狂人の弁解

ウルサスの晩秋。夜の気温は急激に下がる。吹き荒れる寒風が枝の上に積もった雪をぱらぱらと吹き落とす。
広場から人影はとうに消え、遠くに点在する低い家々にも明かり一つすらも見えなかった。
広場中央の焚火を見ると、焼け焦げた薪の上にわずかに火が残っている。火種は北風に何度も引っ掻かれながら、かろうじて最後の息吹を留めていた。
一本の太い薪が火の中に放り込まれると、火花が空中に舞い上がった。
ホーリー
奴らは……
俺たちの行方を知った。
炭の中に横たわる乾いた薪が、徐々に黒く燻され、形を変えた後、突如立ち上った炎に完全に呑み込まれた。
火明かりが弱り果てた感染者の顔を映し出す。だが彼が温もりを感じることは微塵もなかった。
ホーリー
あいつら。ここにいる……みんな。
あいつらを皆殺しにしないと……ガネアを粛清したように……
そうすればあいつらは……
道徳をなくすことも、純潔に背くことも……
魂を汚すこともなくなる。
男は痛みを感じた。まるで心臓が針で貫かれたような痛みだ。
男は寒さにこごえた。凍てつく湖に落ちたような、震えの止まらぬ寒さだ。
彼には炎が必要だった。
一本、二本、三本。
一束、二束、三束。
元々かろうじて燃えていた火種が木の隙間から噴き出し、灼熱の悪夢と化した。その炎は火を熾した者の身体に突き立たんばかりだった。
痩せ衰えた坑夫は燃える木の棒を拾い上げると、静まり返った家々へと向かっていく。
トン、タッ。トン、タッ。
軽やかな音、重い音。強い音、弱い音。規則正しい足音が響く。
ホーリー
眠っている……眠っている!
みんな眠っている。
お前たちは自分がこれからどんな目に遭うか、どんな裁きを受けるかを知らないんだ。
感染者を助けて、匿い、そして売る。まるで駄獣のように従順で、無知な奴らめ!
だが、構わない。
俺がお前らを助けてやる。俺ならお前らを助けられるさ。
……なぜなら俺は黙して祈り……
お前らの苦しみを……
共に担うからだ。
狂人は恐怖の松明を握り締めたが、そのかすかな炎では、彼が感じていた寒さを抑えきれなかった。
彼は骨の髄まで冷え込むような寒さを感じていた。その寒さは鉱石病から、寒風から、そしてウルサスから来ていた。
彼には、より多くの炎が必要だった。
突如、彼の目の前に大量の干し草が現れた。
ホーリー
炎。
彼は松明を放り投げた。
ホーリー
浄化――
炎が朽ちたものすべてを呼び起こす。
ホーリー
救済!
彼はかつてないほど、はっきりと生を実感していた。
脳内でうなり声が響き続けている。ランキンは悪夢の中で、己の感覚と理性を取り戻そうとしていた。
五感は回復しつつあったが、悲鳴はなおも消えず、むしろどんどん近づいてくる。
彼は力を振り絞って立ち上がり、覚束ない足取りでテントの外に出て、新鮮な空気を一口吸おうとした。
と、灼熱の空気が襲い掛かり、身体中の冷や汗が瞬時に蒸発する。
一瞬にしてすべての感覚が戻り、感覚器官から伝わる情報がランキンに押し寄せた。
ここは夢の中ではない、現実だ。悪夢で見た光景が現実として続いている。
周囲は逃げ惑う人々であふれ、かつて安らぎをもたらしていた家屋は、今や完全に炎に呑み込まれていた。
立ち上る濃煙の中で、焼け焦げた絶望の匂いが獣の爪のように皆の喉を締め付ける。その暴威の下では、人間は蟻のようにちっぽけな存在に感じられた。
ニクト
ランキン!
ランキン
何が……起きたんだ?
ニクト
わからない、急に火の手が上がったんだ。こんな勢いじゃとても消せやしない!
とりあえずみんなを避難させないと!
興奮した坑夫
ランキン、交換してもらった食糧がまだ建物に残ったままだ。中に入って取ってこなきゃ――
ランキン
そんなことを気にしている場合か!
皆を起こせ! 全員村の外まで避難させるんだ! 早く、急げ!
しかしランキンが声を張り上げても火災現場の群衆が秩序を取り戻すことはなく、恐怖だけが止めようのない勢いで広がっていった。
奴は初めから……
死んでいなかった。
ランキン
いや、違う……俺は勝った、奴を殺したんだ!
俺は皆を救えるんだ……!
ヴェトチキ
先生!
ランキン
ヴェトチキ、なぜここに? 早く安全な場所へ逃げろ!
ヴェトチキ
先生、わ、わたし……!
ランキン
俺の言うことが聞けないのか!?
ランキンはヴェトチキの手を振り払おうとしたが、少女は全力で彼の腕を掴んだ。
ヴェトチキ
おばあちゃんが、おばあちゃんが、い、いないんです!
ランキン
なに……? 一緒にいたんじゃなかったのか?
吃音の少女は両手を使って何があったのか説明しようとしたが、話を聞くまでもなく彼女の恐怖の表情がすべてを物語っていた。
ランキン
ニクト!
お前は皆の避難を続けろ。俺はヴェトチキとナディア夫人を探しに行く!
ニクト
わ、分かった!
ランキンとヴェトチキは炎の中を駆け抜けた。両側の家屋は炎に包まれており、少しでも気を抜けば、衣服にまで燃え移りそうだ。
ヴェトチキ
おばあちゃん……うっ、うっ、おばあちゃん!
ランキンも大声で叫ぼうとしたが、胸中に渦巻く無力感が彼の喉を塞ぎ、声を出すことも、息をすることも困難にさせた。
これほど激しい火の手が、行動を制限された老人にとって何を意味するか、彼はよく分かっていた。
ヴェトチキ
せ、先生、わたし……先生……うっ……うっ!
黒煙が立ち込める十字路で、ヴェトチキは手で口元を抑えながら、ランキンを指差した後、分かれ道を指差した。
ランキン
だ、ダメだ……ヴェトチキ、俺から離れて動いちゃダメだ……言うことを聞け……
ヴェトチキ
先生!
顔を紅潮させた少女の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。そのまま彼女は両手を組むと、祈りの仕草を取った。その姿は奇妙ではあったが、敬虔さが感じられた。
彼女が祈る相手は皇帝でも佯狂者でもない。少女はただ、ランキンの助けを願った。
ランキン
俺は……
愚かな。
ヴェトチキ
うっ……!
黒い影が二人の目の前を横切る。足を引きずりながらも、まるで何かに引き寄せられているかのように、異様に力強い足取りだった。
ランキン
ホーリー? どこへ行く!?
背を丸めた影はランキンの呼びかけに反応することなく、彼を待つ火の海に向かって歩いていく。
四方からの火明かりに影を払われた彼は、まるで伝説に聞く処刑場へと向かう佯狂者のように、これから炎を浴びようとしているかのようだった。
ランキン
ヴェトチキ、待て!
ホーリー
これで、俺は殺戮の罪を犯した。
食糧のためでも、清潔な水のためでも、暖かな家のためでもない。
そう呟きながら、歩みを止めることなく、燃え盛る家屋の扉を押し開ける。
ランキンの視線はホーリーを越えた先へ向けられた。たとえ炎の輝きに目を焼かれても、彼は家の中で起きた出来事すべてを見届けた――
獰猛に逆巻く炎、ぐらぐらと揺れる焼け焦げた柱、死にゆく者が途切れ途切れに発する呻き声のようにパチパチと爆ぜる火の音。
しかし、一人の老婦人が炎の狭間のわずかな空間に腰を下ろしていた。
年老いた婦人
……
彼女は唯一残された椅子の上に、無言のまま腰かけていた。目と鼻の先まで迫る炎が、まるで見えない壁があるかのように隔絶されている。
その身は汚れひとつなく、髪一本すら乱れていない。わずかに閉じられた両目は、まるですべてを見通しているかのようだ。
ホーリー
これで、奴らの魂を清めた。