果たされた再帰

アスカロン
手強い相手だ。
奴はいまだに私たちの戦闘スタイルを分析し、攻撃を無効化してきている。
Misery
奴を片付けるために、もう何度も戦略を調整している――
Logosの協力の下、アスカロンとMiseryの攻撃が擬態機械の脚部構造を素早く破壊した。
Misery
絶えず自分を超え、破壊し続けるんだ――
擬態機械は全員からの度重なる攻撃に何度も崩壊したが、そのたびに必ず立ち上がる。
ブレイズ
気をつけて! またエネルギーをチャージし始めたよ。
Touch
このまま無策に攻撃し続けてはだめです。奴は源石に頼って無限に自己修復できます。
消耗戦ではいずれこちらが劣勢になります。
ロスモンティス
あの菱形の目を破壊しないと。
Stormeye
私の矢に任せてください。
言うが早いか、Stormeyeは矢を二本続けざまに放った。
そして、一本目は擬態機械のシールドを突き破ったが、もう一本は惜しくも菱形の目の前方で止まった……
間の悪いことに擬態機械のチャージがちょうど完了し、輝く赤い光が今にも爆発しそうだ――
と、ロスモンティスのアーツが止まったままの矢を押し、擬態機械の菱形の目に勢いよく突き刺した。
ロスモンティス
痛い?
「ドン――」
エネルギーが放たれた瞬間には、ロスモンティスのアーツはその恐ろしい目をしっかりと塞いでいた。噴き出したエネルギーはAbyss内の他の場所へと無秩序に発射され始める。
そして回転する骨筆がMechanistの頭上にそっと留まり、彼にためにあふれ出たエネルギーを防いだ。
Mechanist
感謝する、Logos。君たちが奴を牽制してくれて助かった。
Logos
外部からの攻撃では効き目が薄いゆえ、内部の突破口を見つけるしかない。うぬが頼りだ。
Mechanist、進捗やいかに?
Mechanist
クロージャとやり取りした結果、これは非常に特殊な石棺であるという結論で意見が一致した。
休眠設備であるだけでなく、PRTSの本当のデータベースとエネルギー供給設備でもある。
幸いケルシー医師がバックドアを残しておいてくれたおかげで、PRTSのコアサーバーに直接接続できる。
PRTSのコアデータのダウンロードが完了した後、今ある全てのデータを破壊する。
Logos
そうしてようやくあのデカブツは真に安息を得るのか?
Mechanist
そうだ。
Logos
あとどの程度かかる?
Mechanistは手元のデバイスをちらりと見た。
Mechanist
二百四十秒だ!
Logos
よかろう。
我らが時を稼ぐとする。
骨笛の音がAbyss内でこだまし、Logosは再びエリートオペレーターの列に戻った。
擬態機械はすでに全員の前で再び立ち上がっていた。
プリースティス
ドクターは、本能的にあなたを信用しているわ。たとえ記憶が完璧でなくとも――
あなたを希望と見なしている。
アーミヤ
ドクターも撤退の準備を――
プリースティス
ドクターに逃げ道はないわ。
私たちは最終的に同じ道を歩むことになる。これは私たちの主観的な感情によって決まるものではないのよ。
私たちが争う必要はないわ、アーミヤ。私はあなたたちの願いを実現できるもの。
ドクター、あなたはずっと私を信じてくれていたわよね。
結晶の無数の面に映る無数のプリースティスの目が全てあなたを見た。
プリースティス
あなたもかつて私に同じ約束をしてくれたわ、一緒にあの究極の疑問の答えを見つけるって。
もう時間がないのよ、ドクター。
少なくとも、あなたに嘘をつく必要はないもの。
あなたたちは自分が人道主義を実践していると思い込んでるけど、実際テラが滅ぶ前にあなたたちの言うテラ人の苦しみを引き延ばしているだけよ。
もしまだたくさんの疑問を抱いているなら、一つ一つ答えてあげるわ。
アーミヤ
ドクター、彼女が弱ってきています!
ほとんどのオペレーターがすでに撤退しています、もしかしたら……
試してみたいんです――
プリースティス
私を殺したいの?
あなたもそう思っているのかしら……ドクター?
「プリースティス」。
彼女の身にはまだあなたが明らかにしたいと望む秘密が多く隠されている。あなたに関して、ケルシーに関して、源石に関して、そして迫りつつあるあの脅威に関して……
しかしあなたは、彼女がテラにとって敵となる立場にいることもわかっていた。
プリースティス
あなたたちは、もうチャンスを逃しているわ。
ドクター、残りなさい――
アーミヤがどれほど強烈な抵抗を受けているかあなたには想像もつかなかったが。明らかに彼女の限界を超えているのは察せられた。
全ての糸が砕け、源石が再びあなたたちに襲い来る。
あなたはアーミヤを抱えて源石結晶の中から逃げ出そうと試みる。しかし、増殖する源石が行く手を完全に阻んだ――
アスカロン
間に合った。
Logos
Mechanistとクロージャが無事にPRTSのコアデータを持ち去ったぞ。
Pith
我々が撤退を援護する。
アスカロン
今だ、行くぞ!
アーミヤ
待ってください……まだあれが!
アーミヤは最後の力を振り絞ってアーツを放ち、Mon3trが変化した「繭」を糸で巻きつけると、胸に引き寄せた。
ワルファリン
Touch、そなたの助けが必要だ!
この患者たちは、つい先ほど危険な環境の中から移動させた者たちだ。今は十分な救急設備がない。
まずは、彼らの状態を安定させるんだ。
Touch
できる限り負傷者たちを集め、残りは私に任せてください。
死傷者の数は……?
アランナ
まだ数えてるところだ、正確な数は出てない。
今のところ重傷者三十一人、軽傷者百七十三人、死亡者はなしだ。
前衛オペレーター
LogosさんとMechanistさんが事前に安全地帯を確保し、それに加えTouchさんとPithさんの助けもあって、本艦からの撤退任務は予定より早く完了しました。
ワルファリン
……患者の死亡者は一名だ。
詳しい状況は妾自らドクターとケ――
彼女は、はっと息を飲んだ。
Touch
……
アランナ
……
ある名前を口に出すことを皆がはばかる。
毎回作戦終了後に、負傷したオペレーターの世話をしてくれていたあの人。
ケルシー。
Touch
他の者たちが隔離帯を築くのを手伝いに行ってください。本艦内から外にあふれ出る敵がいないかも観察する必要があります。
前衛オペレーター
……わかりました。
Touch
ワルファリンさん――
ワルファリン
妾はすでに、できる限り余計なことを考えぬようにしておるのだ。
まだその時ではない。
ドクターとアーミヤの状況はどうだ?
Touch
我々は起きたことを飲み込むのには、まだ少し時間が必要です。
アスカロン
すでに本艦外の隔離帯まで撤退した。ここなら安全だ。
ブレイズ
ドクター、アーミヤちゃんは大丈夫?
Logos
ロドスは――
ロドス・アイランド――あなたのよく知るあの船は今、巨大な源石クラスターに完全に包まれていた。
砂埃が広がる。あなたには、はっきりとわかっていた。自分たちはロドスを失ったのだ。
あなたはアーミヤを抱き、そしてアーミヤは、無意識下で結晶状の繭をきつく抱きしめていた。
Logos
ドクター、ロドスは……
アスカロン
……ケルシー先生に一体何があった?
源石で封鎖されたエリアから撤退してきた他の者たちが皆のいる場所へと集まってくる……
しかし誰一人として気が休まっている者はいなかった。
アスカロンの疑問はまるで巨大の岩のように全員の心にのしかかった。
このような結果は、誰も予想していなかった――
アーミヤがきつく抱きしめている黒い結晶を見つつ、あなたの意識はふと、ぼやけた。
アスカロン
では今後は?
Mechanist
つまり……我々は、このロドスを失ったということか?
???
もしもし、ドクター、聞こえるか? ヴィーナだ。
ヴィーナ
つい先ほど、ロドスで起きたことを聞いた。本当に残念に思う……
ケルシー先生が以前ブッチャート市付近に購入した移動区画の基本インフラ層の建設はすでに完了している。
近いうちに必ず貴様たちを訪ねる。ほかに手伝いが必要であれば、遠慮なく言ってくれ。
貴様もアーミヤも、体には気をつけろ……
予備前衛オペレーター
ポプカルちゃん見て、このワイン、ミッドナイトさんに頼まれてシラクーザから持って帰ってきたんだ。
ブルネッロの特産品なんだって、私もよくわからないけど……ミッドナイトさんの傷は良くなった?
ポプカル
うぅ、まだ医療部に閉じ込められてるよ。ワルファリン先生がミッドナイトお兄さんに安静にするようにって。
本艦から出てきた化け物をやっつけてる時に怪我をして、ワルファリン先生がすごく焦ってた。
このワイン、ポプカルがちゃんとミッドナイトお兄さんに渡しておくね。
予備前衛オペレーター
えっと、あの時……一体何が起きたの?
色んな噂を聞いたよ。本艦が命を持ったようになって、大きな怪物に変化したって言ってた同僚もいたし……
あとは、死んだ人たちに会ったって人とか……それから、私たちが元いた船が急に制御不能になって――
ポプカル
ポプカルもよくわかんない。
突然起こったことなんだから、ポプカルはずっとRaidianお姉さんとケルシー先生の――
予備前衛オペレーター
……
ケルシー先生。
彼女がいない日々にすぐに慣れることができる者はいなかった。
Mechanist
どうやら想定よりも早く組み立てが完了しそうだ。
この新たな移動区画のメインインターフェースは、早くから我々の設備に合わせて改造されていて、一番面倒な段階はとうに解決されている。
……
エンジニア部オペレーター
隊長、船に駐留するオペレーターたちの協力のおかげで、予想を遥かに上回る建設速度です!
Logosさんが呪文を使ってくれたおかげで運搬効率が大幅に上昇しましたし、Raidianさんが船全体の電気回路をチェックしてくれたおかげで時間をかなり節約できました。
アンジェリーナさんもわざわざ戻ってきて大型設備の運搬を手伝ってくれました!
あんなにたくさんのものが、あっという間に自分から甲板に下りていって――こほんっ、すみません、ちょっと興奮しすぎちゃって。
Mechanist
建設速度が上がることなら、どれも良い知らせだ。
ところで、君は何かほかのトラブルにでも見舞われたのか? 私の助けが必要か?
エンジニア部オペレーター
あっ、そうなんです。
一部のパイプが狭すぎて、この子たちでも点検ができないんです。
「ブーブーちゃん」
(エンジニア部オペレーターの後ろから、落ち込んだ様子で出てくる)
Mechanist
ん? クロージャはもうこいつらを直したのか?
「ブーブーちゃん」
(恥じ入るようにうつむく)
Mechanist
ほら、そんなに落ち込むな。本艦で起きた件は君たちのせいではないぞ。
エンジニア部オペレーター
隊長、ほかに方法を考えなければなりません――
レイ
ドクターから、うちに手伝えることがあるって言われたよ。
エンジニア部オペレーター
――レイさん!?
レイ
さっきクロージャさんにここに来るよう急かされた時はなんだろうと思ったけど、話は聞いたよ。
パイプの点検だったら……
この子が役に立つはず。
サンドビースト
(背びれを気持ち良さそうに伸ばす)
セクンダ
此度のロドス事件に関する詳細資料の提出について、感謝いたします。クロージャ殿。
クロージャ
取引だと思ってくれればいいよ。ロドスからも要求があるわけだしね。
セクンダ
ええ。クレメンティア執政官とグレイディーア執政官に報告し、貴殿らの警告も伝達しておきます。
かの者の名に関してですが――
クロージャ
「プリースティス」ね。
セクンダ
独自のルートからデータベースに当たってみるとします。
仮にその名がエーギルの一部記録にも出現したとなれば、貴殿らが直面している脅威は決して偶然ではないことの証左になります。
結果はできる限り速やかに知らせます。それと、陸海共同防衛線における他の執政官の人員割り当てについてもさらなる審査を行いましょう。
貴殿らの準備が整い次第、医療センターと天災警報システムを含む全ての施設の護送を全力でサポートします。
クロージャ
ありがと、すごく助かるよ。
Misery
この仕事にもだんだんと慣れてきたな、クロージャ。
クロージャ
ふぅ……まだまだ。こんなんじゃ全然だよ。
やっぱ機械を相手にしてた方が気が楽だなぁ。
ケルシーがやってた仕事って、こんなに大変だったんだね……
君も出発するの?
Misery
善は急げだ。
今回の件の詳細をできるだけ早くバベルへと共有する必要がある。カズデルも「アナンナ」の状況確認を協力してくれるだろう。
クロージャ
ウィシャデルに伝えといて。あの源石の使用については可能な限り慎重に再評価するようドクターが言ってたって。
Misery
安心してくれ、ドクターからは特に念を押されている。では、もう行く。
クロージャ
ほかの人には挨拶しないの?
Misery
仕事の邪魔はしたくないんでな。
……あと一つ、ケルシー医師の件について……バベルに知らせるかどうかだが――
クロージャ
……
とりあえず、ウィシャデルには知らせなよ。すごく気にしてるだろうから。
ほかの人に伝えるかどうかは彼女の判断に任せればいいよ。彼女のことは信じてるし。
ワルファリン
そなたを捕まえるのは難しいな、クロージャ。頼んでいた件はどうなった?
クロージャ
ヌオバ・ウォルシーニから返事があったよ。新しく購入した医療設備は向こうの港を経由してこっちに輸送されるって。
それとエンジニア部は三日後に君が必要とする医療実験室を建て終わる見込みだよ。
ワルファリン
よかろう。であれば、医療センターの受け入れ準備も大方手はずが整った。
ふぅ、ケルシーはとうの昔にこの移動区画を買って用意していたのだな。「ロドス」号に比べて、ここはスペースが広い。より「アイランド」に近いな。
だが以前のような状態まで戻すには、まだ時間がかかる。
クロージャ
安心して。今回は事前にモジュール化改造の基礎はやっておいたから、後々アップグレードするってなってもスムーズにいくよ。
それともう一つ――
ケルシーの執務室だけど……
ワルファリン
元の様に再建すればよい。医療部がケルシーの執務室の管理を受け持つ。
……慣れぬな。
クロージャ
ケルシーがいない間は、ドクターとアーミヤちゃんのためにあたしができるだけ多くの管理業務を引き受けるよ。
ケルシーを失望させたくないしね。
ワルファリン
安心するがいい。医療部に関することは妾が手伝う。
他のモジュールの回収業務については、ドクターとアーミヤから何か確認はあったか?
クロージャ
もちろん。ドクターもアーミヤちゃんも気にかけてるからね。全部順調に進んでるよ。
でも「ロドス」の再建には、時間がかかるだろうね。
それ以外にも、元の設備の受け入れ、物資調達ルートの確立、各事務所との連絡の回復、それと対外的な広報業務と帰還するオペレーターへの説明とケア――
ふぅ、今は解決しなきゃいけないことが山積みだよ。
そうだ、ワルファリンちゃん……あの患者さん、クロエについては……
ワルファリン
彼女の家族に連絡を取るためロンディニウムの事務所へ人をやっている。
妾とクロエ共著の論文は間もなく完成する。そうなれば、各国の医学専門刊行物に妾の投稿が届くことになるであろう。
源石の変化と鉱石病の新たな症状に関する研究成果は、彼女の犠牲のおかげで進展が得られた。
より多くの専門家の注目を集めねばならない。なるべく多くの者に彼女のことを覚えていてもらいたい……
クロージャ
そうだね。もしクロエがいなかったら、今回あたしたちの多くの作戦がこんなに順調にはいかなかったよ。
クロージャはたまらず目をこすった。
ワルファリン
過労の継続は良い兆候ではないぞ、クロージャ。
クロージャ
う~、ドクターからはもうあんまり焦って自分を追い詰めるなって言われてるよ。でも……
ワルファリン
膨大な量の仕事で自身を麻痺させることは時に効果があるやもしれぬが、最終的には自身を傷つけることにしかならぬ。
医者としての忠告だ。
クロージャ
……でも今はあたしがロドスのみんなに対して責任を負わなきゃ。
それに、ケルシーがこれまで頭を悩ませてた事柄はもっと多かったはずだし。
ワルファリン
では数日のうちに時間を作っておとなしく医療部に来るといい。妾がそなたの検査をしてやる。
血液から香るオイルの匂いが、随分と薄くなっておる。そなたらしくない。人事部のあの者すら妾にそなたのことをよく気にかけておくようにと何度も促してきたのだぞ。
クロージャ
心配かけちゃってごめんね。ありがと……
ワルファリン
ドクターとアーミヤはいまだあの森の中で「Mon3tr」の観察を続けておるのか?
クロージャ
そうだよ。
ワルファリン
妾に言わせれば、やはり本艦に留めて観察を行うべきだ。妾も手伝えるというのに――
クロージャ
想定外の変化が起きちゃったら、今のロドスにとっては大変だからね。
ワルファリン
やはりケルシーが残したものに、プリースティスが何らかの手を加えておらぬかと心配しておるのか?
クロージャ
だってそんなの誰にもわかんないでしょ。
アーミヤ
雨が強くなってきましたね。
突然の大雨からアーミヤを守ろうと、あなたはコートをできるだけ高く掲げた。
アーミヤのワンピースの裾がひどく濡れていることにあなたは気付いたが、彼女は気にしていないようだ――
彼女の集中力はさほど遠くない草むらの方に向けて注がれている。
その場所では、ケルシーの服にくるまれた黒い結晶があり、その表面には濃い緑色の光が流れ始めていた。
明かりのない湿った環境の中で、その暗い光は決して目立つものではなかったが――
アーミヤ
ここ数日は光が頻繁に現れるようになりましたね、ドクター。
あなたたちは意識を集中させて辛抱強く待ち、奇跡が起こってほしいという期待を必死に抑え込む。
ここ一ヶ月、暗黙の了解のようにアーミヤもあなたと共に足繫くここへやってきては、結晶の状態を確かめていた。
あなたたちは、起きた出来事を消化するための時間が必要だった。
それと同時に期待していた。次ここに来る時には……
あの人が待ってくれているのではないかと。
アーミヤ
ドクター、見てください!
深緑色の結晶の硬い表面に複雑な模様が流れて、それはゆっくりと地面に沈むと、非常に規則的な結晶が生え始め、おびただしい数の枝を広げた――
それらの枝は成長を続けたが、まるで切り落とされたかのように、ある時点で突然止まった。
豊かに緑を茂らせる森の中で、草むらの上にいる緑色の結晶はまるでこの大地と渾然一体となっているかのようだった。
アーミヤ
えっと、これはテレジアさんが当時目撃した光景とは少し違います……
結晶の成長は止まっていない。それどころか枝はますます茂り、膨れ、青々とした樹冠のようだった。個々の結晶の模様も複雑さを増し、目まぐるしく変わる。
アーミヤ
ドクター、あの模様が何を意味しているかわかりますか?
データ保存?
あれはケルシーの一生だ。
複雑な枝は成長の過程で再び一つに融合し、巨大な繭を形成した。
全ての枝が再度一つに収束し、全ての可能性もまた、一つの道に帰した。
ケルシーが目覚めた時からそのそばを守ってきた共生体は、彼女が消え去っても希望を担って歩み続けるだろう。
それは重荷であり、期待でもある。
それに、彼女に選択肢はなかった。繰り返す復活は彼女が生まれた時に与えられた能力なのだ――
知らない声が聞こえた。
???
……ケルシー?
降り落ちる雨が彼女の手の平を優しくかく。
彼女は今までこのありふれた自然現象をこのように感じたことはなかった。
彼女は草の匂いを嗅ぎ、雨の冷たさに触れた……無意識に、手元の服を羽織った。
それはケルシーの服で――
???
ケルシー……?
彼女は呆然としながらもケルシーの名を小さく呼ぶ。ケルシーは常にそばにおり、彼女がこれまでに一人になったことはない。
彼女を守る新たな共生体がそばに現れることはない。遠くで彼女を守っていたのはあなたたちだ――
彼女がぼんやりと空を見上げる。そして、自身の持つあらゆる記憶を……AMa-10の記憶を……
ケルシーの記憶を、理解する。
???
……
彼女は最後の記憶を思い出した。
よく知る甲板の上で、ケルシーと共に戦い、プリースティスに立ち向かった――
???
……君は自由をくれた。
この記憶……君の記憶の全てを見ることができる……
それなのに、もう君の存在を感じ取ることはできない。
「ケルシー」、これが君の名前……私もこの名前を愛している――
……
でも、これは君だけのものだよ。
Mon3tr
「Mon3tr」、私はこの名前を取っておくとする。
君がくれた名前だから。
Mon3tr
この服は……クロージャがわざわざ用意してくれたものか?
(うーん、でもあんまり体に合わないな。)
アーミヤ
……
Mon3tr
……
ドクター、どうしてそんな目で見るんだ?
あなたはあの大きな体を、あなたの記憶にあるMon3trを身振り手振りで示そうとした。
Mon3tr
ああ、私だよ、ドクター。
いや? 異常はない。
アーミヤ
最後に起きたことを覚えていますか?
Mon3tr
覚えている。私たちはプリースティスに立ち向かった。ケルシーと私の創造主と――
それから私は、彼女を失った。
……
アーミヤ
……
あなたとアーミヤは互いに沈黙する。
これは決してあなたたちが予想した結果ではないが、間違いなく奇跡だと言えた。
Mon3tr
ここはどこだ?
新本部?
アーミヤ
あの出来事で、私たちは船を失いました……プリースティスが源石でロドスを封鎖したんです。
Mon3tr
えっ!?
うーん――またプリースティスか。
アーミヤ
……?
(ドクター、Mon3trは……なんだか変ですよ?)
(まるで――)
(彼女の感情を感知しましたが、何も異常はありません。)
Mon3tr
プリースティスは?
アーミヤ
調べがつきません。源石が「ロドス・アイランド」号を完全に封鎖してから奥に入るのは難しいです。
できることと言えば観察を続け、準備が整うのを待って次の行動を展開することだけです――
Mon3tr
ケルシーが重要な情報を残してくれた……今とても混乱している、君たちの助けが必要だ。
アーミヤ
もちろんです。ですが、Mon3trさん、新本部に戻ったらまずは検査を受けてください。
これは、あなたの健康とロドスの安全に関わります。
あなたの状況が完全にはっきりするまで、目立たずにいてもらう必要があります。
今でもまだ、私たちがケルシー先生を連れて帰ることを多くのオペレーターが期待しています。
彼らにも、そして私たちにも時間をください……ごめんなさい、Mon3trさん。
Mon3tr
理解できるよ。
ケルシーであっても、きっと君の決定を支持する。
ケルシーみたいに。
ずっと前にケルシーに申請したことがあるが、彼女はいつも何かしら理由を付けて誤魔化していたんだ!
アーミヤ
……
Mon3tr
もちろんだよ。
まあ……今の状況には多くの戸惑いがあるが、ケルシーに疑念を抱いたことは一度もない。
あれ? ドクターはどうして行ってしまったんだ?
アーミヤ
……
今は、ドクターを一人にさせてあげましょう。
アーミヤ
ワルファリン先生、本当に他に問題はないんですか?
ワルファリン
Mon3trの手引きに従って全面的な検査を行ったが、プリースティスが残したと思しき痕跡は何も見当たらなかった。
だが、そもそもMon3trとケルシーの秘密は多い、試みたい研究はまだたくさんある――
(ケルシーは、こんなに大人しく検査などさせてくれなかったからな。)
だが妾は今から論文で忙しい。
Mon3tr
私たちと共にケルシーが残した情報を確認しないのか?
ワルファリン
もちろんしたい、だが今ではない。
その時間は、ドクターとアーミヤにこそ必要だ。無粋者にはなりたくないのでな。
(彼女を頼んだぞ、ドクター。)
(たった今Mon3trとやり取りをして、彼女の率直さにあっけにとられた……)
(Mon3trとケルシーを同一視するのは難しい。ケルシーの全ての記憶を有しているとはいえな。)
あなたは司令室の各設備を興味深そうに弄っているMon3trを見やる。アーミヤはというと、完全に復元されたこの司令室内の新機能を彼女に丁寧に紹介していた。
確かに、彼女はケルシーとは全く異なる。しかし決意に満ちた眼差しはそっくりだった。
ワルファリン
Mon3tr、何か困り事があれば妾を訪ねるとよい。
Mon3tr
ドクター、アーミヤが今言っていたが、私たちの指揮システムは、まだ完全には復旧していないのか?
そのことなら私が力になれるよ。
ケルシーが制限を突破したので、私は関連コードの翻訳を手伝えるようになった。
我々の今後の作戦を確実に展開するためには、指揮システムの復旧が急務だろう。
アーミヤ
よかった、これで困っていた問題を解決できますね。
Mon3tr
できるだけ早くクロージャの所に行ってどうするか話してみる。だが今は……
もしもケルシーがまだ何か情報を残しているのなら、私は簡単には諦めない――
よく知る声
君がこのログにアクセスしているということは――
すでに自由を得たのだな。
君は、もはやただの「ケルシーの共生構造体」ではなく、AMa-10の循環の宿命を背負うものでもない。
Mon3tr
……ケルシー。
アーミヤ
――ケルシー先生……
よく知る声
(微笑む)君はどんな名前にするのだろうな?
あるいは、「ケルシー」という名を引き継ぐのか。
Mon3tr
その名前はとても好きだよ、でも君のものだ。
……私は「Mon3tr」、君がくれた名前を選んだよ。
よく知る声
だが正直に言うと、君にはこの名が表す重荷を背負い続けてほしくはない。
あの人は、私に生命の意味を探す自由を与えてくれた。なら、君にも平等な権利があるべきだと考えている。
君は生命の意味を見つけ、己の心に素直に従ってこの大地に対して抱く期待への答えを出すといい――
希望か、あるいは滅亡か?
すまない。君が答えを見つけるその時まで、私が付き添うことはできない。
Mon3tr
だけど、私はまだ分かっていないことがたくさんあるんだよ、ケルシー……
先ほど体を検査した際にワルファリンが呈した疑問を、Mon3trははっきりと覚えていた――
「なぜより効率的で頑丈な形態を捨ててまで、ケルシーに似た形を選択した?」
「なぜ自身の鋭い爪をしまってまで、他人に畏怖されることを望まない?」
「なぜ……人間性を保つことを選択した?」
Mon3tr
わからない……これは無意識な選択なんだ。
多くの疑問の答えが口元にあるようだが、なぜかどうやってもはっきりしなくて、うまく言えない……
君のような思考はできないんだ。情報と記憶があまりに多くて、脳がごちゃごちゃだよ……ケルシー。
君を連れ戻す方法を見つけたい、だが――
よく知る声
だが君は自らの決定を決して疑わないだろう。
我々はすでに長い歳月を共に歩んできた。君がとうに自身の答えを持っていることを私はよく理解している。
君には、自らを整理するために少し時間が必要なだけだ。
前へ歩み続けるんだ。
声が消えた。
Mon3tr
……
あなたとアーミヤは、今この瞬間にMon3trの邪魔をしたくなかった。
アーミヤもまた感情を抑え込んでいるのを、あなたは感じた。
あなたはアーミヤに寄り添い、彼女を支える。
アーミヤ
ドクター、私……
Mon3tr
……これは――
ドクターとアーミヤ宛てに?
よく知る声
ドクター、アーミヤ、君たちがこのメッセージを聞いている時の状況を想像したことがある。
このような発言が、君たちを困惑させなければいいのだが――
ロドスの壊滅は、決して想定外の出来事ではない。
今私たちが立ち向かっているのはかつてない強敵だ。私の努力は失敗した。
だが君たちの戦争は、始まったばかりだ。
日増しに活発になっていく源石はこの大地に新たな挑戦をもたらすだろう。より多くの痛みや、憎しみ、戦争……
どうかロドスの使命を忘れないでほしい……
テラ各地の事務所に散らばったオペレーターを連れ戻せ。君たちは彼らの力をまとめ上げ、より多くの力を団結させる必要がある。
これはこの大地の戦争でもある。
アーミヤは感情が揺れ動いたのを感じ、あなたの手をぎゅっと握り締めた。
アーミヤ
ドクター……
いいんですよ、ドクター。
もし辛かったら、口に出してください。
勝手にドクターの感情に触れたりはしません……ですが、私もドクターの重荷を少しでいいから背負ってあげたいんです。
私もです……ドクター。
ケルシー先生に約束しました、自分の責務を果たすと、ドクターを守ると。必ず約束を果たします。
今回は、ロドスの使命が果たされるまで、私は決して涙をこぼしたりしません。
……本当に、ケルシー先生に会いたいです。
少女は答えずに、目の前の情報データベースに集中して何かを注意深く探している。
膨大な情報が目の前を流れ去り、彼女の目つきも次第に切迫したものになっている。
Mon3tr
……まだこんなにたくさん。
彼女は私の触れたことのない情報をたくさん残している。
何か方法があるかもしれない……可能性はある……
ドクター……まだ方法はある。
大丈夫、私たちはケルシーを連れ戻せるよ。
Mon3tr、ひとまずは君と私とで共に選択した名で呼ばせてもらうとしよう。
人々は常に生命に愛を注ぎ、希望あるいは恐怖から抜け出すことを願っている。そうして彼らは見たこともない神に祈ることを選択するに至る……
――命が永遠に死なないようにと祈るんだ。
だがどうすれば叶うというのだろう? 何よりも疲弊した川でさえ、最終的には海に合流するというのに。
最後の瞬間が訪れる日、太陽や月、星の光までも暗くなる……波の揺らめく音はなくなって、一切の音と景色が全て消え去る。
冬の葉も春色もなくなり、昼と夜の境界も曖昧になって――
永遠なる夜の中の終わりなき眠りだけが残る。
……
これは私の創造主が私と遊び疲れた後に、終わりなき凍土に横たわって聞かせてくれた詩だ……
永遠の生命は孤独であるのが定めだ。私はすでに、その味を知った。
……君もきっと一人で歩いていけるだろう――