航行再開
サリア
素晴らしい演説だった、副大統領。
ライン生命の休憩室でもすすり泣きが響いていたくらいだ。
ジャクソン
クルビアで最もユニークな科学者たちの心まで動かせるとは思いませんでしたよ。
とはいえ、花束や横断幕、いささか過激な支持表明の手紙に、私の姿に塗装された兵士フィギュアなどは……この数時間で十分というほど受け取りましたね。
サリア
ライン生命は送ってはいない。
ジャクソン
……ははっ、結構なことです。では本題に戻りましょう、サリア統括。
科学的視点に立った時、あの空に浮かぶ「木」はどう定義すべきでしょうか?
サリア
副大統領が本当に科学的理論を気にかけているのであれば、これから夜までかけてじっくりとあれがいかにして根を大地全体に張り、枝や葉を空に向かって伸ばすかについて解説をする用意はある。
だが、あなたが知りたいのはおそらく、あの「木」は完全形態であればクルビア全土のエネルギーと情報を集め、処理することができるという一点のみだろう。
ジャクソン
つまり、クルビア全体に効果範囲が及ぶ……エネルギーウェルであると?
サリア
付け加えると、サーバーでもある。しかも双方向運用が可能だ。
大地から空へと集めるだけでなく、逆に空から大地へと送ることもできる――根系もあり、枝と葉もある。
ジャクソン
あはは。
サリア
無理に理解をしようとしないことだ、副大統領。あなたの今の放心した状態は、トリマウンツでライン生命に訪れた時と全く同じに見える。
国防部の数十機の都市防衛砲と、マイレンダーが掌握するメディアのカメラが一斉にあの「木」に向けられた時、口を開いて「木」を守ってくれたのはあなただ。
ジャクソン
ヤラ女史の言葉は心に響くものでしたのでね。私のような老いぼれでも、若い頃の青い気持ちを思い出せずにいられませんでした。
サリア
なるほど。
てっきり、この「木」を定義付けする機会をむざむざと国防部やマイレンダーに譲りたくなかったからだと思っていた。
ジャクソン
……
サリア
一度のエキスポ、一つの演説、空を夢見る熱狂、愛国心。たったの数時間で、あなたに他の候補者をはるかに超える支持率をもたらした。
しかし次の演説で、どのような未来を描けばそれらの支持に応えられるか、あなたには見えているのだろうか?
それとも、初めからその時にはもっともらしい説明で丸めこもうという算段なのだろうか?
ジャクソン
国防部とクリステンがかつて合意した件についてあなたに知らせた者はいるか? クリステンは「アーク・ワン」を作るだけ、国防部がそれで誰を爆撃するかはライン生命に関係ない。
「木」の定義を決定する権利はすでに私の手にあります。それを行使する際にライン生命に相談しなかった場合には、「木」が星のさやを突き破るなんてことは起こりませんよね?
サリア
もちろん、相談は任意のものだ。ナスティや私、あるいは将軍たちや議員、あなたの肩に乗っている玩具を相手に話をするかどうかはあなた次第だ。
ジャクソン
……ははは。
以前秘書と雑談した際にあなたの評価を求められたことがあるのですが、あの時の言葉を撤回したくなりましたね。
サリア
というと?
ジャクソン
クリステンよりは交渉しやすいというものです。
サリア
……
ジャクソン
要望を聞かせていただきましょう。
サリア
「プロペラパラダイス」への封鎖を取り消し、逃亡中の区画をD.C.の航路に戻らせて休養と整備をさせてやってほしい。一連の人物への責任追求に関しては……
ジャクソン
「逃亡」? とんでもない、D.C.政府は先程の出来事をそういう風には定義しません。
他国の意図的な破壊行為を前に、クルビア最前線の科学研究者が一番選ばない選択肢が弱気な「逃亡」です。違いますかな?
他になにか?
サリア
ライン生命への制裁を解除してほしい……なんのことかは言わずとも理解していると思う。
ジャクソン
早急に公式な会談の場を用意しましょうか、サリア統括。クルビアに存在しないことをどうこうすることばかりを望んではいけませんよ。我々が知りたいのはいつだって――
未来のライン生命が何を成せるのかということだけです。
フェルネ
今夜は本当に誰一人寝る気配がないね……だったら事前に夜間の荒野探検フリープラン旅行案を計画しておけば良かった。
アスペン
ははっ、区画が立ち往生になってもあんたは大人しくできないんだな。
フェルネ
アスペンさんだってそうでしょ? 今の顔、休暇明け初日にオフィスビルの外を憂鬱そうに眺めるヒラ職員みたいだよ。
アスペン
はあ、実はだな……マイレンダーの連中とドンパチやった時、死ぬほどビビっていたが、すごく興奮もしていたんだ。
フェルネ
危うく向こうのリーダーの指を噛み落としそうだったよね。びっくりしたよ。
アスペン
俺は感情的な人間ではない。前にこれほど興奮したのは、天空の名義を掲げた高利貸しから金を借りたばかりの頃だった。
高利貸しのやつはうちの町の酒場の入口でへんてこな浮遊設備を一つ一つ全部見せびらかしてな。野次馬が押し寄せて酒場の手すりが壊れたくらいだった。
結局、金を貸してもらえる「運のいいヤツ」は、学歴でも経済力でもなくて、小型のドローンを一番遠くに飛ばせるやつだった。
フェルネ
で、あなたがその騙されちゃったツイてない奴だったわけね。もう聞いたよ、それ。
アスペン
あの夜、俺は自分の指をバカみたいに妻に見せたんだ。こいつで操縦スティックを操作した――こいつが俺たちに未来に踏み入れるチャンスを勝ち取ってくれた、って……
フェルネ
数日後になってようやく、そのコントローラーにはそもそも電池が入ってなかったと気づいたの?
アスペン
ああ。興奮して頭がやられてるあいだは、自分の判断なんて信じるべきじゃなかったんだ。
フェルネ
でも今日あたしたちと一緒に封鎖ラインに突撃した時は、そんなに考えなかったでしょ?
アスペン
ああ。その結果、みんなして荒野で殺されるのを待つ瘤獣みたいに、D.C.政府が俺たちの未来を定めるのを待っている……
まるで洗濯機の中に落ちた玉ねぎみたいな気分だ。次々と巻き起こるブームの中で、一枚また一枚と皮が落ちていく。
フェルネ
洗濯機の中から逃げ出したいの? それとももう無力な玉ねぎのままでいたくないの?
アスペン
それは……
フェルネ
数年前、ボーンヤードに三回目に行った時に、面白いことを考えたことがあったんだ。
こっそりと純金の原鉱を手押し車で封鎖線内に運び込んで、その後堂々と禁止エリアの歩哨所から運び出せば……
クルビア人はきっと恐ろしい伝説なんて全部忘れて、すぐにでも二度目の大開拓を始めるんだろうなって。今あたしたちが経験していることにだって勝るとも劣らないと思う。
たとえきっかけが天幕を破った科学者なんかじゃなくて、単に日常がつまらないって感じたガイドでも。高尚な行いじゃなくて、ただの嘘でも。
あたしたちはいつだって「不可能」という扉の内側に真新しい可能性を見つけたい。どこまでも変わらない普通から逃げ出したい。違うところで、違う生活をしてみたい。
あなたも、あたしも、「プロペラパラダイス」の何百何千人のモニターも、さらにあのスカイっていうライン生命の助手研究員だって……みんな同じだよ。
アスペン
玉ねぎは自分一人じゃ洗濯機の中から逃げ出せない……
フェルネ
だとしても、最初になぜ飛び込んだのかを、覚えておくことはできる。
アスペン
……
もし政府が今晩俺たちを国への反逆という名目で処刑しなかったら、俺は「プロペラパラダイス」に残って、「ラッキーシスティビースト」の経営を続け、借金を返済したい。
妻に手紙を届けてくれるか? 普通のトランスポーターに預けるんじゃどうも安心できなくてな。
フェルネ
じゃあ、うちのツアーに参加する? 手紙どころか本人を送り届けてあげられるよ。
ゴードン
テラの大地にあんたみたいな科学者がいるなんて信じられねぇ。
科学顧問?
(力強く叩きつける音)
ゴードン
一体どうやってギュスターヴと知り合ったんだ? あいつとマイレンダーの計画を知っていたのか?
科学顧問?
(ザーザーと鳴る研磨音)
ゴードン
ふんっ、結局痛い目見せてやることはできなかったな。浮遊層が墜落したら、老いぼれはマイレンダーの人間と一緒に逃げやがった。
科学顧問?
彼は手錠をかけられて連行されました。
ゴードン
手錠で連行? ハッ、俺を「プロペラパラダイス」の罪人に仕立て上げようとしたのに、逆に自分が身代わりになったってことか!
科学顧問?
(透き通った金属音)
悪くないですね。
ゴードン
あんたがペンチやらハンマーやら使いだしてだいぶ経ってるんだが……何の研究をしてんだ?
科学顧問?
旅の準備をしています。
大柄なクランタがゴードンに自身の「靴の底」を見せる。ゴードンはようやく、このクランタが歩く時に立てる音は、履いている靴からくるものではないと知った。
ゴードン
うわっ、この半円形の金属製の底……鉄の釘をハンマーで叩き込んで固定しなきゃいけねぇんだろ? 痛くねぇのか?
科学顧問?
痛みはありません。複雑な地形――例えばサルゴンの沼やサーミの雪原、クルビアの荒野……などでは、己の足の方が靴よりよほど信頼できます。
ゴードン
どうやら、俺に身分を隠すつもりはねぇようだな。
科学顧問?
この事件の中で、私の存在は取るに足らないものですよ。
友人に手を貸すために訪れ、そこで新たな友人を作っただけです。
ゴードン
……
嫌になるほど自由だな。
科学顧問?
君ほどの見識があれば、喜んで同行者としたいところですが、そちらにその気はないでしょう。
ゴードン
今回の事故以降、管理局内部では必ず人員の粛清が行われる。老いぼれの勢力が綺麗さっぱりなくなるんだ、俺が戻らねぇわけねぇだろ?
それに、あんたは俺のコレクション室にあったもんを全部知っていた。もしあんたと一緒に旅に出たら、いつまでもあんたに及ばねぇだろ?
管理局のリソースを思う存分活用して、零五四をあんたでさえ解析出来ねぇほど改造してやるからな。
科学顧問?
楽しみにしていますよ。
ゴードン
なあ、科学顧問、あんたがまだ行ってない場所ってどこなんだ? 星のさやの外とかか?
科学顧問?
前人未踏の道は、未だ数多く存在しています。
仮に人類が雲と肩を並べる日が来ても、私は変わらずこの大地に目を向けるでしょう。
ナスティ
……
今度はこの目で来訪を見届けさせてもらった。マーシアさん。
マーシア
お仕事に埋もれていないお姿を見るのは珍しいですね。どなたかをお待ちでいらっしゃるのでしょうか?
ナスティ
そっちこそどうなんだ? 君の同僚たちは日が暮れる前に全員「プロペラパラダイス」から引き上げたようだが。
「必ず一番最後に撤収すること」も、私の知らない秘書規程のうちか?
マーシア
いえ、ただ荷造りに手間取っているだけです。
ナスティ
(サルカズ語)浮遊せよ。
マーシア
ありがとうございます……これだけのキャリーケースをどのように階下に運ぶか頭を悩ませていました。
ナスティ
悩んだ末に、キャリーケースをいくつも引きずってわざわざ遠回りして「木」の近くを通ることにしたのか?
マーシア
……ナスティ主任。私は確かにヴァエラさんを……あなたのお母さまの終の安息地を一目見ようとやってきました。
ナスティ
「木」が今つけている新しい葉は、すべてヴァエラの墓碑銘だ。
通り過ぎる際に、できるだけ見上げてみるといい。君のことを覚えているのなら、風に葉を一枚託して君の手に届けるかもしれない。
マーシア
ヴァエラさんを利用してマイレンダーの任務を遂行した私を憎んでいないのですか?
ナスティ
彼女のためにマイレンダーの命令に抗いもしただろう。
もしも君の次の行き先が監獄であるなら、クルビアが以前より公平になったとはとても思えない。
マーシア
ご安心ください。
ブリキ先輩は、自分の体にセレーネさんが捨てたドローンのパーツを飾ったこともありますから。先輩の物事に対する判断基準は使い途があるか否かだけではありません。
私の今回の反抗だけを材料に、先輩が判断を下すことはないでしょう。
ナスティ
そうか。
マーシア
あっ、あちらは……お待ちしている方がご到着のようですね?
ではお先に失礼します、ナスティ主任。
ナスティ
スカイ、データを。
スカイ
送りました。異常はありません。「木」の稼働状況は極めて安定しています。
ですが、主任でしたらこの程度のことは俺に確認するまでもないのでは?
ナスティ
君があの戦いで頭部に影響が残るような打撃を受けていないか確認しただけだ。
スカイ
俺がトリマウンツのスラムで真っ先に覚えたのが喧嘩なんですよ。もし喧嘩でそんなに簡単に頭をやられてしまうのなら、俺はそもそもライン生命に来れてません。
ナスティ
私が戻るまで、日々の「木」の通常メンテナンスやその他派生プロジェクト、そして我々の職員とパークの従業員、モニターに至るまですべて君が責任を負うことになる。
万全な状態でいてもらわなければならない。
スカイ
プロジェクトの状況は全部理解しています。ですが、従業員やモニターの人たちは……ついさっきも、主任がここを離れる前に感謝をしたいって、何が好みかを俺に訊いてたんですよ。
ナスティ主任、彼らがここに残るのはあなたがいるからです。
ナスティ
君は質問にどう答えた?
スカイ
えっと、知らないと。俺は主任の好みを本当に知らないので……思いつくのは仕事くらいです。
ナスティ
明日、ピーターに『スターポッド・ウォーズ』の切手を渡してみるといい。他の者たちがどういった性格で何を好んでいるか教えてもらえるだろう。
スカイ
主任……
ナスティ
私が荒野で真っ先に学んだのは、人とのコミュニケーションの取り方だ。
スカイ
それじゃ、主任は一体何が好きなんですか?
ナスティ
なに、私はわかりやすいほうだ。
では、「木」の養生は頼んだぞ。私はそろそろ発つ時間だ。
スカイ
えっ? 誰か待っていたんじゃないんですか?
ナスティ
彼は一人旅に慣れているからな。おそらく先に出たのだろう。
スカイ
先に? ここ、荒野ですよ!
ナスティ
やつならば手はあるさ。
ライン生命研究員
あっ、ストップ。ここはライン生命の本部よ、訪問者なら、まずあちらで登録をして。
あなた足音が大きすぎよ。入ってきた瞬間に気づいたもの。その恰好、荒野を通ってきたの? ライン生命に潜入して機密情報を盗もうって思うなら、せめて身なりくらいはそれっぽくしないと。
???
……
ライン生命研究員
これ……しゅ、主任権限?
……も、申し訳ありません。すぐに会議室にご案内いたします。他の皆さんはすでにお待ちです。
???
ありがとうございます。
ナスティ
……その他の部分に関しては、スクリーンを見てくれ。状況はおおよそこの通りだ。
「プロペラパラダイス」とマックスD.C.の連結は、完了している。これから、D.C.政府は区画全体に対して点検とリソースの精算を行う。
数百のテクノロジー企業に、千を超える天空をテーマとした研究プロジェクト、更に二万から三万ほどの人口……数ヶ月かかる仕事となるだろう。
幸い、サリアとジャクソンの会談は円満に終わった。そのため、ライン生命のエンジニア課は「プロペラパラダイス」でただエンジニア課の成すべきことだけを成せばいい。
私が戻るまで、スカイ・ジャガーが関連事項を担当する。彼は成長した。務まるだろう。
ミュルジス
まさかあなたが新人を育成するなんてね。
ナスティ
……
ミュルジス
ここのところお疲れ様だったわね、ナスティ。
ナスティ
君の手助けのおかげだ……ミュルジス、もし君が私になりすまして珍妙な表情をした写真を削除してくれるのなら、私の感謝は一層に深くなるがどうだ。
ミュルジス
嫌よ。
そうそう、本当にお母さんの話を聞かせてくれるつもりはないの?
ナスティ
その予定はない。
ミュルジス
あなたちょっと変わったわね……すごく良い感じの変化よ。上手くは言えないけど。
ナスティ……
ナスティ
そうだな。私はひとしきり泣き、吹っ切れ、意思を固めた。これを変化というなら認めよう。
フェルディナンド
こほん――私がわざわざラボから足を運んだのは、仲良しのお二人さんの麗しい友情を見学するためではないのだが。
ミュルジス
ここ二年間、あなたの科学への熱の上げっぷりは、見ててちょっと異常よ、フェルディナンド。世渡りに専念して、ライン生命を掌握することばかり考えている昔のあなたが懐かしく思えるくらいよ。
フェルディナンド
今は違うと言うのか?
ここ二年間、各課の新たな研究を支えているのは高エネルギー物理学において私が成したブレイクスルーではないのかな、同僚方。
ナスティ
ああ、君のおかげでもある。
ミュルジス
まったく。ドロシーが会議に参加してくれないのって、あなたの自画自賛を聞きたくないからじゃないかしら?
フェルディナンド
ふんっ、ドロシーなら事情聴取に回答したあと、そのまま359号実験基地に帰ったよ。この間、またいくつかの夢を見たとか言っていた……本当に前を向かない奴だ。
サリア、「木」の実験結果はナスティがすでに私にも送っている。「プロペラパラダイス」の件だけならば、我々がここで会議のため集う必要もないだろう?
サリア
もちろんだ。
フェルディナンド
では、誰を待っているんだ?
???
インフィ氷原の資料に興味はおありでしょうかね?
フェルディナンド
……
サリア
ようやく戻ったか、マリアム。
マリアム
装蹄に少々時間がかかってしまいまして。D.C.からトリマウンツまで徒歩で来ることで、ちょうど馴染みました。申し訳ありません、クルビアに戻るのは久々でして。
ナスティ
「プロペラパラダイス」で待っていなくて正解だったな。車両を手配したから、共にライン生命に帰ってきても良かったのだが。
マリアム
……その方法は失念しておりました。
ナスティ
大地の隅々を訪れて死に急いでいるとしか思えないような行動をしている者は、単独行動にすっかり慣れているのだろう。理解はできる。
フェルディナンド
「木」を起動させるコアパーツには最低限二人の主任級のライン生命職員権限が必要だ。ナスティの支援にサリアが誰を派遣したのかと思っていれば……
伝説によればとうに荒野で野垂れ死に、記者たちに至ってはライン生命に実在しているかどうかさえ疑っている科学考察課主任とは。確かに君ほど適切な人選はいない。だが――
マリアム
誰が繋ぎをつけたのか知りたいと? ジャスティンJr.ですよ。
チャパットで何がしかの商業的な投資を行っているようで、私がインフィ氷原を出てすぐ、連絡が来ました。
クルビアに入ったらその足でD.C.に向かえという話でした。その後すぐにギュスターヴから招待の連絡が来ましたよ……間違いなく、ジャスティンJr.が何らかの根回しを行ったのでしょうね。
フェルディナンド
では、君は本来――
マリアム
ライン生命に戻ってきた目的ですか? インフィ氷原の最奥、根なし花が最も咲き誇る場所で……かの円形の巨大構造物の破片を見つけました。
予想されていましたか? そうでしょうね。クリステンが残した資料でも、かの巨大構造物の言及がありました。前時代の人々はそれを、「スターゲート」と称していたと。
これらの情報は、のちにサリアが皆さんに共有してくださるでしょう。フェルディナンド、他になにか質問は? もうないですね。
フェルディナンド
……
ミュルジス
ふふふ、マリアム、自問自答する癖は変わらないわね。フェルディナンドが黙り込んじゃったじゃない。
サリア
それくらいにしておけ。皆、揃ったな。
少し遅れた会議となった。「星の庭が消えた隙間は、星のさやの傷跡であり、ライン生命の傷跡でもある。」ここ二年の間、クルビアのマスメディアや科学系の雑誌はどれもこのような論評を出した。
それどころか、ライン生命が年末の内部パーティーを取り消したことにまでもっともらしいストーリーをでっち上げた。
ナスティ
私たちはただ忙しかっただけだ。
サリア
ああ。今、私たちの忙しさも一段落ついた。
エンジニア課と生態課の共同プロジェクトには想定外のアクシデントが発生したが、結果だけで言えば大成功だろう。ナスティ、お前は今新たな領域を開く鍵を握っている。
ナスティ
……きちんと握れていることが大前提だがな。
サリア
インフィ氷原におけるマリアムの発見はクリステンが得た常識を遥かに超えた「怪談」の数々が、間違いなく真実に基づいた「知識」であることを証明した。
マリアム
あるいはこれを機に、前時代との対話の確立が可能になるかもしれませんね。
サリア
イェラグにおける観測ステーションに関しては、ミュルジスがいくらか資料を持ち帰ったが……
ミュルジス
とっても面白い資料よ……とっても危険、とも言えるわ。
サリア
ボリバルでの出来事はすでに耳に入っただろう。クルビアの二十以上の観測隊が黒流樹海で消えた。
フェルディナンド
あの神秘的な沼に何らかの異変が生じたのなら、探検家や陰謀家どもがまた興奮しだすだろうな。サリア、ライン生命は動くべきだ。
サリア
マゼランがすでに発った。
この大地の最奥に眠る謎の数々には共通する答えがある。クリステンの事件以来、ますます多くの出来事がそれを指し示している。
その答えは、我々にテラがなぜ存在するのか、未来で待つのは災難なのか、はたまた新たな「世界」なのかを示すだろう。
ライン生命はすでに新たな科学研究の体制を整えた。だがまだ足りない。我々は科学の未知に対するあらゆる恐怖と不安に応え、どのような未知の境地にも辿り着かなければならない……
ナスティ、先程お前の言ったとおりだ……
だがライン生命は、その鍵を回す者になる必要がある。
フェルディナンド
(小声)なんと……
サリア
もちろん、その前に、皆の仕事納めのパーティーの埋め合わせをしよう。
???
ジャスティンJr.、これは?
ジャスティンJr.
新聞の見本紙ですよ。正式に印刷する前に、このニュースのタイトルをつけていただきたい。科学者たちが勢揃いするのは、「『天空フィーバー』の墜落の哀悼」のためなのか……
それとも「新たな情勢変化」なのでしょうか?
???
自分と同僚たちの通信のスクリーンショットを『ザ・セイヴァー』にプレゼントした、と?
ジャスティンJr.
むしろ、国防部寄りの報道機関が本来公的な入手手段のない資料を手に入れた、と言うべきかと。
???
……
ジャスティンJr.、そちらの統括はすでにジャクソンの奴と「プロペラパラダイス」に関して合意したと聞いているのだが。
ジャスティンJr.
お気に召しませんでした? ですが、私があなたと別の取引を行う障碍にはなりませんよ。
???
知っていると思うが「ホライズンアーク計画」以降、国防部においてライン生命の信用度はママジョンズのスクラッチくじと同じ――つまりは、無いに等しいレベルだ。
ジャスティンJr.
だからこそ、サリアとジャクソンが合意してからお尋ねしているわけです。
ボリバルでの失脚、「ホライズンアーク計画」の失敗、更に「プロペラパラダイス」の事故を続けて経験したからには、マーク・マックス大統領から見る国防部の信用度も……
あまり刺々しい慣用句の引用は控えておきましょうか。
???
……
ジャスティンJr.
うちの科学者どもが、具体的に何をやっているのかはわかりませんが、彼らが生み出しうる価値はよく存じております。この点に関しては、あなたも疑いはないでしょう。
私は商人ですからね、ライン生命のためにより多くの利益を勝ち取らなければ。
???
拒む理由がないように聞こえるな。
ジャスティンJr.
光栄です。
???
ジャスティンJr.、ブレイクのやつがお前を紹介した時、正直お前のようなやつは少々気に入らなかったのだが……
ジャスティンJr.
あはは、ミスター、覚えていらっしゃいますか? 先程お話した多少面白みのある私の人生経歴ですが……
あなた自身が運命に一目置けるのでしたらそれでいいのですよ。運命を掴む者については――
往々にしてあなたの意思など関係ありませんので。