後発先至

D.D.D.
いや~、さすがは『龍威鼠心』! 絶対皆を失望させない戦いっぷりを見せてくれるね!
取り囲んできた連中なんて、あっという間に片付けちゃったぞ!
だけど、先頭集団はスイム区間を既に半分泳ぎ終えている!
『龍威鼠心』のヒロインたち、これは果たして間に合うのか!?
チェン
どこを見ている? ほら、泳ぐぞ。
ユーシャ
ちょっと考えてたの。
チェン
何をだ?
ユーシャ
エルネストが何か企んでるのは確かでしょう? その上、私たちの後ろから追ってきてるわけだし、彼の方から対処すべきじゃない?
チェン
一理あるな。
チェン
だが、まだ彼が犯人だと決めつけることはできない。
それに、事件を企てているのが誰であろうと、向こうが我々の勝利を望んでいないというのは明らかだろう。
であれば、この試合に勝つことを優先した方が、確実に黒幕に繋がるはずだ。
ユーシャ
確かに、相手は私たちが船に乗るのを避けたいんでしょうしね。それは私にもわかってるわ。
チェン
ならいい。さあ、無駄話ばかりしていると負けるぞ。
ユーシャ
負ける? ありえないでしょ。
いいから先に行ってなさい。こういうのは久しぶりだから、少し準備が必要なの。
チェン
……わかった。
D.D.D.
おやおや? 少しの相談タイムのあと……どういうわけか、チェン選手だけ先に泳ぎ始めたみたいだぞ。
一方、リン選手はというと……ビーチに残って、準備運動をしつつ何やら砂を集めているみたいだね。
彼女の能力で、砂をガラスの武器に変えられるのはもう知ってるけど……もしかして、砂で海面にガラスの橋でも架けるつもりかな?
ユーシャ
お父さんなら、ここの砂で橋を架けることもできたでしょうね。
私には、そこまでのことはできないけど。
その代わり、私には私のやり方があるわ。
砂は、これくらいあれば足りるわね。
ユーシャ
で、チェン・フェイゼの位置は……あら、ちょうどいいところにいるじゃない。
ユーシャ
――ふぅ……行くわよ!
D.D.D.
こっ、これは……!!
ななな、なんとリン選手! 海の上を走り始めたーーッ!
カンデラ
……いや。あれは走っているというより、跳躍を繰り返しているようだな。
着地する度に砂を使って、次に降り立つガラスの足場を作っているんだ。
その上、砂を節約するために……ほかの選手が近くにいる時は、そいつを踏み台にして跳んでいる、と。
カンデラ
はっはっは、面白い! 実に面白いじゃないか!
D.D.D.
な~るほどね! これは本当に前代未聞の渡り方だ!
つまり、近くに足場がなかったから、さっき二人は話し合って、最初の踏み台をチェン選手自らが務めるって決めたんだね! リン選手の道を切り開くために、身を挺するチェン選手……!
なんてことだ……! 二人はまたしても、チームの絆でオイラたちに感動を届けてくれちゃったよ!
ホシグマ
はははっ。リンお嬢さんのアイディアは確かに意外なものですが、あの二人はきっと相談なんてしていないでしょうね。
スワイヤー
絶対してないに決まってるでしょ。あははっ! ねえ、一瞬だけカメラに映ってたチェンの顔、見た? 最高に笑えたわね!
ホシグマ
ふふっ、本当に。まさかあの二人が組むとここまで面白いとは……
D.D.D.
トップを行くのは依然として、チーム『甘い夏』だ! ジャーヴァン選手が破竹の勢いでゴールラインに向かっているぞ!
ほかのチームも彼の後ろにぴったりつけて追い上げるーっ!
しかーし! そんな彼らを予想もしない事態が襲う! 彼らの後ろに……見えたっ! 海を飛び越えるリン選手だーーっ!
彼女の足が、三位の選手の頭上を軽やかに越えていくーっ!
二位の選手の頭はもはや、彼女の踏み台にすぎないぞ!
ジャーヴァン選手、彼女に気付いた! だけど残念! 気付いたところでこれはどうしようもないーっ!
無情! 非情! 彼の頭上をリン選手があまりにも軽やかに飛びすぎていくーっ!
第二ラウンド、一位獲得はリン選手! 試合の栄えある第一位は、またしても『龍威鼠心』に決定だー!!!!
まさに全身の血潮が沸き立つ大逆転! 感動をありがとうーっ!!
エルネスト
おい、ウッソだろ……こんだけやっても勝つのかよ。……マジ? なんかの間違いじゃねえの? は、反則じゃん……
エルネスト
は、はは、ハハハハッ……
エルネスト
……はぁ。……どうしたもんかな。