がなければ、私は反乱軍の砲火の下でとっくに死んでいました!
あなたは幾度となく我々を救い、幾度となく様々な野心家の手からこの都市を守ってくださいました。
あなたの決定であれば、我々は疑ったりはしません。
レト中佐
……わかっている。
レト中佐
わかっているからこそ……
レト中佐
下の通りが騒がしいぞ?
ヴィクトリア兵士
下は輸送ルートです……恐らく、サルカズに物資を輸送しているのでしょう。
レト中佐
……
レト中佐
警戒せよ!
ヴィクトリア兵士
何事だ?
ヴィクトリア傭兵
――どうも。おはよう。
ヴィクトリア兵士
待て、こいつらどこから湧いてきた?
ヴィクトリア傭兵
質問は受け付けない。まっ、お前が大金を積んでくれるなら話は別だけど?
ヴィクトリア兵士
傭兵……誰の差し金だ? どの大公爵だ?
ロックロック
あたしたちは、大公爵に知り合いなんていないよ。あいつらがあたしたちを知ってる可能性はもっとないし。
ヴィクトリア兵士
貴様ら……貴様らは反乱軍か?
ロックロック
……ロンディニウム市民自救軍だって。
ヴィクトリア兵士
自救軍……自救……
ロックロック
どうしてかわかってるでしょ。
本来サルカズと戦うべきなのは君たちだよ。でも君たちは投降を選んだ、ならあたしたちは自分たちで立ち上がるしかないんだよ。
ヴィクトリア兵士
警戒しろ! こいつらを司令塔に入れるな!
クロヴィシア
……兵士。
クロヴィシア
キミはヴィクトリア人だ。違いないな?
ヴィクトリア兵士
……そうだ。
クロヴィシア
都市防衛軍の二万の将兵が、都市全体にいる。
すでに戦死したあるいは捕虜となった者を除き、全員が一つの命令によってその場に縛りつけられ、サルカズの共犯者となった。
クロヴィシア
サルカズが、まもなく全ヴィクトリアと戦争を行おうとしていることを、キミたちが知らないはずなかろう。
その時、キミたちはまだサルカズ側に立ち、奴らと共にキミたちの親や兄弟を相手にするつもりか?
ヴィクトリア兵士
……
クロヴィシア
キミたちは生きるために従っているだけかもしれない。だがサルカズでない者が、奴らに信頼されることは永遠にないのだ。ひとたび開戦すれば、奴らはいつでもキミたちを見捨てる可能性がある。
ヴィクトリア兵士
……
クロヴィシア
キミにはためらいが見えた。結局、キミたちはただの兵士だ。我々が挑みたいのはキミたちではなく、キミたちに命令をしている人物である。
だから、どいてくれ。
ヴィクトリア兵士
……
ヴィクトリア兵士
退いてはならん。誰も退いてはならん! ここを守れ!
私たちは兵士だ。指揮官を信じている。
私たちは、命令に従わなければならない。
レト中佐
……
ヴィクトリア兵士
中佐! 敵が防御層を攻撃しています!
敵がどうやって突然現れたのかはわかりません。輸送ルートの中に隠れて、サルカズが地上に設けた歩哨所を通過できたとしても、塔の監視システムを回避できるはずがありません。
何者かがシステムをハッキングし、ごく短時間の間にすべての哨兵を始末できない限り……
しかしそんな……ありえない!
私は……うぐっ!
???
……ありえないことなどない。
レト中佐
……
影が彼に向かってすさまじい速さで襲い来る。
彼は死の香りを嗅いだ。ブラッドブルードの大君を前にした時に感じた、あのへばりつくような窒息感とは異なる。今回はあっさりと何の苦しみもなく死ねると、彼はわかった。
従って、無意味に避けるつもりもなかった。
レト中佐
うっ――!
???
どけ!
マンフレッド
……ロドス。
やはり来たか。
アスカロン……私たちが会うのはいつぶりだろうか?
マンフレッド
九日前、西部大聖堂に侵入した時も、将軍から賜ったその武器を今のように、あの方に向けるつもりだったのか?
アスカロン
……そうだ。
アスカロン
それに、お前と違って。
アスカロン
私はためらわない。