完璧なる幕引き

Alty
ふーん。
Alty
これが噂のロドスね、確かに怪しい雰囲気が充満してるわ。
Alty
それにすっごく懐かしい匂いが空気に混じってるわ。うーん……。
目をつぶれば、まだ海辺にいるんじゃないかって勘違いしちゃうところね。
ケルシー
ここ最近、確かに何人かエーギルの客人が来たが――
お前も同じエーギル人のようだが、来訪者のリストにお前の名前はない。もてなしてやれるかは、お前次第だな。
Alty
あら、ごめんなさい。でも手は煩わせないわ、少しお話するだけ。長居はしないわよ。
それより、私の名前を知ってるなんて驚いたわね。
ケルシー
ここ数日シエスタにいる者なら、お前の名前を知らない者はいないだろう。
私自身はシエスタに行っていないが、お前のことはかねがね噂に聞いている。AUSのベーシストAltyだな。警告する。ロドスは好き勝手に入っていい場所じゃない。
Alty
あら、そんなに敵意を剥き出しにしないで。私たちにはたくさん共通の話題があるわ、そうよね。例えばまだ星が見える頃の話とか?
ケルシー
――ではそこに座るといい。
Alty
ありがとう。私がどうやって入ってきたか気になるでしょ?
ま、そんな事はどうでも良いかもね。ロドスの保安設備に問題があるわけじゃない、ただ運が良かっただけだから。
ケルシー
言葉で取り繕ったところでお前の実力が隠せるわけじゃない。だが安心していい、そんなことは端から心配していない。こいつは重要な客人にしか道を開かないからな。
だが、お前のようなスーパースターがどうしてこんな狭い病室なんかに興味を持った?
もしエーギルの友人と思い出話をしに来たのだったら、部屋を間違えているぞ。
Alty
友人? うーん……友人とまではいかないわ。いや、友人とは程遠いと言うべきね……。
私はあなたに会いに来たの。あるいは、あなたを見に来たと言ったほうがいいかしら。
ケルシー
すまないが、お前のことは知らない。それに私は動物園の見世物でもない。
Alty
エーギル人の噂について、Frostから色々聞いたわ。普段はあまり語りたがらないけど、あの時は饒舌だった。
ケルシー
お前の知人がいかに奇妙な冒険譚を語ろうと、私は興味ない……。
Alty
じゃあ歌って聞かせてあげましょうか?
ケルシー
……あるいは私の全く別の一面に関することか? 面倒な探り合いはせずに単刀直入に言えばいい。
Alty
雑談すれば雰囲気を和らげられるって思ったけど。あなたには無意味のようね。
じゃあ本題に入りましょう。あのエーギル人たち、あまり好きになれないの。もちろん、あの人たちが可哀想なことも知ってるけど。
でも、もしあなたがいなければ、あのエーギル人のうち何人かは海底に沈み、闇深い海に呑み込まれていたはず。
ケルシー
私は特に大したことはしていないが。
Alty
でもあの人たちを救った。ここには何人もいるじゃない。
ケルシー
……。
Alty
あの奇妙なエーギル人たち、あなたのことなんか少しも尊敬してないわよ。あなたが色々尽くしているにもかかわらずね。
それとも普段から厳しく接しているのが原因かしら?
ケルシー
私は彼らが自滅しないようにしているだけだ。
Alty
慈悲深いのね。さすがお医者さんだわ。
でも、私が聞きたいのはまさにその部分よ。
ケルシー
言ってみろ。
Alty
エーギル人の敵は何か知ってる?
あるいは、実は私の正体を知ってるんじゃないの?
Mon3tr
!!
ケルシー
Mon3tr、動くな!
ケルシー
未熟だな。お前。
Alty
そうね、私たちはまだまだ未熟。あれほどの悲しみは、まだ経験したことがない。だからまだここにいられる。まだ話せる。まだ歌える。
ケルシー
アビサルハンターたちは、やるべきことをやっているだけだ。
Alty
分かってるわ、そんなことは知ってるの。でも、私たちだって答えを知りたい。
あのおチビちゃんたちと敵対しようなんて、夢にも思ってないわ。
Alty
Frostはね、小さい頃から音楽と食べ物にしか、まるで興味を示さなかったの。休憩する時間だって彼女からすれば無駄なんだって。
ケルシー
その友人のことは、いずれ直接会ったときにでも紹介してくれればいい。
Alty
ごめんなさい、また悪い癖が出ちゃったわね……。
ま、あなたの事は信頼しているわ、ケルシー先生。あなたが握ってる真実もね。
ケルシー
お前自身が握っている真実が私より浅いとも思えないが。
Alty
ええ、でも私たちにはそれぞれ得意分野があるでしょ。例えば、あなたの歌声は感動的に響かないかもしれない。
ケルシー
………。
Alty
あ、ええ、ただの例えよ! あなたを怒らせるつもりじゃないの。
でもエーギルの静けさは、あなたが知っているように、表面的なものに過ぎないわ。
ケルシー
大海について知識がある者は、ほとんどいない。
Alty
そうね。大地の子たちには知る由もないでしょ? あまり期待しすぎるのもよくないわね。
ただ、もうすぐこの表面的な静さすら失われてくるでしょうね。欲望はやっぱり怖いものだから。
だから、欲しいの。情報をね。
ケルシー
また情報か?
Alty
そうよ。
そう……。なるほど、それに興味があるのは私だけじゃないのね、フフ。
「また」って言ったけど、前回それをあなたに尋ねたのは誰?
ケルシー
同じくエーギル人だ、アビサルハンターのな。
Alty
じゃあ私たちは、もしかすると本当にお友達になれるのかもね……フフ。
ケルシー
ああ、そうかも知れないな。どうしてお前が私に会いに来たかも理解できる。
永き刻を生き、故事が増えるほど、傷も疼き、平常ではいられなくなる。
Alty
ごめんなさい。あなたの傷口をえぐるつもりはないから……。
Alty
でもあなたは確かに他の人とは違う。彼らは数多の感情に縛られ、言論に利用され、ひいてはある種の災難に変化しようとしている。
どうりであの人があなたを最後の切り札として、あの小さいウサギとDr.{@nickname}のサポートをさせているわけだ。
あなたはX線検査装置みたいなもの、そうでしょう?
ケルシー
私もただの機械のようになれれば良いのだがな。
Alty
あら、失礼。あなたは誰にも言うつもりはないでしょうけど、中にあるものは全て目を通したんでしょう? そう言ってるの。
ケルシー
それに答えるつもりはない。
Alty
じゃあ、ここからが本題ね。これにはあなたも答えられるはずよ。
ケルシー
言ってみろ、若きスーパースター。
Alty
ええ、ありがとう。
Alty
じゃあ教えて欲しいの。あなたが知ってる、あの海の下で起きたことの全てを。
ケルシー
それは情報と呼べるほどのものではないな。
Alty
いえ、私が言ってるのは、「あの海」のことよ。
ケルシー
――
Alty
若いのは私たち四人だけ……。そしてFrostは私たちの中で一番若い。
あの子がね、例の何人かのエーギル人の匂いを嗅ぎつけたの。あれはエーギル人にはあるまじき匂いよ。
「それらは二度と歌えない。それらは二度と話すことはない。それらは我々から遠ざかる。それらは飢えに飢えている。」
AMa-10ケルシー医師。教えて欲しい――あの奇妙なエーギル人たちは、どうやって誕生したの?