遅すぎた救済

ラッセル
事情はわかったわ。
ところでこの情報は、あなたがここを訪れたのと同時に、商業連合会のオフィスのデスクにも提出されているのかしら?
監査会トランスポーター
はい、恐らくは。これほど大きな異変ですので、情報を完全に遮断するのは不可能です。商業連合会の耳にも間違いなく届いているでしょう。
各方面からの情報を総合すると、コロッサル主鉱脈に何らかの異常事態が発生していること、現在のウルサスが大きなエネルギー危機に陥っていることは確実です。
先日の国境における第一軍の不穏な動きも、この裏付けとなっています……懸念を抱かざるを得ません。
鉱脈の異変が他の地域にまで波及するのか、またウルサスが今後どのような反応を見せるのか、我々には見当もつきません。
ラッセル
現時点で、サンクト・グリファーブルクから何らかの公式の通達は届いていないのね?
このような大事に際して、ウルサスは外へ協力を求めるのではなくて、真っ先に真実を隠蔽した――彼らの態度はもう明らかね。
瀕死の野獣こそ、何より激しく抵抗するものよ。たとえ資源的な優位を失っていても、ウルサスがこの大地における最も恐るべき戦争兵器であることに変わりはないわ。
私たちは多くの敵を打ち破ってきたし、真正面からの戦争であれば決して恐れはしない。でも内部からの脅威については、常に警戒を怠ってはならないわ。
監査会トランスポーター
商業連合会がこの機に乗じて監査会を脅かす可能性があると?
たとえ商業連合会と言えども、この状況でウルサスが領土の拡大に動いた場合、我々がどれほどの脅威に直面するか理解できるはずです。カジミエーシュはこれ以上の揺さぶりには耐えられません!
ラッセル
どんな時も、商人の利益を求める野心を甘く見てはならないわよ。
彼らはもう動き始めているわ。最初の征戦騎士が彼らに濡れ衣を着せられて投獄された時から、砲火を伴わない戦争はもう始まっているの。
……ライムを呼んでちょうだい、できるだけ早くお願いね。
それと、ニアール家のあの子は、今どこにいるのかしら?
限界状態の兵士
もう十分です、止めましょう! このまま爆破を続けたら山が崩れてしまいます!
まだわからないんですか? ここには何もないんです! ひとかけらの源石も! 鉱脈はもう枯れたんです! 完全に!
絶望した士官
黙れ! そうだとしても掘り続けろ! ここはクライニ・セーヴェルじゃない……ここの鉱石はまだ残っているんだ! 一刻も早くすべての鉱石を掘り出さねば――
「源石を探せ」というのは、他でもない軍令なのだぞ!
限界状態の兵士
それなら、もうここにいる兵士全員を吊るし首にすればいいじゃないですか! そんな軍令、どうせ誰も達成できないんですから!
イヴァンは目が見えなくなって、俺だって轟音のせいでもう片耳が聞こえなくなりました。爆発の衝撃で内臓がバラバラになる前に、いっそ吊るし首にしてください!
俺たちを全員感染者にして、石になったら山に埋めたらいいでしょう! そうすれば山から源石が生えてくるかもしれませんよ!
ああ陛下……どうか哀れな俺たちを……ウルサスをお救いください……
兵士
顛末は以上になります。
我々が傍受した内部通信によると、第三軍もすでに情報を得て、第七軍との一時休戦を宣言したようです。現在は機動部隊のみが待機状態にあります。
将校
爆発の具体的な位置は?
兵士
中部荒野です。第四軍との戦闘の最前線から直線距離で2300キロほど離れた位置で、付近に冬季航行を行っている移動都市はありません。
しかし、その付近に散在する集落に対し、事前の避難勧告は行われなかったようです。人も動物も一瞬で消し炭となり、現場には異様に変色した灰と地面だけが残っていたとか……恐るべき威力です。
将校
……
兵士
第一軍は本当にそのような兵器を作り出したのでしょうか?
将校
司令部から指令が届くまで、総員は引き続き待機するように。
総司令殿が最善の決定を下すと信じている。それまで、第二軍第二師団第六砲兵団の戦士たちは引き続き――
サンクト・グリファーブルクの外で、死力を尽くして反逆者どもの歩みを食い止める。
トランスポーター
……以上が、女大公殿下からの返答です。
最後の物資も届けられました。我々が知る第一軍の新兵器に関する情報も、書状にしたためてあります。
女大公殿下は、クライニ・セーヴェルから第四軍に届けられる支援はこれで最後だと。
我々は約束を果たしました。第二軍との膠着状況に置かれているとはいえ、どうか総司令閣下も当初の目標を忘れぬようお願いいたします。
陰気な軍人
……
承知した。だが女大公にも、現在の局面を認識していただきたいものだな。
時勢を読めない保守派が未だに議会を握って放さないばかりか、第一軍の研究を盾に、我々の正当な訴えを――この国を再び強くするという訴えを拒絶しているのだ。
時間は貴重だ。もし第四軍がいつまでも期待通りの成果を上げられないまま、この国を明け渡すことになれば、ブレスクも無事では済まないだろうな。
トランスポーター
女大公殿下に代わってのご返答はできかねますが、ご意見は忠実にお伝えするとお約束いたします。
それとは別に、殿下に代わって古い童話をお話ししましょう。
北風と太陽が、どちらが道行く旅人の綿の外套を脱がすことができるかの勝負をする話です――
陰気な軍人
……
こちらのトランスポーター殿がお帰りになる。お送りしろ。
駐屯地から安全に送り出せ、私の言葉が正しくブレスクに届くようにな。
トランスポーター
お気遣いは無用です。他にも果たすべき任があり、すぐにブレスクへと帰還する予定はありませんので。
――すべてはウルサスの栄光のために。皆さま、どうぞお気をつけて。
陰気な軍人
……
ウルサスの栄光のために。
枯れた声
失せろ……
全員失せろ!
声が枯れた少年
ふん……ぶつかってきたのはそっちだからな。
恨むなら己の身の程知らずを恨めよ。
凶器をひと振りして衛兵の喉を掻っ切った少年は、足元に横たわる死体を蹴飛ばしながら、司令室のさらに奥へと向かっていく。
甲板へと続く道は彼の刀によって切り開かれ、床一面には血に塗れながら痙攣する軍人が転がっている。周囲にまだ立っている者の中で、それ以上前に出ようという勇気のある者は一人もいない。
威厳ある軍人
……
アナトリー。
足音が響く。人だかりは速やかに退き、散っていった。
軍靴が人波に逆らい、地面を濡らす血を踏みしめながら進む。やがて金属と刀の切先がぶつかる音がして、ようやく歩みは止まった。
軍人はわずかに視線を下げ、少年を見つめる。
威厳ある軍人
もう遊びは済んだのか?
声が枯れた少年
……
威厳ある軍人
気が済んだのなら、その刀を下ろせ。
言ったはずだ。お前を怒らせた者を数人ほど罰するのは構わない。だが、人前で極端な怒りを露わにするのは、かえって己の弱さを曝け出す行為だ。
改めろ、アナトリー。
アナトリー
けど母上は僕をここに閉じ込めた。僕が苦しみ、生きる気力も失っている時に、ここに閉じ込めたじゃないか!
「クシキナ」の誕生に立ち会うことすらできなかったのも、母上のせいだ!
威厳ある軍人
お前の安全を確保するためだ。
アナトリー
安全? あははっ、安全だって!
僕は今、あなたの縄張りにいるんだよ、偉大なるスヴェトラーナ元帥! この大地のどこにも、第一軍の心臓部であるここより安全な場所なんてないだろ?
なのに母上は頑なに僕の行動を制限するばかりで、甲板に出ることすら禁止してくる……
鉱石病になったから、僕はもうあなたの子供でも、栄えあるウルサス軍人でもなくて、単なる囚人だってことなの?
スヴェトラーナ
アナトリー、お前は昔と何一つ変わっていない。お前に対する私の愛情もな。
アナトリー
だったら、すぐにここから出して! ゼルグラードに行って、前みたいに巡回して、僕の街の安全を守らせてよ――母上だって約束してくれたじゃないか!
スヴェトラーナ
……
アナトリー
ほら、また黙り込んだ。きっと約束を破るつもりなんだ。
スヴェトラーナ
ヤーシャ、ここを片付けさせろ。手順はいつも通りだ。
はきはきした従者
はい。
アナトリー
ねえ、母上!
スヴェトラーナ
アナトリー、約束は守る。ゼルグラードはいずれお前の都市になるが、それは後々の話だ。今ではない。
お前の病状が安定するまで、私の目の届かない場所へ行くことは許さない。いいな?
アナトリー
いいわけない!
行かせてくれないなら、これ以上誰も僕を見張れなくなるまで、母上がくれたこの刀で殺しまくってやる。どうせここのバカどもに、僕に歯向かう勇気なんてないんだから――
スヴェトラーナ
病状が安定するまでと言っただろう。安定した後なら、ここを出て好きにするといい。
アナトリー
ふん、母上まで言葉遊びを始めたんだね。あんなに嫌ってたのに、サンクト・グリファーブルクから来たあのハンサムな文官たちに感化されて、口先で相手を誑かすのも悪くないと思っちゃったの?
さっさと全員殺しておくべきだったね。
スヴェトラーナ
鉱石病を治せると触れ回っていたコータスを捕らえてきた。
アナトリー
……なんだって?
スヴェトラーナ
噂通り、そのコータスと同行していた者は全員が鉱石病患者だったが、痛みを感じておらず、発作を起こした様子もなかった。
ペテン師かもしれないが、一度会ってみてもいいだろう。
アナトリー
どこの誰かもわからないペテン師に、僕の弱さや痛みを晒せって言うの?
スヴェトラーナ
まさか。
軍人は指の腹で胸元に押し当てられた切先に軽く触れた。少年は震えつつも、ようやく刀をゆっくりと下ろした。
そして母親は息子を引き寄せ、強く抱きしめた。
スヴェトラーナ
もしそのコータスが本当にペテン師なら、本人も仲間も、生きて駐屯地から出しはしない。だが、もし本当にお前の病状を安定させ、治せるのであれば……
その時は、彼女を抱きしめるだろう。今、お前を抱きしめているようにな。
どこの駄獣の骨とも知れぬ卑しいコータスが、お前を救ったというたった一つの功績により、栄えある第一軍の一員となるのだ、アナトリー。
アナトリー
……母上……
スヴェトラーナ
だから涙を拭け、我が子よ。客人がもうすぐ到着する。
ヤーシャ、例のコータスを連れて来い。
散乱していた鮮血は部下たちの手で瞬く間に拭い去られ、床は新品のような光沢を取り戻した。
しばらくして、整然とした重々しい足音が遠くから近づいてきた。その中に混じる不協和音のようなおぼつかない足音に、その場にいた全員が顔を上げる。
そして、足音の主が皆の前に姿を現した。
コータス
……
アナトリー
なっ――
その少女は、彼が想像していたような信仰を騙るだらしのない中年でも、身なりを完璧に整えたペテン師でもなかった。
一人の痩せ細った、虚ろな目をした少女が、駄獣のように追い立てられて濃色の絨毯の上に立っていた。
コータス
あの……
アナトリー
こいつが?
ちょっと風が吹いただけで飛んでいきそうじゃないか。こんな奴に何ができるっていうの? 薪の代わりに燃やしたところで、ロクに暖も取れなそうだけど。
スヴェトラーナ
外見で判断するのは愚かな行いだ。彼女があの流民たちのリーダーであることは間違いない。
私の親衛隊が彼女を発見した時、流民たちは彼女を取り囲むように守っていた。その様子は、二年ほど前のサンクト・グリファーブルクで行われたあの裁判の時と全く同じだった。
そのせいで、流民たちから彼女を引き離す我々の行為が、あの裁判と同程度に恥知らずで常識外れに思えたほどだ。
アナトリー
母上はこいつを佯狂者にたとえるの?
スヴェトラーナ
……そんなどうでもいいことに拘泥するな、アナトリー。彼女がお前の助けになるのなら、私は彼女が何者であろうと構わない。卑しい身分でも、佯狂者でも、私にとってはどうでもいいのだ。
そこのお前、こちらへ。
少女は躊躇いがちに首を振り、その場から一歩も動かなかった。
コータス
あの……
私と共に来た方々は、無事でしょうか? 不当な扱いを受けたりしていませんか?
それをまず、教えていただきたいのです。
スヴェトラーナ
度胸はあると見える。
コータス
私はただ、共に歩む人々を守りたいだけです。
スヴェトラーナ
だが、現実を見ることも必要だ――お前に交渉する権利はない。
もう一度だけチャンスをやろう。こちらに来い、小娘。
コータス
……
コータスはどうやら妥協したようで、命令通りに前へと歩み出た。その一方で、アナトリーは彼女から離れるようにして後ずさり続ける。
スヴェトラーナ
アナトリー?
アナトリー
こいつは感染者だろ! もし鉱石病を治せるのなら、なんで自分自身を治さないんだ?
母上、こいつはペテン師だ。こんな無意味な試みのために無駄な力を使いたくない。僕にはもう時間が――
スヴェトラーナ
その言葉を撤回しろ。
アナトリー
母上?
スヴェトラーナ
撤回しろと言っている! 二度とそんなことを言うな。お前にはこの先も未来があるんだ。きっと良くなる、必ずだ。
大柄の女性はそう言うと、傍に立つ少女に向き直り、その目をまっすぐ見据えた。
スヴェトラーナ
よく聞け、小娘。流民たちを治したように、私の子も治すんだ。
第一軍総司令たるスヴェトラーナ・ウリヤノワ・ブテリナの名誉にかけて誓う。もし本当にこの子の苦痛を取り除き、病を治せるのなら……
私の限られた命がある限り、第一軍は必ずお前の後ろ盾となり、お前の同胞も守ると誓おう。
コータス
……
まずは病状を確認しないといけませんが、彼は私が近づくことを快く思っていないようです。
触れることもできないのなら、どう治せばいいのでしょうか?
アナトリー
ふん。本当に鉱石病を治せる奇跡の力がお前にあるんなら、これっぽっちの距離が障害になるわけないだろ。
少年は、頬の源石結晶を髪で隠すかのように顔を背けつつ、目の前の痩せた少女を正面から見据えることすらも避けている。直感が、彼女の接近を拒んでいるのだ。
しかし、コータスの少女は何らかの決心を固めたようだ。彼女は強引に自分を「招待」した統率者としばし視線を交わし、再び少年へと歩み寄った。
コータス
スヴェトラーナ元帥、あなたの約束を信じます……
アナトリー
来るな!
卑しい奴め、これ以上僕に近づくのなら――
感染者が嫌いだ、ってか?
だったら一番嫌いなものになり下がる気分を味わわせてやろうじゃないか。
母親が元帥ってだけで、本物の戦場を這いずり回ることもなく、死線を潜り抜けることもなく「若将軍」になった挙句、俺たちのわずかばかりの尊厳を平然と踏み躙りやがって……
このガキめ! お前はとっくに好き勝手やってた代償を払うべきだったんだよ!
アナトリー
失せろ! 失せろと言っているんだ!!!
スヴェトラーナ
アナトリー、刀を下ろせ――
コータスは足を止めなかった。鋭利な切先が首を掠め、傷口から血が滲もうと、気にも留めず歩み寄っていく。
少年は片手で頬を覆い、まるで目の前の少女ではなく自分自身が傷を負ったかのように、よろめきながら後ずさった。
その様子は、鉱石病の合併症が急激に悪化したようでも、目の前の光景が何らかのトラウマを抉ったようでもあった。
アナトリー
僕はそんなんじゃ――違うんだ――
コータス
……落ち着いてください……
すぐに終わりますから。
少年が逃げ場を失って地面に崩れ落ちるその瞬間、華奢な少女が足早に近寄った。彼女は手を伸ばし、自分より頭一つ分背の高い彼をしっかりと抱きとめた。
そのまま、二人は床に倒れ込んだ。その時すでに、少年は刀を持てないほど手を震わせ、唇が白く見えるほど血の気を失い、憎まれ口を叩く余裕も持てなくなっていた。
痛みが、彼のすべてを支配していく。
アナトリー
かはっ――
コータス
そんな、病状がこれほど深刻だなんて……
それに、過呼吸を起こしかけてもいます……
アナトリー
ヒュー……ヒュー……
コータス
これから私の言葉、そして呼吸のリズムを頼りに、あなたの肺が満たされる感覚を取り戻してください。
コータスは彼の強張った冷たい指に触れ、血肉から突き出した黒い源石を目にした。結晶はこの少年自身のように、硬く、そして尖っていた。
彼女は少年の額に手を当て、低くゆったりとした声で、優しく彼の呼吸を導いていく。
コータス
ふぅ……
「信じなさい、我らの生命を。」
「我らの身体と思考を、心が刻む律動を、肺が生み出す呼吸を。」
「我らこそが……」
「あらゆる力の源であると信じるのです。」
アナトリー
ケホッ、ケホッ!
コータス
あなたも苦しむ一人の人間です。
アナトリー
いらない……お前の憐れみなんて――
感染者の憐れみだけは、絶対に……!
コータス
これは憐れみではなく、悲しみです。
私にあなたの鉱石病を治すことはできませんから。
アナトリー
……ペテン師め……
コータス
ですが……
その一生の苦痛を拭い去ることはできます……
スヴェトラーナ
――!
コータスが言葉を紡ぐ間に、少年の体表に突き出た黒い源石が色褪せ、変質し……それにつれて、痛みに歪んだその表情も次第に和らいでいった。
少年は瞼を閉じたままだったが、先ほどまで激しく上下していた胸はすでに落ち着きを取り戻している。
コータス
そうすれば、我らはこの命の彼岸へと向かうことができるのです。
苦しみも、悲しみもない場所――
永遠の地へと。