求道

聖堂巡衛
そちらの方、降誕の儀式をご見学になるようでしたら、広場のあちらにある待機用通路で検査を受けていただけますか。
……先ほどからずっと、近くで見ておられますよね。
ヴァンニーニ
あっ、ごめんなさい!
人を待っているだけなんです……
聖堂巡衛
そうなのですか?
でしたら、本日聖堂付近は人の出入りが多くありますため、こちらに長時間留まることはご遠慮いただけますと幸いです。ご協力をお願いいたします。
ヴァンニーニ
は、はい、ごめんなさい!
ヴァンニーニ
エル姉が中に入ってから丸一日経ってるけど……
元々の計画では、聖堂の建築構造の重要な部分を爆破して、あの何とか言う儀式を遅らせられたらいいって話だったよね。
この時間には、とっくに出てきてるはずなのに……まさか見つかっちゃったとか?
ううん、そんなわけないよね。ずっとこの辺りで待ってたけど、何か起きてそうな感じはしなかったし……
でも、見つかってなくても、何かあって脱出できなくなったんじゃ……
早く考えて、ヴァニー! 何かできることがあるはずでしょ!
ヴァンニーニ
源石火薬の小瓶が二本残ってるから、簡単な爆弾代わりになりそうかな。
大した威力はないけど、物音で警備兵の注意を引くくらいはできるよね。そうすれば、エル姉の助けになれるかも……
ここに仕掛けよう。
ふぅ――誰にも気付かれてないみたい。あとは起爆するだけ――
その時、銃身がヴァンニーニの腕を押さえつけ、彼女は腕を動かせなくなった。
???
そのちっこいのをパンと鳴らすのはよすんじゃな、お嬢ちゃん。
ゆっくり立ち上がりなさい。
ヴァンニーニ
じゅ、銃騎士さん……
パトリツィオ
その格好からして、銃工房の職人じゃな?
ワシにはあと10分ほど空き時間がある。その間に、事の次第を説明してくれんかのう?
何をしでかそうとしたんじゃ? あるいは、誰かを庇おうとしておるのか?
ヴァンニーニ
……
ヴァンニーニ
行きましょう、エル姉。
エクシア
パガ先生は?
ヴァンニーニ
もうお休みになりました。最近はまた視力が落ちてきて、お医者さんから早めに休むように言われてるんです。
静かに動けば、起こさずに済むと思います。
エクシア
まあまあ、ひとまず落ち着きなさい、ヴァニー。
ヴァンニーニ
ど、どうしたんですか? 変なふうに改まって……
エクシア
こほん、とりあえず聞いてよ――
もし途中で捕まっちゃったら、相手が護衛隊だろうと、執行人だろうと、銃騎士だろうと、義理立てなんてせずにあたしのことを喋っちゃっていいからね!
キミは暗く風の強い夜に、突然ドアを蹴り開けて入ってきたあたしに脅されて、爆弾を作らされ、聖堂の外で見張りをさせられてただけってことにして。
キミは何も知らない、罪なき小さな天使ってことで!
ヴァンニーニ
えっ?
エクシア
これがあたしと一緒に行動する上での条件ね。
ヴァンニーニ
エル姉、私は少し人見知りするだけで、臆病者じゃありませんよ!
エクシア
あはは、わかってるって。キミが手伝ってくれるだけでも、すっごく嬉しいしね。
でも、教皇庁はあの儀式をす~っごく重要視してるみたいだから、法に触れることをすれば、どんな罰を受けるかわからないでしょ。
今のラテラーノは、あたしの記憶の中のラテラーノとはかなり違ってるしね。
ヴァンニーニ
私は……
エクシア
いいから! あたしに任せといてって!
それに、ペンギン急便の企業文化としては――絶対に、独り舞台は譲らないってことになってるんだから!
ヴァンニーニ
(首を横に振る)
だ、誰も庇おうとなんてしてません。私一人で来ましたから。
パトリツィオ
面白い子じゃ。
ワシのような年寄りは、若者と話す機会など滅多になくてのう。しかし惜しいことに、今は儀式の時間が近づいておるんじゃ……
おぬしに話す気がないのなら、公証人役場の執行人に引き渡す他あるまいな。
???
パトリツィオ、やめろ!
その鉄の殻に隠れてりゃ、偽善者ぶったその顔が見えないだなんて思うなよ。
パガニーニ
げほげほっ……げほっ、思いっきり走りすぎたな、ぶっ倒れそうだ……
パトリツィオ
なんじゃパガ、おぬしか?
ヒルデガルト
あの、先ほどから聖都の異変がどうとかって、二人とも急に心が通じ合ったようなご様子ですが……私には説明してくださらないのですか?
フェデリコ
その件は、我々の調査とは無関係ですので。
あなたに多くを知らせるべきか、現時点では判断しかねるのです。
ヒルデガルト
……
とにかく、一緒に戻りましょう、アルトリアさん。
わ、私は正直あなたのことは嫌いではないですし、むしろちょっと好きなくらいですが、ランデン修道院に害を及ぼすようなら、絶対に許せません。
アルトリア
シスター・ヒルデガルト、一つ聞いてもいいかしら?
ヒルデガルト
はい?
アルトリア
あなたは修道院を、ラテラーノを深く愛しているのよね?
あるいはこう聞くべきかしら。リーベリであるあなたが、どうやってラテラーノとの感情的な繋がりを築いたのかと。
ヒルデガルト
ええと……私は幼い頃からランデン修道院で暮らしてきたんです。修道院のみんなにお世話してもらって、一緒にパンを焼き、ビールを作って、修道院が潰れないように頑張ってきました。
つまるところ私はここの人間なので、ここを愛するのも当然です。
もし、聖都にリーベリが多い理由をお尋ねになりたいのなら……アルトリアさん、『聖徒行記』は読まれましたよね?
アルトリア
……
ヒルデガルト
まさかトンボを折るためだけに使ったわけじゃないですよね……?
ともあれ、『聖徒行記』の記述によると、リーベリとラテラーノとの出会いは、実はとある駄獣の群れに端を発しているそうです。
遥か昔のこと、荒野で水源を探していた数十名のリーベリが、駄獣の群れに出くわしました。その駄獣たちはなぜか食糧を背負っており、整然と隊列を組んで遠くへと駆けていくところでした。
リーベリにとって、駄獣を狩るのは大変な労力を要することでしたが、その駄獣たちが見たこともないほどはっきりとした足跡を残していくのを見て、彼らはそれを追いかけることにしました。
そうしてその後、リーベリたちは目にしたのです。頭上に光輪を浮かべた人々が、畑で歌を口ずさみながら駄獣の列を誘導し、背後にいくつもそびえる純白の建物の中へ入っていくのを。
リーベリがまだまともな服すら身に纏うことなく、水と草を求めて生きていたその頃に、その人々はすでに野生動物を飼いならし、天災をしのぐ都市を築くすべを学んでいたのです。
そして何より、その人たちはリーベリには理解しがたい自信と楽観性を持っていました。
アルトリア
光輪と、「共感」によって……ね。
ヒルデガルト
その通りです。
彼らは生まれつき互いの心を感じ合い、理解し合うことができるため、争いがほとんどありませんでした。さらには、他種族を滅ぼし得る荒野の危機にも対処することができました。
そうして彼らは「法」という名の完璧な秩序を築き上げたのです。
この感覚は、私にも理解できます。
私の記憶では、教皇庁から修道院への補助が打ち切られようと、建物がすっかり荒れ果てて、私が分厚い帳簿を前に何度も頭を抱えていようと……
サンクタのおじさんおばさんたちは、ランデン修道院が本当に潰れるなんて想像すらしていない様子でしたから。
あの人たちの自信と楽観性は、異種族のリーベリを近くに住まわせたうえに、すべてを学ばせて、自分たちの仲間として受け入れるほどのものでした。
アルトリア
……
そうね。長い年月を経ても、光輪を分かち合うことはできなかったけれど、聖都内のリーベリはほぼサンクタの中に溶け込んでいると言えるでしょう。
私たちは特別すぎて、すべてを受け入れてしまうから……まるで、明確な主旋律を持つ協奏曲のようにね。
思えば初めから、ラテラーノはサンクタだけの温かな家などではなかったんでしょうね、フェディ。
フェデリコ
あなたは脱走後、わざわざ移動修道院へ向かい、「失踪した妊婦」について尋ねていたようですが――公証人役場の資料を確かめたところ、現状失踪者にまつわる通報記録はありませんでした。
なぜそのような行動を取ったか、説明してください。
アルトリア
とある哀れな母親がラテラーノから姿を消したの。それは、誰も気に留めないような失踪事件だった……
まったくの偶然だったけれど、私は麦畑で演奏している時に、彼女の心の声に触れて――
その行き先を、ついに突き止めたのよ。
フェデリコ
それはつまり……
アルトリア
焦らないで。もう少し待ちましょう、フェディ。
ここまで来れば、説明なんていらないでしょうから。
パトリツィオ
この子はおぬしが引き取った子か?
パガニーニ
悪いな、銃騎士様。俺は養子縁組の書類なんざ持ってないぞ。
パトリツィオ
……
パガニーニ
なんだ、お前がリーベリを引き取るのはよくても、俺がサンクタを引き取るのはダメだってのか?
この子はいい子だぞ。まあ、お前以外のサンクタ相手なら、打ち解けるのが難しいなんて思ったことはそうないがね。
パトリツィオ
口の減らん奴め……
こうして会うのはいつぶりじゃろうな?
パガニーニ
さてな。考えたこともないよ。今後も会う必要はないと思ってたんだが。
パトリツィオ
……では、本題に戻ろう。おぬしの弟子は今しがた――
パガニーニ
あれは俺が指示したことだ。
パトリツィオ
目的は?
パガニーニ
抗議デモさ。そのくらいわかるだろう?
教皇庁は都市内にある百軒以上の銃工房を一気に閉鎖した。これまで何十年もやってきて、老後も頼みの綱にしてた店が、訳もわからんうちに消えちまったんだ。
そこへきて今日、お前らがここでパーティーをやると聞いたもんでね。ちょいと音でも鳴らして、お偉方の耳を騒がせりゃ、教皇庁も俺みたいな公民の言い分を少しは聞いてくれるかと思ったのさ!
実を言うと、元々は俺一人で来るつもりだったんだが、年のせいか目も足も悪くなっちまって、この子に頼むしかなくなってな。
パトリツィオ
パガよ、おぬしはとっくに転職したと思っておったぞ。
パガニーニ
ケッ、冗談はよせ。
ジーアをラテラーノから追い出したあとも、お前は俺が作ったその銃をのうのうと使ってるくせに、どうして俺が職を変えなきゃならない?
俺はただ、お前ら銃騎士の専属じゃなくなっただけさ。
パトリツィオ
……それもそうか。
パガニーニ
で、この件はどう処理するつもりだ?
俺は育児聖堂の前で爆発を起こして降誕の儀式の妨害を企て、現行犯で捕まったわけだが……
穢れなき楽園を守るために、お前は銃騎士として、また友人をラテラーノの外へ「送り出す」つもりか?
しかもよりによって、またリーベリの友人を。
パトリツィオ
……
おぬしがリーベリであるか否かには関わらず、本当に法を犯しておれば、また別れを味わうことになったやもしれんな。
じゃが今回は早めに気づいたおかげで、実害は出んかったからな、はっはっ。
ほれ、おぬしの弟子を連れて帰ってくれ。
パガニーニ
ふん。
行くぞ、ヴァニー。
ヴァンニーニ
……
パガニーニ
(小声)悪いが、支えてくれるか。急いで出てきたもんで、お前が新しく用意してくれた眼鏡を忘れちまったんだ。
銃騎士
パトリツィオ殿、彼の言い分は明らかに筋の通らないものでした。
パトリツィオ
わかっておる。
銃騎士
安全を期すためにも、師弟両者を連行して尋問し、リスクを排除すべきかと……
パトリツィオ
そう事を荒立てることもあるまい……それに、あの老いぼれとまた揉めるのは御免被るのでのう。
この粗末な爆弾を見るに、あの子はその場の思いつきで行動したのじゃろう……つまりは、中にまだ仲間がおるということじゃ。
銃騎士隊をもう一部隊手配し、聖堂の巡衛との協力のもと警備を固めよ。
銃騎士
了解。
アモス
……妙だな、まだ育児聖堂の中にいるのか?
パトリツィオ
アモス補佐官。
アモス
パトリツィオ殿……お、お久しぶりです。
パトリツィオ
ああ、久しぶりじゃな。
随分慌てた様子じゃが、どうかしたのか?
アモス
レミュアン枢機卿を見ませんでしたか? 少し確認したいことがありまして。
公務のため育児聖堂へ向かわれたのですが、一向に第七庁へ戻られないもので……
パトリツィオ
あの爆破事件に関わることであれば、ワシにも共有してくれんか。
アモス
……わかりました。
ファボール区ボルゴス通りの銃工房の接収に向かった際、私はあるサンクタに会いました。その後、枢機卿に報告したところ、明らかに何らかの異変に気付かれたご様子だったんです。
そこで、その人物の外見的特徴を基に、在籍公民全員の情報と照合したところ、国外へ出ている公民のデータベースに一致する人物が見つかりました。
その人物はステファン区の爆破現場にも現れていたのですが、その……枢機卿と特別な関係があるようなのです。
パトリツィオ
ほう?
アンドアイン
……時間がないんだ、シスター。急いで育児聖堂へ戻らなければ。
シスター
最後にもう一度確認させてください。看護対象が亡くなると決まったわけではないというのに、葬儀の準備をしておきたいと仰るのですか?
アンドアイン
そうだ……彼女の状況は楽観視できない。
保育士として、私には最善を尽くす義務がある。しかし、だからといって最悪の事態を想定しないわけではないんだ。
シスター
ラテラーノ人らしからぬやり方ですね……
アンドアイン
では聞くが、ラテラーノ人とはどうあるべきだろうか?
シスター
うっ……それは、なんとも難しい問題ですね。
アンドアイン
では、また――いや、できれば「また」がないほうが良いんだろうが。
……
???
正直、みんなから知らせを受けた時は信じられなかったけど――まさか本当にここへ戻ってくるとはね、アンドアイン。
この安魂教会を、このアイリスの花畑を馴染み深く思うかしら? それとも、懐かしく思うかしら?
アンドアイン
ラテラーノには、安魂教会が少なからずあるからね。
懐かしいかというと……今の職務上は、安魂教会に対してそうした感情を抱くのは相応しくないかもしれないな。
???
ああ、すっかり忘れてたわ! あんたは今じゃ、誰よりも重用されてる保育士様だものね!
アンドアイン
それで、君は誰なんだ?
以前私を尾行して、聖堂に侵入し、襲撃してきたのは君たちか?
???
「尾行」とか「襲撃」とか、何言ってるの? まったく、イカれてるのはあんたかあたしか、一体どっちのほうでしょうね。
共に歩む気がないのなら、どうしてあの時「求道者」なんて名前をあたしたちに与えたわけ?
あのまばたきもせずに人を食らう聖堂が、あんたの見つけた正しい道? あるいは間違った道に迷い込んだだけ?
アンドアイン
総主教と出会う前に、誰かと共に歩むという約束をした覚えはないが……
育児聖堂が私に道を指し示してくれたのは事実なんだ。それにしても、「人を食らう」だなんて、きっと何か誤解が……
???
*ラテラーノスラング*! いい加減とぼけるのはやめて、アンドアイン!
十人以上もの仲間があの聖堂に入って、それっきり二度と出てこなかったのよ! あんたの見つけた道に、あたしたちの犠牲が必要なら、せめて事前にそれを伝えてくれてもいいじゃない……
あるいは、恥知らずにもあたしたちとの関係を否定したいってことなら、それを直接言いなさいよ!
アンドアイン
いや、言っている意味がよく……
???
じゃあ、これからじっくりわからせてあげるわ。
アンドアイン
やめてくれ。私の世話を必要とする子供たちがたくさん待っているんだ。それに、あの母親も……
???
げほ、ごほっ、くっ――このっ!
あいつらか。ひとまず撤退ね。
モスティマ
フィアメッタ、今アンドアインのこと全然考えずに撃ったでしょ。
フィアメッタ
あいつは悪運が強いから、死にやしないわよ。
アンドアイン
フィアメッタ、モスティマ……
フィアメッタ
あなたって随分敵が多いみたいね、アンドアイン。
モスティマ
私が追跡するから、君は彼と話してたら?
アンドアイン
いや、その必要はないよ。
彼らが私を執拗に狙う理由はわからないが、何となく感じるんだ……
彼らが強い信念を抱いているということを。そういう人間は大抵、複雑な過去と単純な願望を持っているものだ。
フィアメッタ
随分と慈悲深くていらっしゃるのね。
それならどうして自分の仲間にはあんなに残酷な仕打ちをしたの?
アンドアイン
……
フィアメッタ
どうしてモスティマとレミュアンに懺悔しようとしないの?
あの時、遺跡の奥で、錠と鍵の中にいる奴があなたに何を見せたのか、どうして私たちに教えてくれないの?
どうして、ずっと答えを教えてくれないの?
モスティマ
より正確に言うと、どうして抱えた問題を私たちと分かち合おうとしなかったの、かな。
アンドアイン
……フィアメッタ、我々にはそれぞれ進むべき道があるんだ。
フィアメッタ
じゃあ、あなたの道は、正気を失ってレミュアンを傷つけた挙句、無責任に逃げ出したと思えば、いきなりあの総主教について戻ってきて、平然と育児聖堂の庇護下に入ることにあるわけ?
言ってみなさいよ。姿を消してた数年の間に、あなたは一体どんな救いを得たって言うの?
アンドアイン
私は救いなど得ていないし、心の安らぎを得たこともない。
だが、命というものはあまりに短い。求める答えにいち早く辿り付けなければ、私の罪も君たちの痛みも無意味なものになってしまうだろう。
ランデン修道院で刑期を終えた翌日、私は、きっと何かを得られるだろうと思い込み、すぐさまラテラーノを後にした。
その後の五年間に起きたことは、あまり覚えていないんだ。どこかへ辿り着いては、また次の場所へと向かい、ただ一人、あてどない旅を繰り返していたように思う……
確かに、自分の記憶には問題があるんじゃないかと疑うこともしばしばある。
フィアメッタ
……
アンドアイン
だが幸いにも、私は総主教に出会うことができた。
当時、あの方は聖都へ向かう旅をなさっていたが、行く先々で人々を救ってきたために、到着が随分遅れているようだった。
求める答えはいまだラテラーノにあると、そう信じさせてくれたのはあの方だ。
あの方は、我々の手で一つの奇跡を、そしてその先に連なる数え切れぬ奇跡を起こせると約束してくださった。私がラテラーノへ戻ってきたのは、その約束を共に果たすためだ。
フィアメッタ
やっぱり黙ってて。勝手に訳わからないことばっかり抜かして、ほんと嫌になるわ。
聞きなさい、アンドアイン。パーティーの日、私はあなたを追い出したでしょう。
あの後、パトリツィオが時間をかけて教えようとしてくれたの――あなたのことや、あの聖堂でこれから開かれる儀式の重要性とやらをね。
あの爺さんがあんなに改まった物言いをするのは初めて見た。だから、あなたとの口論は一旦保留にしておくって約束したわ。
あなたを助けたのは、あなたを許したからじゃない。
あの時のことを悔い改めて、その代償を支払うまでは、あなたに死ぬ資格なんてないからよ。
アンドアイン
……
モスティマ
アンドアイン、もうすぐ降誕の儀式が始まるんでしょ?
アンドアイン
すまない、もう行かなければ。
総主教
……おはようございます。
我が同胞たちに、帰郷したトランスポーターに、テラ諸国からいらした使者の皆様に、そして修道院を通じて初めて聖都へ足を踏み入れた客人の皆様に、ご挨拶申し上げます。
我らが身を置くこの聖堂は、ラテラーノが「万国サミット」に合わせて財力やその景観を誇示するために築いた見せかけの建物などでは決してありません。
ですが、この祝祭の時期が来る前に聖堂を完成させることができ、皆様と本日こうして一堂に会せたことを、何より嬉しく思います。
新たな命が生まれるたびに、新たな可能性がもたらされるもの……それは信仰をいかに受け継ぎ、いかに災厄に抗うかという可能性。新たな命あればこそ、私たちは未来を形作ることができるのです。
これからのラテラーノにおいては、尚のことそうなっていくでしょう。
皆様、どうかご準備ください。新たな鼓動に、共に耳を傾けましょう。