突破
ドーベルマン
偵察が完了した。追手は全員片付けたと見て良さそうだ。
なんとか、あの包囲網を突破することができたようだな。ここは……市街地を大方抜けたあたりか。
Ace
……まあ、「片付けた」とは言っても、向こうさんの兵力からすればほんの少し削られたぐらいのもんだろうが……
少なくとも、当面の安全は確保できそうだな。
ニアール
――Ace、先ほどはありがとう。的確な援護だった。この恩は決して忘れない。
Ace
ははっ、よしてくれ。こっちも助けてもらったし、このくらいで耀騎士先生に恩を売れるような立場じゃないさ。
それより、例の狙撃手についてだが……気付いたことがあれば教えてくれないか、ニアール。
ニアール
もちろんだ。差し当たって、そうだな……
先ほど、奴に狙撃された時のことだが――
あの強力な一撃のみならず、別方向からもう一撃――つまりは、十字砲火を受けたように感じた。……しかし、向こうの狙撃手は奴一人しか見当たらなかったんだ。
推察するに……狙撃ポイントを複数用意した上で、自動式の射撃装置を設置し、ああいった攻撃を可能にしているのだろう。
Ace
気が合うな。俺も同じようなことを考えていたんだ。
こっちで受けたあの時も、狙撃は二発分だった。多少のズレはあったが、着弾はほぼ同時でな。
クロスボウ一つでは、あそこまで間を開けずに連射することなどまずできん。さらに言えば、突撃の際にも、敵方に狙撃手は見かけなかった。
ニアール
ならば、あなたの結論も……?
Ace
お前さんと似たようなもんさ。あの狙撃手が、分身か高速移動でもしてない限りは、ほかに考えられんだろうし。
ニアール
そのどちらも、現実的ではなさそうだ。となると、やはり射撃装置を使って同時狙撃を行っている……というのが妥当な線だろうな。
鑑みるに、レユニオンは想像以上に危険な集団らしい。
ドーベルマン
……考えてみれば、ニアールへの狙撃を命じたのは、あのイカれたガキだったが……我々を包囲した時点では、狙撃手までは投入してこなかったな。
ニアール
ふむ……まあ、どうあれ、部下の力量があの悪辣さを支えているのは確かだ。
Ace
ああ。だが、思えば少し気になるところはあるな。奴はあれほど怒り狂っていても、自分で手を下してはこなかった……
ドーベルマン
恐らく、当人には戦闘能力がないか、あるいはまだ手の内を明かすつもりがなかったか……そのどちらかだろう。
とはいえ……無論、指揮能力だけでも奴は十分な脅威となりえる。
部下を操り人形の如く動かすあの手腕は、恐るべきものだからな。
ニアール
……何はともあれ、今は向こうの勢力圏から抜け出せたことを、素直に喜ぶとしよう。
アーミヤ
はい。……ニアールさんには、感謝してもしきれませんね。
あなたの助けがなければ、今頃どうなっていたことか……
ニアール
大したことではない。私はただ、事前の作戦方針通りに行動したまでだ。
したがって、むしろこれは……状況に応じて、的確な指示を出してくれた君の功績と言うべきだろう。
君は自分の力で窮地を乗り越えたんだ、アーミヤ。
事実として、私はレユニオンの蛮行だけを見て、彼らを少し侮っていた。
もし、そのままの心構えで戦いに挑んでいたとしたら……
あるいは、形勢不利のウルサスに加勢し、レユニオンを抑え込むという無謀な選択を取っていたとしたら……
はたまた、君たちが撤退してくるまで、合流地点で待ち続けていたとしたら……
ニアール
――いずれにせよ、私の考えだけで行動していれば、より悲惨な結果を招いていたことだろう。
というのも私は、先を読んで行動するのがどうにも不得手でな。戦い続けることで貢献するよりほかにないんだ。
ニアール
つまり、何を伝えたいかというと――君には、困難を切り抜けるだけの実力がある。私はその導きのもと、役目を果たしただけだ。
自信を持ってくれ、アーミヤ。この結果をもたらしたのは、君自身の努力だ。
アーミヤ
ニアールさん……
ニアール
ふふっ。伝わったのなら、よかった。
ニアール
さて、それでは改めて。そちらのあなたが、ドクターだな?
アーミヤ
はい。……ですが……
ドーベルマン
――やれやれ。誰かと合流するたびに、記憶喪失について説明せねばならんとは……面倒なことになったものだ。
ニアール
記憶喪失? Dr.{@nickname}が……?
ニアール
……そうか。……励ましになるかはわからないが、実は、私にも記憶を失った友人がいてな。彼女とは話が合うかもしれないし、落ち着いたら紹介しよう。
私が思うに、結局のところ、大切にすべきなのは「今」だからな。
アーミヤ
! はい。そう……ですよね!
ニアール
――では、そろそろ行くとしようか。
ドクターを、無事ロドスまで送り届けなければな。
ファウスト
悪い……しくじった。
メフィスト
ううん、謝らないで。僕の判断ミスだから。……我ながら、さっきのはちょっと衝動的すぎたね。
それで、次の動きなんだけど……ロドスの追跡をお願いしてもいいかな? 僕のほうは、タルラ姉さんに状況報告をしてくるから。
向こうはきっと、この都市の中枢司令塔を制圧し終えた頃だろうし……
――姉さんに決めてもらおう。あの虫けらどもを生かすか、それとも殺すかをね。
ファウスト
……了解。
メフィスト
じゃあ、気をつけて。言っておくけど、君自身の安全が最優先だから……そのつもりで動いてね?
ファウスト
……ああ。
メフィスト
……さーて、任務も終えたことだし……
行こうか、同胞たちよ。
メフィスト
――僕らの時代を迎えにね!