通信封鎖の解除

クロージャ
……
狙撃オペレーター
隊長、回析装置のセンサーが故障したみたいです。
クロージャ
……特に異常はないよ。
術師オペレーター
言ったでしょヴィクトル、私の検査結果も同じだったんだって。
有効なデータは検出されないけど、必ずしも機器の故障とは限らないわ。データそのものが表示できる値を遥かに超えてる可能性だってあるのよ。
うん、やっぱり源石反応の指標が……設定上限値を上回ってるね。
前衛オペレーター
皆、敵に囲まれた。猶予はあと三分だ。
術師オペレーター
この中で最年少はヴィクトルよね。手を尽くせば、どうにか彼一人逃げるチャンスくらいは作り出せるはず……
狙撃オペレーター
イヴ、俺がロンディニウム作戦へ参加を申し出たのは誰のためだと思ってるんだ?
術師オペレーター
ほんっと、いっつも人の言うこと聞かないんだから。
前衛オペレーター
クロージャさん、そっちの状況はどうなってる?
クロージャ
大丈夫、まだ生きてる。あたしのドローンには――
前衛オペレーター
ドローンの墜落音が聞こえたようだが。
以前の君だったら、どれも大切に扱ってたのにな。
クロージャ
あはは――
術師オペレーター
隊長、自救軍を撤退させた時にもう分かってたんでしょ? あれが最後の機会だったって。
クロージャ
源石活動データの最適化がまだ済んでないんだよ。
皆のデータが……必要なんだ。
前衛オペレーター
クロージャさん。アーミヤさん不在の今、君が俺たちの隊長だ。
ロンディニウムに来る前に皆アーミヤさんと話し合った。
戦争を食い止めて、それと同時にヴィクトリア人とサルカズを救うだって? 本気でそれだけのことを成し遂げるとしたら、どれだけ険しい道になるのか想像もつかない。
だがそれでも俺は君らを……ロドスの理想を信じることにした。
鉱石病が治って皆の生活がより良くなっていくのはロドスの誰もが待ち望んでることだろ? ほとんどの人にとっちゃ、そんなのは笑い話だってのにな。
強いて言うなら……ここで死んじまうのは、少し惜しい気もするってくらいか。
クロージャ
……
狙撃オペレーター
イヴ、俺が送ったデータは届いたか?
術師オペレーター
届いてるわ。隊長、新しいデータも送信しておきました。
それと、私もそこまで献身的じゃありませんから……論文を出す時には、私の名前を共著者に入れておいてくださいね。
クロージャ
……分かった。
「通信エラー、通信エラー、現在シグナルロスト中。」
「エネルギー変動データ受信、自動分析モジュール起動。」
「天災規模確定。これより二十四時間内における源石環境変化傾向のシミュレーションを開始します……」
……
「ジジジッ……隊長、バリアが……壊れ……」
「皆……現在……」
「イヴ……もう少し持ちこたえろ……あんたの元へ向かっ……ジジジ……」
「ジジジッ――」
「クロージャさん、頑張れよ。」
クロージャ
……
うん、任せて。
エンジニアは、目の前の操作画面を睨みつけた。
早く、もっと早く。もしこの戦場の源石活動データのまとめが終わらなかったら、小隊の努力が全て水の泡になってしまう。
戦争の雄たけびが刻一刻と迫りつつある。
ドローンの残りはあとわずかだ。彼女の肌に、敵の吐く息の冷たさが伝わってきていた。
「……最適化完了。」
「安全エリアの位置を出力中――」
クロージャ
やった。やっとできた!
あとは通信塔を設置すれば――
「霊骸布」
……ブラッドブルード。裏切者め。
戦争は終わらぬ。お前は我らの糧となるのだ。
クロージャ
危なかった!
ドローン――
飛び立ったドローンは「霊骸布」の大剣に断ち割られ、悲鳴を上げながら墜落していった。
彼女に残った戦闘用ドローンは、それで最後だった。
クロージャ
クソッ、邪魔しないで!
「霊骸布」
なんと脆弱で、滑稽なアーツよ。
よもやお前のように弱きブラッドブルードが存在したとは。
クロージャ
痛っ!!
クロージャの身体に激痛が走り、一瞬、半身が麻痺したように感じられた。
腐敗の臭気が彼女の身体に入り込みつつある。
もはや通信塔を握ることもままならない状態だった。クロージャはその複雑な設備を地面に突き刺すことで、辛うじて自身の体を支えていた。
「通信強度不足。妨害レベル――高。安全エリアの位置を発信できません。」
「セットアップ説明に従って――」
クロージャ
うるさいなぁ、分かってる!
クロージャ、君だってブラッドブルードなんだから傷口くらい塞げるでしょ! あともう少し、ほんの少しだけでも持ちこたえなきゃ……
これさえ設置できれば――
……また疲れて廊下で眠っちゃったの? そんなことばっかりしてると風邪引いちゃうわよ。
ロドスの基本的な機能は一通り実装し終わったし、そろそろ出航してみてもいいわよね?
ありがとう、我らがチーフエンジニアさん。これで最初に交わした約束は達成されたわ。
もしあなたがこの船を離れて、カズデルへ戻りたいと思ってるなら……ええ、あそこに興味ないことは知ってるわ。
だけど約束してちょうだい。自分はアーツの才能ゼロのブラッドブルードだなんて酷いこと、もう二度と言わないって。
クロージャ、あなたは私が今まで会った中で一番才能に溢れた人なのよ。ただ、他のブラッドブルードたちとは少し違うだけ。
じゃあこうしましょうか。あなたが変わらず、より広大な大地や、まだ見ぬ景色を見たいと願っている限り、私たちはいつまでも同じ道を歩む仲間同士よ。
クロージャ
(絶対に期待に……応えるんだ……)
(じゃなきゃ、皆に顔向けできないよ……)
(それに、自分に対しても。)
「霊骸布」の氷のような手が、首元に触れるのを感じる。
彼女はもはや戦争に呑み込まれていた。
???
クロージャさん!
クロージャ
誰……?
誰か、まだ生きてるの?
信号……通信信号のランプが光ってる……
ロドスの信号だ。
???
クロージャさん、私の手に掴まってください!
クロージャ
……ドーベルマンちゃん?
フェン
いえ、フェンです。
まだ動けますか?
クロージャ
フェンちゃん……
「霊骸布」
お前たち――
小ぶりなナイフが「霊骸布」の胸を貫くと、そこから莫大なエネルギーが噴き出した。
Misery
すまない、遅くなった。
フェン
Miseryさんが位置を教えてくれたんです。
安心してください。皆、こちらへ向かっているところです。
クロージャ
援護をお願い! あともうちょっとなの!
奴らを食い止めて!
あたしたちの使命って、一体何だろう? バベルと呼ばれていた時代のロドスに加わったばかりの頃、クロージャは多くの人にこのような問いを投げかけた。
返ってくる答えは、人により大分違っていた。
大きな理想を持つ者もいれば、ささやかな願いを抱く者もいた。
具体的なビジョンを語る者もいれば、口ごもった末に頭を掻きながら微笑んだ者もいた。
しかしある状況においては、皆が同じ表情を見せるだろうと確信できた。
そして、その時は皆が同じ決断を下すだろう。
クロージャ
あとはここだけ……よし、埋め終わった。
「コアモジュール起動、通信が復旧しました。」
ダグザ
クロージャ、今向かっている! 何とか持ちこたえてくれ!
フェイスト
模範軍にそっちの位置を伝えておいた。すぐに応援が来るはずだ!
クロージャ
やった――
フェン
クロージャさん、クロージャさん! しっかりしてください――
シージ
敵から距離を取るよう注意しろ。砲兵隊と狙撃手を支援するんだ。
ナハツェーラーの出現は天災と深く関わっている。奴らの巫術を恐れるな。どれだけおかしく見えようと、アーツの一種であることに変わりはない!
ここまでの道中、我々が天災の中をどう行軍してきたかを胸に刻め――
天災を耐え忍べたなら、このサルカズどもなど抑えられるはずだ!
ホルン
……バグパイプ。
バグパイプ
うん? なに?
ホルン
ゴドズィン公爵が言っていたことは正しいわ……「テンペスト特攻隊」は、本来議会直属の部隊だったの。
議会の命令に従うことが私たちの責務なのよ。
これは公爵からの誘いなんかよりも……正当性のあることよ。
それに言うまでもなく、あなたや、ロッベン、その他私たちに同行せざるを得ない多くの残存兵……皆の身分の問題が、彼の言うことを聞くだけで全て解決するわ。
バグパイプ
身分の問題って? 隊長、忘れたの? うちはそもそも退役した身だよ。
それに……さっき隊長がシージの前に立って盾を構えた時、躊躇したようには見えなかった。
ホルン
……そうね。
バグパイプ
シージは「諸王の息」を持ってるってみんな言ってるけど……隊長は、「諸王の息」って見たことある?
ホルン
ええ。
シージさんの言ってた通り、あれは多少役割があるだけの、単なる「鉄の棒」に過ぎなかったわ。
ダグザ
シージ、側面から高速で接近中の部隊があるようだが……
デルフィーン
……識別コードはありませんが見覚えがあります。あれはゴドズィン公爵の歩兵隊です。
サルカズと正式に交戦を始めたようです……それについさっき我々の小隊を援護してくれました。
シージ
そうか。
これが、ゴドズィン流の「友達作り」のやり方なら、我々も相応に報いてやらねばなるまい。
模範軍、総員に告ぐ。ゴドズィンの部隊と共に戦え――
敵を一人残らず撃退するまで刃を下ろすな!
上級士官
公爵様、高速軍艦が出航しました。危機は逃れたようです。
ゴドズィン公爵
そうか。
サルカズの用いる巫術は、確かに複雑怪奇ですね。これ以上彼らに後方で邪魔をされるよりは……むしろ、少し隙を見せてやるべきでしょう。
上級士官
状況から見るに、「ナハツェーラー」の首領や、その他強大な戦闘能力を持つ既知のサルカズは姿を見せていません。
ゴドズィン公爵
はぁ……彼らにとってゴドズィンの脅威など、ウィンダミアやウェリントンには遠く及ばないのでしょう。
幸いなことでは、ありますがね……
上級士官
「諸王の息」はいまだギブソンハムにあるようです。次の計画を進めてよろしいでしょうか?
ゴドズィン公爵
あなたはどう思います?
上級士官
予想より時間がかかりそうです。アレクサンドリナの部隊は日に日に力をつけており、戦闘能力も以前の予測をいくらか上回っておりますし……
ゴドズィン公爵
ああ、敵としての意見を求めたのではありません。
「模範軍」……あなたも述べた通り、彼らの戦いは様になってきています。
我々の残してきた部隊とも、うまく連携が取れていますしね。
リタは彼らと共にいると、父君にもまして伝説に聞く白狼を彷彿とさせます。ウィンダミア家の忘れ形見も噂ほど軟弱ではなさそうです。
若者たちが英雄や模範となりたがっているのも、あながち冗談ではないかもしれません。
上級士官
閣下はつまり、国剣を我々の手で護送するという計画を諦めると?
ゴドズィン公爵
ははっ、諦めるとは大げさですね。
ゴドズィンが見据えているのは未来です。ならば「アレクサンドリナ」、「諸王の息」、「模範軍」、ひいては「ロドス」まで……これから先に、彼らと共に歩む道がないとは限りません。
ダグザ
……こちらの戦車が、町の東側で最後に残ったサルカズたちと交戦中だ。
ギブソンハムは守り抜いたと考えていいだろう。この町ならばシルバーロックブラフスの前線に通じる補給地点として使える。だが……
シージ
地形が一変した。
「アナンナ」はロンディニウム周辺の環境を絶え間なく変え続けている。本来存在しなかった地割れや、崖、渦流が至る所に現れつつある。
ダグザ
シルバーロックブラフス一帯はほぼ四六時中激しい天災に見舞われてる。これからの道のりは、どこへ足を踏み入れることになるか予測困難だな。
モーガン
ぶっちゃけ言うとさ、もしロドスの情報に間違いはないってことを知らなかったとしたら、ここが、我らがロンディニウムだってことも信じらんなかったよねぇ。
田畑には暖かな風が吹き♪ 朝日が故郷を照らし出す♪……
いつか、国歌の歌詞まで変わっちゃう日が来るのかもね。
インドラ
……んな冗談言ってる場合かよ!
モーガン
「考えんのは、奪い返してからにしろ」って言いたいんでしょ。
でも、もしほんとに帰れたとしてもさ……吾輩たちの故郷は、元の姿に戻れるのかな?
インドラ
……
シージ
だからこそ、この戦争に勝つだけではダメなんだ。
サルカズが戦争でもってロンディニウムを滅ぼす様を……座して眺めるわけにはいかん。
前方に待ち受ける嵐を、我々は乗り越えるんだ。
そして嵐に蹂躙された故郷を、見捨てるわけにもいかない。
先ほどフェイストから話は聞いた。彼の小隊がこの付近から多くの救難信号をキャッチしたため、その人たちを救いたいと考えていると。
ギブソンハムでナハツェーラーとの戦闘があった区域にも特殊な対応が必要だそうだ。ロドスのオペレーターたちが、いつも通り協力に向かう予定だ。
貴様らにも、この後方支援の仕事に力を貸してほしい。
補給ルートを築き上げ、負傷者を救助及び搬送し、我々に加わってくれる人間をより多く集めるんだ。
デルフィーン
前線まで同行してくれる部隊はすでに招集し終わりました。
識別コードを抹消されたゴドズィン兵も加えると、模範軍の規模はもはや一個連隊を遥かに超えています。
シージ
彼らは我々に加わる気なのか?
デルフィーン
ええ。部隊の士官たちに会ってきましたが、彼らが輸送艦に乗り込む前には、ゴドズィン公爵はすでにその場を後にしていたと主張してました。
接触した際の様子から察するに、ゴドズィンが残した部隊は全員が感染者で構成されていると見ていいでしょう。
なんだか聞き覚えのある話ですよね。
シージ
ゴドズィン公爵も同僚と同じく感染者兵士を見捨てたわけか?
デルフィーン
はい……それか、あるいは……
シージ
あるいは、不幸にも感染した兵士を意図的に選別して、我々の部隊に送り込んできたのか、か。
デルフィーン
間違いなく、何か企んでるはずです。
ギブソンハムで見せた活躍から考えると、見捨てられた感染者兵士たちは私たちが過去に見てきたものとは違って、「残存兵」と呼べるような部隊じゃありません。
仮にゴドズィンの目的が私たちの追跡、及び監視だとするなら何としても彼らを振り切るべきだと思います。振り切るのが無理なら、戦術的に孤立させるとか……
シージ
……いや。
デルフィーン、大公爵のやり方については貴様の方がよく知っている。恐らく推測は正しいだろう。
だが今、我々は団結せねばならん時だ。
ヴィクトリア人の中で、誰が「団結」に値するのか。模範軍までもが、それをふるいにかけるようになってしまったら……
我々の望む未来が、実現するはずもあるまい。
デルフィーン
ゴドズィンは恐らく、模範軍が彼らを拒絶できないと予想してたからこそ、私たちを簡単に見逃したんでしょうね。
シージ
ならば、それに対処するための準備を整えよう。
これから先の道には、多くの困難が待ち受けているぞ。
サルカズ、「アナンナ」……それからカスターに、その他の大公爵たち。
模範軍が乗り越えるべき「嵐」は、一つだけには留まらない。
デルフィーン
はい。シアラー少尉に知らせておきます。
実際のところ、新しい仲間の加入に関しては、不安よりも、喜びの方が大きいみたいです。
シージ
それに彼らは皆、感染者だ。
本当にゴドズィンに見捨てられたのではないとしたら……それも喜ばしいことだ。
非現実的な「団結」も、現実となる日が来るかもしれん。
苦しむ難民
……あなたたちみたいな人に会えるなんて、本当に奇跡だわ。
フェン
なにも、私たちが「奇跡」をもたらしたわけじゃありません。
あなたたちが最後まで諦めなかったからこそ、自分たちだけの「奇跡」を作り出すことができたんです。
苦しむ難民
何にせよ、どうかきちんとお礼をさせてちょうだいな。
私の身体はまだ大丈夫だから、もっと助けが必要な人たちの避難に協力させてちょうだい。
ね? あなたも少し休んでおきなさい……よく見たら、うちの子と大して変わらないくらいの年頃じゃないの。
フェン
次の地点へ救援に向かうまで、あと十分は休めますね。
……クロージャさん?
クロージャ
もうちょっとだけ、時間ちょうだい……
フェン
その通信アーツユニットなら、十分な出来ですよ。
RaidianさんやMechanistさんが見ても、それ以上の改善案を出すのは難しいと思います。
クロージャ
……これから先はもっと劣悪な源石環境が待ってる。あたしが今頑張れば、その分君たちも少しは安全になるだろうから。
フェン
ええ……ありがとうございます。
ギブソンハム付近の救助任務はもうすぐ終了します。次に私たちが捜索に向かうのは……あなたのエンジニア小隊が最後に消息不明になった地点です。
クロージャ
そっか。
フェン
隊員たちの消息を、これから私たちが一人一人確かめてきます。
たとえ砂嵐に埋もれようと、源石に呑み込まれようと……痕跡はどこかにあるはずです。
彼らを見つけ出し、本人か、もしくはその遺品を持ち帰ってみせます。
クロージャ
フェンちゃん、あたしはね、あたし自身の考えは自分で分かってるけど……もっと、他の人の本音も聞いてみたいんだ。
目の前で争ってるサルカズとヴィクトリア人とは、無関係のロドスオペレーターが、両者の戦争のために犠牲になるって……それってとっても、悔いの残ることなんじゃないかな?
フェン
どんな任務だろうと、犠牲が出れば悔いは残るものです。
Aceさんが亡くなった後、ビーグルは彼の盾を抱いて何日も泣いていました。
なぜよりによってあの人が、あの時、あの場所で、いなくなってしまったんでしょう。
クロージャ
……あたしも、毎回そう思うよ。
でも、あたしが知りたいのは……犠牲になった人たちの思いなの。
フェン
……心残りはきっとあると思います。
私たちは皆、死を恐れぬ聖人じゃありません。それはクロージャさんも同じです。だからこそ、自分で下した決断に心を痛めることになるんです。
ですが、今回の支援作戦に参加した身として言うなら、私は後悔していません。
ラヴァやハイビス、あるいは他のサルカズの友人のためじゃなくても……会ったことのない人のためだとしても、構いません。
私がクルビアからロドスへやってきたのは、とある天災が原因でした。
あの時分かったんです。災厄というのは人の頭上に降り注ぐ時、それがいちいち誰であるかを区別したりしないんだと。
私が今日ここへ助けに来たのは、もし私の故郷や大切な人たちが危機に陥ったとしたら、あなたたちも同じように駆けつけてくれると分かってるからです。
クロージャ
……うん。
そうだよ。あたしたちは絶対駆けつける。
ロドス。「あたしたち」。
あたしは子供の頃から、ネットワークに夢中だった。だってネットワークの外はどこもかしこも隔たりだらけだって思ってたから。
他のブラッドブルードの子供たちとあたし。ブラッドブルードと他のサルカズ。そしてサルカズと他のあらゆる種族。天災、国家、階級、病。全部そう。
でもそんな時、あの人が……テレジアがあたしを家から引っ張り出してくれた。あたしに、もう一つの可能性を見せてくれた。
災厄の中を進む船が、苦しむ人々を救い上げ、利益以外の何かで皆を集めて、共に仲間になるんだって。
なんだか非現実的で、夢みたいな話でしょ?
でもロドスが進んできた道は、確かに存在するんだよ。
アーミヤちゃん、あたしは引き続き「アナンナ」がもたらす異常源石現象の分析をするよ。君やケルシー、ドクターの意見も待ってるからね。
このデータは、イヴちゃんやバリンちゃん、ヴィクトルちゃん、そしてロドスのものだから……そしてこれから、皆のものにもなるかもしれないから。