たそがれ

チェン
アーミヤ。
――
……終わったぞ。
アーミヤ
……
チェン
本質的に、人の行動というものは予測しようがない。
それが感染者であれば、なおのことだ。
――力は人を狂わせ、欲望は人を堕落させる。
さながらガンのように、少しずつ、美しいすべてを食い潰していく……
アーミヤ
……
チェン
……そのマスクは、キミにとって意味のない物だ。
アーミヤ
ですが……
チェン
とはいえ、持ち帰りたいのならそうしてもいい。
だが、それを続けていくうちに……キミの部屋は、そうした物で埋め尽くされることだろう。
――感染者であろうと、そうでなかろうと……人は皆、自らの選択がもたらす結果を背負わねばならないんだ。
アーミヤ
――――
――ごめんなさい……
チェンさん……私……
チェン
……いいか、アーミヤ。
レユニオンの連中が、キミの言葉に耳を貸すのなら、その時は助けてやるといい。
だが、奴らが聞く耳を持たず、狂気の沙汰へと身を投じたら……ためらう必要はない。
――――
彼女は、悪事を為したわけではなかった。ゆえに、この結果は、罪への罰として下されたものではない。
単に、彼女自身がこうなることを選んだだけだ。
誰一人、それを止められはしないし、責められもしない。
アーミヤ
……でも……私には、わからないんです。
これまでずっと、私たちには、救うべきすべての人を助ける責任があると思っていました。
なのに……どうして、こんなことに? ……なぜ、彼女一人にこの結末を背負わせなければならなかったんでしょう……
ロドスのしていることは、本当に正しいことなんでしょうか……?
チェン
……
鉱石病に感染したその日から――彼らの運命はもはや、人の手に負えるものではなくなってしまった。
ロドスの見解では、道を踏み外した人々にも、救える余地があるのかもしれないが――
私と近衛局からすれば、そうは思えない。だから、必要に迫られた場合には……
アーミヤ
…………
私はただ、終わりの見えないこの状況を変えていきたいだけなんです……
それがたとえ、ほんの少しの変化だとしても――
ですが……何をしたところで、こんな結末にしかならないのなら……
チェン
……
――アーミヤ。
気持ちに、揺らぎがあるのか?
アーミヤ
……
……わかりません。
――今の感染者たちは、敵意に溺れるか、自ら破滅へ向かっていくばかりで……
次々と悲劇が繰り返されているのが現状です。
けれど、その連鎖の中でも、感染者に希望を与える方法が――鉱石病の根絶以外にも、あるはずだと思います。
……そして、その方法というのが、人々の間の憎しみを取り除いていくことなんだと思うんです。
チェン
……アーミヤ、よく聞け。
慈悲を与えようとするならば、その代償を払うことになるものだ。
――ロドスは近衛局のような組織にはなれないし、近衛局のようなやり方もできんだろう。
だが、キミたちは進んで感染者を受け入れ、そして無謀なことに、事を荒立てず人々を救おうとさえしている。――それは、ロドスにしかできないことだ。
あるいは、ロドスだけが試みていること、と言ってもいいかもしれない。
しかし、私には、そんなことはできん。
無論、近衛局もそれは同じことだ。
アーミヤ
……
チェン
……とはいえ、彼の仲間でなくても、そのマスクを残しておこうとする、キミのような人物もいる。
……キミが、そうしたマスクで自分の部屋を満たすことになっても構わないというのなら、そうすればいい。
ただし、それが自分自身の選択であることを忘れるな。
アーミヤ
……
チェン
――ロドスの小さな「リーダー」よ。
キミに、すべてを背負う覚悟が本当にあるのなら――
己の意志で決断し、その結果に責任を持つことだ。
アーミヤ
……
……ありがとうございます。
チェン隊長……
チェン
……
こちらで現場の片付けと、修復作業に当たる。その後、あの医者にも連絡を入れておこう。
アーミヤ
わかりました。……ドクター、行きましょう。
W
ふ~ん……人の運命って、絡み合うようにできてるものね。
お互いに、干渉もすれば邪魔にもなる。どんなに優秀な指し手だろうと、裏をかかれてチェックメイト……な~んてこともあるもの。
まあ、いいわ。それも悪くはないし……
このあと起きることには……待つだけの価値があるでしょうしね。ふふっ。