四季を思う
シャオマン
おじちゃん?
無口なおじちゃん? どこにいるの?
あの化け物と戦っちゃダメだよ、早く出てきて! 一緒に行こう!
異様な織物
(長く甲高い鳴き声)
彼は自らの戦場の中に浸っていた。
彼の戦っている敵が何なのかは、言葉にできない。彼の舌は口の中で硬直している。
彼の愛する者はすでに去り、次の春の訪れを見ることはない。
彼は自らの武器を高く掲げ、自分が何かを守らねばならないことだけを知っていた。
守る……何を?
伸びやかな笛の音が聞こえてきた。
シャオマン
(必死に笛を吹く)
おじちゃん! おじちゃん! ここだよ! 早く、林の中から出てきて!
あたしと一緒に行こ! おうちへ帰ろう!
異様な織物
(鋭い叫び)
シャオマン
――!
あたしが怖がると思わないで! ブサイク、どっか行って――!!
……きゃっ!
一本の斧が奇妙な化け物の胸に刺さる。化け物はもがきつつ身を起こそうとするが、徐々に糸がほどけて地面に散った。
斧が手から離れた後も、木こりはまだ武器を投げたままの姿勢だった。両目はよく見えないので、彼は下を向いて耳をそばだて、周囲の音を慎重に聞き分けている。
シャオマン
おじちゃん! やっと見つけた!
ここだよ! こっち来て! 安全な場所に連れてったげる!
木こりはその声を聞き、シャオマンの方を向いた。
直後、彼は斧を拾い上げると、身をひるがえし林へと向かおうとした。
シャオマン
おじちゃん? おじちゃんってば! そっちは危険なんだよ、戻っちゃダメ!
シャオマンは笛を構え、必死に息を整えると、曲を吹き始めた。
花が咲いたよ、早く帰ろう♪
聞いて、聞いて、あなたの帰りを呼びかける私の声♪
だが、木こりの歩みは止まらなかった。数匹の化け物が草むらの中で身をかがめ、シャオマンの行く手を阻む。
彼の濁った目は目の前の物事をはっきりと捉えることができず、天も地もまるで、ぐるぐると回っているようだった。全身の血がうなり声を上げ、彼にはもはや何の音も聞こえない。
その澄んだ叫びが、彼の耳に突き刺さるまで。
シャオマン
きゃっ!!
沈黙する木こり
――!?
シャオマンは身をひるがえして逃げようとした。しかしすぐにまた笛を構え、すぐにより清らかな笛の音が彼の耳に入る。
花が咲いたよ、早く帰ろう♪
聞いて、聞いて、あなたの帰りを呼びかける私の声♪
沈黙する木こり
(……花が咲いた、帰らないと……)
彼が一歩前へ踏み出した。
白い小さな手が彼の指を握った。
沈黙する木こり
……
シャオマン
おじちゃん、行こうよ……帰り道が分からなくなっちゃったの?
どうして帰りたくないの? 他の人を怖がらせちゃわないか心配してるの?
あたしが保証するよ。誰もあなたを怖がらないし、もう変人扱いしないって……もし悪口を言う人がいたら、あたしがその人たち全員の頭を笛でぶっ叩いてあげるから!
だから、一緒に帰ろうよ……
彼の腕に結ばれていた赤い絹が突然緩み、風に吹かれると、ひらひらと空に飛んでいった。
木こりの濁った目から大粒の涙がこぼれ落ちたが、シャオマンがそれに気づくことはなかった。
沈黙する木こり
……
――?
シャオマン
おじちゃん、早く逃げて――
ホーシェン
あとどれだけいるんでしょう……この化け物たちは本当に殺しきれないんですか?
ズオ・ラウ
できる限りここで止めるしかありません……
ホーシェン
みんなを怖がらせないようにって言ってましたが……そんなのやっぱり無理です……
こんな光景、誰にだって……
目の前に広がる田野では、恐ろしい姿をした化け物がいまだ絶え間なく地面から湧き出し、数えることもできない。
二人の背後では人々が長い列を成し、中心エリアに向かってゆっくり進んでいる。
列の中からは絶えず泣き声が聞こえる。アーツに精通した土木天師が辛うじて防衛線を築き、群衆と化け物を遮る。
足元の地面が震えると、すぐさま、群衆の中からさらに泣き声が響いた。
ズオ・ラウ
何事ですか?
ホーシェン
向こうの移動区画が中枢区画と切り離されました。
試験田の土壌の各パラメータの制御は、全て中枢区画のエネルギー供給に依存しています……今エネルギーを遮断すれば、田んぼも終わりです。
ズオ・ラウ
……
恨む農家
*炎国スラング*、こいつらどっから来たのよ。おかげで私たちの長年の努力が全部台無しよ!
ここで何年も耕してきて、こんな仕打ちを受けたのは初めてよ。
怒った農家
*炎国スラング*、まったくだ! なぜ俺たちが逃げなければならない?
こいつらは俺たちの土地を壊し、俺たちの作物をかじる。ならこいつらと最後まで戦ってやる!
みんな! かかれ、この畜生どもをやっちまえ!
ズオ・ラウ
皆さん――気をつけて……
ある者が田んぼに落ちていた鍬を拾い、振り返ると未知の化け物に向かって突き進む。鍬は化け物の頭に思い切り打ちつけられ、意外にも化け物はよろめいたのだった。
農民がなりふり構わず石や農具、手当たり次第に化け物に物を投げつける。
投げられた害獣対策用の農薬が化け物の体にぶつかり、瓶が割れると、化け物が悲鳴を上げた。
異様な織物
(苦しむ鳴き声)
ズオ・ラウ
そんなのも……ありですか?
動揺する農家
……た……倒した……?
興奮する農家
効いてる! 効いてるぞ!
分かったぞ! こいつらは田んぼの害獣が変化したものなんだ!
*炎国スラング*、何が化け物だ、結局は同じじゃねぇか。
みんなビビるな! 武器を取れ! 作物を踏み荒らした畜生どもをやっちまえ!
すると、ますます多くの者が道具を手に防衛線に加わっていく。ある者が力強く歌い出した。
野原を平かにし、溝壑を定め、気衝霄漢、壮志に憑り、雲を凌ぎ、河山に直面す! 烈たる東風、霜を照らす月、天時定め難く、驚雷聲咽す♪
願はくは稲の香、天南地北あまねく広がらんことを。恐るるは、是れ酷旱洪水又た撲とせんことを! 我恨む、身を以て雲を造り春雨と化し、春色を人間に迎へ來たらしむる能わざるを。
沈黙する木こり
ごほごほっ……ごふっ……!
シャオマン
おじちゃん、こんな所で止まらないで! もう少し、すぐに着くから……!
異様な織物
(甲高い雄たけび)
シャオマン
うわっ――! あっち行って! あっち行ってってば!!
えっ……!
おじちゃん! どうしたの……うっ……まずは傷口を押さえて!
大丈夫、大丈夫だからね。もうすぐで着くよ! 前に怪我した幼獣をおうちまで背負ったことあるし、おじちゃんはあの子たちより重くなさそうだから、信じて、あたしなら連れて帰れるよ!
あなたたち……どいてよ……!
来ないで……!
こっちに……こな――
木こりの耳の中で、小さな体が地面に倒れた音が響いた。彼は体を無理やり支えて、再び武器を掲げる。
沈黙する木こり
……
……はあ、はあ。
うああぁ――!!
厳かな天師見習い?
そこまでよ。
沈黙する木こり
……
……し……
……そ……祖師……
「老天師」
もういいよ、下がってなさい。
あんたの精神はもう限界よ。これ以上は手を出さないで。もう二度とこの手で弟子を殺したくないから。
帰りなさい。あんなに賢い娘がいるのよ、両親ともに亡くさせるわけにはいかないでしょ。
……たとえあんたの正体をこの子が知ることがなくてもね。
シャオマン
(かすかな呼吸)
沈黙する木こり
……
「老天師」
あんたたちにも苦労をかけるわよね……
元々は大荒城に戻って怪我を治そうと思ってただけなのに、まさかこんなことに出くわすなんて……刺繡バカが。捕まえたらただじゃおかないわよ。
金色の腕白な子供は辺りを見渡すと、腰の帯へと手を伸ばした。
「老天師」
あれ、扇子どこ行った……?
奇怪な織物は危険を察知したように躊躇い、彼女に近づこうとしない。
「老天師」
あの不甲斐ない弟子や孫弟子たちはよくもまあ、どうしてこいつらが怖くないのかって聞いてくるのね。
むしろ私のが聞きたいわ。これだけ殺しまくったのに、なぜこいつらは私を恐れない?
異様な織物
(おびえた悲鳴)
天を衝く気流が、一瞬にして起こった。天師の金色の姿から光と熱がほとばしり、空間をねじ曲げると、白い炎が原野に大きな溝を描く。
彼女が軽く指を鳴らした。
ジー
桑麻、日びに已に長じ、我土は日びに已に広し……
邪祟詭魔を払い、天地は新たな光に輝く……
らら……らー……
繭はできました……
糸を繰る時です。
一羽の羽獣が飛ぶ。
この場所にはそもそも羽獣はいないはずだった。日や月や星、風や霜や雨や雪、山や川、そんなものはこの場所にはそもそもないはずだった。
しかしこの羽獣は一本の稲穂をくわえ、羽を振るわせると、小高い山の頂上で止まる。
心臓はドクン、ドクンと跳ねている。何かが土を破り芽生えようとしている――
一陣の風が吹き、稲の苗が揺らめく。
川は絶えず流れ、水が勢いよく逆巻く。
山河は隆起し、土石が轟音を立てる。
木は根を張り、木陰は揺らめく。
羽獣は何かを感じたのか、稲穂をくわえて再び飛び立った。種が数粒こぼれ、果てしない水田に落ちた。
サラ――サラ――、サラ――サラ――
双眸が開かれた。
混沌とした声
……お前?
戻ってきたのか?