血族
グレイディーア
はあッ――!
「シーボーン」の身体に、グレイディーアが再び風穴を開けた。
それは即ち、「シーボーン」の死を意味していた。
シーボーンに目があるのかどうかは誰にもわからなかったが、スカジは怪物の視線の先を感じ取ることができた――少なくとも、彼女はそう思った。
シーボーンは、司教を「見ていた」。
形なき海流が司教を押し流す。彼の纏ったローブは身体に重くのしかかり、叩き潰さんばかりだった。
しかし、シーボーンは彼女たちへと語りかけた。
「シーボーン」
お前たちは私に似ているのか……それとも彼に似ているのか?
Gla-dia。お前は強い。
グレイディーアが冷ややかに獲物を見る。
「シーボーン」
感情。我らの血族は学習する。我らも多くを伝達する。我らはお前たちに伝達を試行する。
Ishar-mla。生きろ。生きること、生存は良いことだ。次は他の血族がお前を見つけ……お前に問う。
我らは、質問が不得手。不得意だ。故に我らは、学習する。
ゆっくりと、シーボーンが小さく呻きながら崩れ落ちていく。
怪物の体は、もう起き上がりはしなかった。それがぐしゃりと崩れていく様は、まるで花が枯れるのを早回ししたかのようだった。
スカジ
――死んだ……
スカジの肩から力が抜けた。
突きつけられた真実から未だに立ち直れてはいないが、それでも獲物の死を前に、彼女は思う。
「これ」も所詮は、ただの生き物なのだと。
司教
この……罪深き、者どもめ!
司教の声が大きくなる。声帯から音が出るのを止められないとでもいうように、ずたずたの声が彼の喉から響いて、激しい戦いの後に残った瓦礫の中から這いずり出てきた。
だが、グレイディーアは彼に目もくれなかった。
グレイディーア
来なさい。あなたの番よ。
このゴミは一体きりのようね。外にいた恐魚たちも、こいつの一族ではない。となると、あなたのものということになるわ。
司教
その冒涜的行為への罰として、あなたたちはこの手で引き裂いてやりましょう!
そう――私自ら! あなたたちのような雑種は、ここで根絶やしにしなければ! 命は尊いものですが、罪深き者を生かしても、ただ資源が浪費されるばかり……
重傷を負った罪人に、身動きの取れぬ罪人……あなたたちの死骸はいずれも大地に放り捨て、最も卑しき陸生家畜にすべてを食わせてやりましょう。
あなたたち二人を始末するなど、実に容易いことです――
グレイディーア
人間ぶるのもいい加減になさい。あなたたちのような、かつては人であり、今は人のふりをしているだけの者たちこそ……あのゴミ、シーボーンなどより、よほど気色が悪いのよ。
司教
ァアアアアア!!!!
罪深き雑種め、ここで死ぬが良い!!
???
ねえ……私のこと、忘れてない?
スカジが目を見開き、グレイディーアは笑った。
そして司教が、少し遅れて振り返る。