下される鉄槌

ヘルマン
私の下に十五年もいて、君は本当に何も学んでいない。
唯一学んだのは、姑息な悪知恵だけだったようだな。残念だよ。この愚か者め!
クローニン
愚か者だと……フフ、ハハハハハハハ!
この老いぼれが、愚かなのはノンキなオマエらの方だ。
へラグ
なんだ?
セイロン
これは……まさか噴火の前兆の地震!?
クローニン
来た、フフ、ついに来たぞ。
この都市と共に灰になってしまえ!
今から放送タワーを占拠しても、もう遅い! 警報を出したところで市民がパニックになって事態が悪化するだけだ。
火山の爆発はもう目前だ。あんな簡単なサンプルでは噴火時期まで読み切れまい。
そして緊急避難用のルートは私だけが知っている! もちろん、オマエらには教えないがな!
どれだけ偉そうにしていようが、もうオマエらには誰も救えない!
全てはこの都市と共に崩壊するんだ!
セイロン
ドクター、どうなさるの!
へラグ
ドクター、まずはロドス各員に連絡を入れるべきだろう……。
エイヤフィヤトラ
先輩、聞こえますか! 火山の分析が完了しました!
今のうちに対処すれば、まだ間に合うかも知れません!
プロヴァンス
ドクター、火山が活性化した原因を見つけたんだ。今回の噴火は阻止できるかもしれないよ!
エイヤフィヤトラ
皆さん冷静に聞いてください。いまから説明する方法を実行することで、必ず火山の活動を沈静化できます。
へラグ
了解した。では、役に立てることがあるのなら、私たちも手伝うとしよう。
シュヴァルツ
……はい。
セイロン
いえ、この件はわたくしたちにお任せ下さい。
クローニンはこれだけ長く秘密工作を続けていたんです。彼の手下が都市のいたるところに潜んでいると考えて間違いありませんわ。
今が一番大切なときです。シュヴァルツ、ヘラグおじ様、二人ともやるべきことがあるはずですわ。
シュヴァルツ
それは別の者に任せても――
セイロン
シュヴァルツ、これはわたくしたちが往くべき任務なの。
ヘルマン
セイロン……。
プロヴァンス
僕も賛成かな。
天災トランスポーターに火山学者、源石学者と、僕たちはそれぞれの専門分野でプライドがあるんだ。自分たちが予見できている危険が市民を脅かしているのに、何もしないなんてできない。
しかもそんな専門知識を使ってみんなを騙して、自分ばっかりいい思いをしてきた人がいるなんて、同じ天災トランスポーターとして僕は絶対に許せない。
へラグ
君にこんな真面目な一面があったとはな。その意気や良し。では市長殿、観客を避難させる任務、私が手伝わせていただこう。
ヘルマン
……感謝する。シュヴァルツ、君も行きなさい。
シュヴァルツ
ですが――
ヘルマン
セイロンができると言っているのだ。
シュヴァルツ
ハッ! セイロン様、どうかお気をつけて。
エイヤフィヤトラ
決まりましたか? もうあまり時間がありません!
セイロン
ええ! すぐに出発いたしましょう!
シュヴァルツ
……。
ヘルマン
あの子を信じよう。それにあの子たちの言う通り、我々にもやるべきことがある。
クローニン
フハハハ――死にに行くようなものだ! 少し時間を引き伸ばしたからといって何ができる!?
アンタの娘がシエスタと道連れになるだけじゃない、その死体だって見つけることは叶わ――
ぐあっ――
へラグ
これはイカンな。年甲斐もなく反射的に手が出てしまった。
ヘルマン
構わないさ。とはいえ、こやつの言う通りだ、市民たちの身を危険に晒し続けるわけにはいかない。
では、全員行動を開始しよう。皆さん……どうかこのシエスタを頼みます。